『PiCNiC』『FRIED DRAGON FISH』考察とネタバレ!(ピクニック、フライドドラゴンフィッシュ) | ページ 2 | シネフィリー

『PiCNiC/ FRIED DRAGON FISH』岩井俊二作品レビュー②

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『PiCNiC』(1996)
『FRIED DRAGON FISH』(1996)

『FRIED DRAGON FISH』 

公開:1996 年  時間:50分  
製作国:日本

スタッフ 
監督・脚本:     岩井俊二
音楽:       REMEDIOS

キャスト
プー・リンウォン: 芳本美代子
ナツロウ:      浅野忠信
トビヤマ:  HIROSHI OHGUCHI
相田探偵事務所長:  酒井敏也
営業マン:    田口トモロヲ
桐生:         光石研

勝手に評点:2.5
(悪くはないけど)

あらすじ

探偵事務所を営む相田(酒井敏也)は、情報バンク「デルタワークス」の無料キャンペーンを試すことになり、そのオペレーターであるプー・リンウォン(芳本美代子)が現れる。

生物学者のペットであるドラゴンフィッシュの捜索を依頼されていた相田は、プーと一緒にデータバンクの情報を駆使して探し始める。

トビヤマという、データバンクですら情報が引き出せないトップシークレットの男の<水族館>と呼ばれるアジトを探しているうちに、プーはナツロウ(浅野忠信)という少年と知り合う。

今更レビュー(ネタバレあり)

アレ・キュイジーヌ!

本作はフジテレビ系列の深夜番組『La cuisine』最終回スペシャルとして1993年に放映されたものだが、その後にファンの要望に応え、1996年に『PiCNiC』の併映として劇場公開されている。

本来は単発のテレビドラマだったものが劇場でも観られたという点では、あの『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』と同じような出自である。

『La cuisine』は毎回1つの料理をテーマにしたオムニバスのドラマで、全24話のうち岩井俊二は『オムレツ』『GHOST SOUP』そして本作の三本を手がけている。『GHOST SOUP』はクリスマス、本作は最終回のスペシャル版ということで、1時間枠に拡大された。

一つの料理がテーマとなるということで、本編中には大きなドラゴンフィッシュのフライが出てくるけれども、これは全く美味しそうではなく、一社提供のスポンサーであるサントリーの思惑とは異なる演出だった気もする。

その辺の、番組ルールにあまり縛られず作りたいものを撮ってしまう岩井俊二の製作姿勢も、『打ち上げ花火~』に通じるものがある。

サカナをめぐる冒険

50分の作品とはいえ、本作は映像重視ではなく、一応しっかりとストーリーがある。

情報バンクのオペレーターが、派遣された探偵事務所の所長(といっても一人の事務所だが)と一緒に、ひょんなことから案件の調査を進めることになる。

著名な生物学者アーウィングから、盗まれたために捜索を依頼されているドラゴンフィッシュが、実はワシントン条約で輸入禁止された品種であり、時価1千万円の価値があるらしいのだ。アーウィングがそれを隠していることから、二人はひそかにそれを横取りしようと企んでいた。

岩井俊二の作品である以上、主役の芳本美代子フォーカスした美しいショットが随所に出てくるものと想像していたが、どうやらちょっと様子が違う。

今回、主演女優を完全に食ってしまっているのは、まだ初々しさの残る浅野忠信だ。ただ、その後も彼の役者としての持ち味となる、何を考えているのか読めないミステリアスな雰囲気は、すでに演技に滲み出ているし、一方で、まだナイーブな若者の線の細さも感じさせる。

何せ、併映の『PiCNiC』や青山真治の『Helpless』で初めての主役を張る前の話だ。まだ大林宣彦『青春デンデケデケデケ』で、ギター弾いていた田舎の高校生だろう? こんな役者に成長するとは、想像できなかった。

ナツロウとブーの淡いラブストーリー

浅野忠信が演じるナツロウという少年は、テロリストのトビヤマ(HIROSHI OHGUCHI)が抱える殺し屋で、盗んだドラゴンフィッシュも彼が世話をしている。

ナツロウがひとりで暮らすアジトは、ろくに家具もなく広い部屋には水槽だけがあり、どこかスタイリッシュだ。そこに情報を駆使して居場所を突き止めたブーがアプローチし、二人は親しくなる。

淡いラブストーリー要素あり、撃ち合いで人も死ぬクライムサスペンス要素あり、みっちょんの演じるキャラにはコメディタッチもありと、全包囲網で作り過ぎたか、劇場で真剣に向き合うにはちょっとアラが目立つ

とはいえ、深夜枠で若者が気軽に観て楽しむ前提の作品なら、ちょっとプレミアム感はあるか。当時は配信サービスもないし、深夜枠でもわざわざ録画せずにリアルタイムに観ていることが日常的だったなあ。

決めのビジュアルショットがない

ちょっとした狂気を感じる浅野忠信の演技に、熱帯魚の水槽というのは、なかなか絵になる組み合わせだ。彼は後に黒沢清『アカルイミライ』でも、水槽(魚でなくクラゲだが)を相手にいい演技を見せる。

一方、岩井俊二監督は、後に『リップヴァンウィンクルの花嫁』でも、水槽(これも魚ではなくイモガイだったか)を登場させる。水槽というのは、映画はフィットするアイテムのようだ。

『打ち上げ花火~』酒井敏也光石研『undo』田口トモロヲのほか、音楽にはREMEDIOS、エンディング曲はCharaと、岩井俊二のお馴染みのユニットで構成されてはいる。

だが、なぜか本作には岩井作品にお約束の、いつも必ず目に留まる、奇跡のように美しい決めのショットがなかったように思う。

芳本美代子が演じるブーが、前半ただ元気が良いだけの女の子から、後半雰囲気が変わり、ナツロウと海に行く約束をするあたりでようやく岩井タッチを感じるような絵にはなった。

でも、やはりちょっと物足りない。岩井作品には珍しく、主演女優の顔がきちんと写ったショットがジャケ写に使われていないし。

ブーのキャラクターはこのあとの『PiCNiC』Charaの演じた役にも繋がるし、ひいてはYen Townにも発展していく萌芽のようでもある。岩井ファンには貴重な作品だが、通りすがりの方にはお薦めしない。