『ブギーナイツ』考察とネタバレ!あらすじ・評価・感想・解説・レビュー | シネフィリー

『ブギーナイツ』今更レビュー|気分はハリウッド版・全裸監督

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『ブギーナイツ』
Boogie Nights

70年代から80年代のLAで、ポルノ映画を撮り続ける監督と発掘された逸材の若者男優。これぞPTA映画の原点。

公開:1997 年  時間:156分  
製作国:アメリカ

スタッフ 
監督・脚本: 
ポール・トーマス・アンダーソン(PTA)

キャスト
エディ・アダムス:マーク・ウォールバーグ
ジャック・ホーナー: バート・レイノルズ
アンバー・ウェイブス:ジュリアン・ムーア
リトル・ビル: ウィリアム・H・メイシー
ローラーガール:    ヘザー・グラハム
リード・ロスチャイルド: 
          ジョン・C・ライリー
バック・スウォープ:   ドン・チードル
スコティJr.: 
     フィリップ・シーモア・ホフマン
カート・ロングジョン: リッキー・ジェイ
ジェシー・ヴィンセント:
         メローラ・ウォルターズ
ベッキー・バーネット:
         ニコル・アリ・パーカー
モーリス・ロドリゲス: ルイス・ガスマン
トッド・パーカー:  トーマス・ジェーン
ジェームズ大佐:  ロバート・リッジリー
フロイド: フィリップ・ベイカー・ホール
ジョニー・ドウ:  ジョナサン・クイント
ラハド:     アルフレッド・モリーナ

勝手に評点:3.0
(一見の価値はあり)

ポイント

  • PTAの70年代西海岸カルチャー全開の世界を堪能するには、『リコリス・ピザ』や『インヒアレントヴァイス』よりも、まず本作が馴染みやすい。
  • ポルノ映画界の栄枯盛衰を描いた本家『全裸監督』とでも言いたいだが、さほどエログロな話ではない。何より個性的なキャラ揃いの出演者陣が魅力。

あらすじ

1977年、ロサンゼルス郊外のサンフェルナンド・バレー。

クラブで皿洗いのアルバイトをしている17歳の高校生エディ・アダムス(マーク・ウォールバーグ)は、ポルノ映画の人気監督ジャック・ホーナー(バート・レイノルズ)にスカウトされ、ポルノ男優としてデビューすることに。

エディは個性的なスタッフや俳優たちに囲まれながら、“ダーク・ディグラー”の芸名で瞬く間にスターの座に駆け上がるが、次第にドラッグに溺れるようになっていく。

今更レビュー(ネタバレあり)

『リコリス・ピザ』をいただく前に

新作 『リコリス・ピザ』で1973年の西海岸のカルチャーを描いたポール・トーマス・アンダーソン監督(以下PTA)が、デビュー作『ハードエイト』(1996)に続いて撮った初期の作品。

1977年から1982年と『リコリス・ピザ』から数年経過した時代設定だが、70年代の混沌のLA文化を映画や音楽、そしてセックスとドラッグで描いていくスタイルは、本作が原点といえる。

PTAの監督作品は結構観てきたが、本作は未見のままだった。間抜けな話だが、タイトルからなぜかB級ホラー『ブギーマン』(1982)の続編か何かだと思い込んでしまったのだ。

だが、ホラー要素は当然ながらまったくなく、ポルノ映画界の大物監督ジャック・ホーナー(バート・レイノルズ)にスカウトされたクラブのバイト学生エディ・アダムス(マーク・ウォールバーグ)が、自慢のイチモツを武器に男優としてポルノ映画界をのし上がっていく話

実在したポルノ男優ジョン・ホームズをモデルに、70年代から80年代にかけてのポルノ映画業界の内幕を映画化している。

大勢の映画関係者を関与させる群像劇のスタイルは、PTAの敬愛するロバート・アルトマン監督の影響だろう。そういえば、アルトマン『ザ・プレイヤー』(1992)も映画業界の内幕話だった。

ちなみにジョン・ホームズは実際にモノの大きさで有名な男優らしく、また、実際に彼が関与した殺人事件は『ワンダーランド』(2003、ジェームズ・コックス監督)として映画化され、ヴァル・キルマージョン・ホームズ役を演じている。

ボクにだって取り柄はあるんだ!

さて本作。ろくに学校にも行かず、皿洗いのバイトに精を出す高校生エディ・アダムス(マーク・ウォールバーグ)

モーリス・ロドリゲス(ルイス・ガスマン)の経営するこのバイト先のディスコでは、悩ましい衣装のローラーガール(ヘザー・グラハム)がフロアを滑走。

そこに来店したポルノ映画監督ジャック・ホーナー(バート・レイノルズ)女優アンバー・ウェイブス(ジュリアン・ムーア)。ジャックはエディをスカウトする。

本作が映画初主演となるマーク・ウォールバーグが若さギンギン! 彼の演じるエディはブルース・リーに憧れ空手をやり、部屋にはファラ・フォーセットやら『セルピコ』パチーノのポスター。

だがある日、学校にも行かず帰りの遅いエディを母が猛烈に罵倒し、「あんたこのままじゃ負け犬人生だよ」とポスターを破く。

「ボクにだって取り柄はあるんだ‼」とエディは家を飛び出し、ジャックのもとへ。そこから、自慢のモノと驚異の絶倫のエディは、 “ダーク・ディグラー”の芸名で瞬く間にポルノスターの座に駆け上がる。

作品を支えるスタッフ・キャスト

エディを迎え入れ、次々とヒット作を生み出していくジャック・ホーナー監督とそのスタッフの顔ぶれがいい。仕事熱心なメンバーだが、みな、陰で悩みを抱えている。

看板女優のアンバー・ウェーブス(ジュリアン・ムーア)はクスリに頼る生活で、別れた夫と暮らす子にも会わせてもらえず、親権をめぐる裁判を考えている。ジュリアン・ムーアは果敢にポルノ女優役に挑み、初のアカデミー賞候補に。

助監督のリトル・ビル(ウィリアム・H・メイシー)は妻がすぐ他の男と寝ることに傷ついている。コーエン兄弟『ファーゴ』に続き不遇な役が似合うウィリアム・H・メイシー

オーディオ店で働きハイファイ機器を売るも、カントリー音楽趣味で客を逃すバック・スウォープ(ドン・チードル)。学校でクラスメイトに馬鹿にされ、教室を飛び出すローラーガール(ヘザー・グラハム)

1997 New Line Productions, Inc. Courtesy of Park Circus/Warner Bros.

端役やスタッフとして活躍するスコティ・Jr.(フィリップ・シーモア・ホフマン)は、エディに気があるゲイだが、それを言えずに悩む。

PTAの盟友だった故フィリップ・シーモア・ホフマン、同じ70年代を『リコリス・ピザ』で演じた息子のクーパー・ホフマンと雰囲気がそっくりなのが泣ける。

エディの相棒となるリード・ロスチャイルド(ジョン・C・ライリー)は、マジシャンになることを夢見ているポルノ男優。演じるジョン・C・ライリーPTAの処女作『ハードエイト』からの作品常連で『リコリス・ピザ』にも登場。

本作ではカメラマン役だがカート・ロングジョンを演じたリッキー・ジェイは実は凄腕のプロのマジシャン。本作でもリードのマジックショーのシーンがあるが、彼が監修したのだろうか。

そして作品のスポンサーであるジェームズ大佐(ロバート・リッジリー)。いつも黙って資金を提供してくれる老紳士。エディに「期待してるよ、でかいんだって。見せてくれるか」と真顔で言うところがシュール。

最後に、これらのメンバーを抱える人気ポルノ映画監督ジャック・ホーナー(バート・レイノルズ)「俺は抜いたあとも観たくなるポルノ映画を撮りたいんだ」と映画監督としての矜持もある。

バート・レイノルズは好演し高く評価されるも、PTAとは撮影時にトラブルもあり、以降オファーを蹴っているとか。

ビデオの時代に抗う

エディ人気はブレイクし、彼は豪邸に住み、憧れのコルベットを手に入れる(バート・レイノルズだからトランザムなのかと思った)。

でも栄光は長くは続かない。人気とカネで天狗になったエディは、新人男優のジョニー・ドウ(ジョナサン・クイント)に対抗心を燃やし、ジャックに暴言を吐いて追い出される。

そしてそのジャックもまた、映画からビデオへという時代の流れに取り残され、もがき苦しみながら没落していく。

このローラーコースターのような栄枯盛衰、映画制作クルーの一喜一憂、そして題材がポルノ映画。これは近年どこかで観たぞとすぐ思い浮かぶ。そう、山田孝之村西とおるを演じたNETFLIXの『全裸監督』だ。

80年代のAV業界を舞台にしているが、時代を切り開きそして取り残されていくポルノスターや監督、そしてスタッフの人生の描き方が、本作と重なる。本作は監督は脱ぐことも実演することもないが、『ブギーナイト』が影響を与えたことは想像に難くない。

しょせんポルノ映画だろ

そして、どんなに成功しても、しょせんポルノ映画だろと世間に見下される者たちのやり切れない悔しさ。

自慢できるものは自分の肉体ひとつだが、それを武器にのし上がり、そして堕落するエディの若気の至りといえる生き様が、当時のダンスチューンや、ジョン・トラボルタばりの振付とともに映し出される。ああ、ハロー’80s!

「『ブギーナイツ』出演は、人生におけるキャリア選択の最も大きな失敗の一つだった。神様が映画ファンであり許してくれることを祈る」

数年前にマーク・ウォールバーグが学生相手に語ったことが話題になった。敬虔なクリスチャンの彼なら分からないでもないが、毒舌だらけのクマのぬいぐるみとの共演だったらOKなのかな。

本作のラストは、ついに自慢のイチモツをペロンと出して、気合を入れて仕事に向かうエディ。

私が観たものにはさすがにボカシが入っていたが、無修正版なるものもあるぞ。うわっ、エグそう。これがもしあのシーンなら、マーク・ウォールバーグの発言にも、共感できる。