『30年後の同窓会』 考察とネタバレ:どちらかと言えば、三羽のおっさんカモメたちの同期会

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『30年後の同窓会』Last Flag Flying

50歳のスタンド・バイ・ミーと言われれば、納得のやんちゃぶりと友情。バカをやる友人は大切だなあ。『さらば冬のかもめ』の続編と呼ぶには登場人物も異なるが、随所に同作との因縁を感じさせ、最後にじわっと。

公開:2017年 時間:124分  
製作国:アメリカ

スタッフ
監督:  リチャード・リンクレイター
原作:  ダリル・ポニクサン
            『Last Flag Flying』

キャスト
ラリー・シェパード: 
              スティーヴ・カレル
サル・ニーロン: 
           ブライアン・クランストン
リチャード・ミューラー:
       ローレンス・フィッシュバーン

勝手に評点:3.0
(一見の価値はあり)

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あらすじ

海兵隊員としてベトナム戦争に従軍した頃、ドクと呼ばれていたラリー・シェパード(スティーヴ・カレル)はサル・ニーロン(ブライアン・クランストン)が経営するバーを訪れる。

二人は海兵隊の旧友で、もう一人の仲間、今は牧師のローランド・ミューラー(ローレンス・フィッシュバーン)に会いに行く。

かつて海兵隊員としてベトナム戦争に従軍した3人の男たちが、30年ぶりに再会し、ある目的のために旅をすることになるのだった。

レビュー(まずはネタバレなし)

勝手は少し違うけど、そう言われれば続編

海兵三名の奇妙なロードムービー。先日数十年ぶりに観返したばかりのジャック・ニコルソンの佳作『さらば冬のかもめ』に続編があったのだ、ということに気づいて本作を観てみた。

ダリル・ポニクサンの原作は続編として書かれているようだが、映画としては厳密には『さらば冬のかもめ』の続編ではなく、登場人物も異なる

それでも、主人公が昔に海兵隊を除籍され服役刑をくらっていたり、当時童貞だった彼を仲間が夜の街に連れだして大人にさせたりと、30年前のエピソードが出てくるたびに、同作との因縁を感じずにはいられない。

監督はリチャード・リンクレイター。お気に入りは断然『スクール・オブ・ロック』なのだが、彼のフィルモグラフィーの中では亜流なのだろう。

世間的には『ビフォア・サンライズ』三部作とか『6才のボクが、大人になるまで。』あたりが代表作なのか。

そう考えると、何十年もの時間の流れをうまくとらえて、観るひとの心に響く映画に仕上げるのが監督の得意技といえるのかもしれない。本作も、まさにそれだ。

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三匹のおっさんのキャスティング

キャストは主演にスティーヴ・カレル、仲間にブライアン・クランストンローレンス・フィッシュバーン。いい感じのバランスだ。さんざん笑ったあとにしんみりさせるという展開もよい。

繊細なキャラのスティーヴ・カレルには、本作より前に『31年目の夫婦げんか』なんていう出演作もあったりして、邦題はそこからインスパイアされたのだろうか。

荒くれキャラのブライアン・クランストン『ブレイキング・バッド』が大人気だが、本作でも彼の存在感が他の二人を圧倒している。

牧師のローレンス・フィッシュバーンはちょっと距離をおいた常識派の役回り。

レビュー(ここからネタバレ)

この同窓会の目的は何なのか

さて、この再会の目的は何か、気になる導入部分だ。ドクは愛する妻に先立たれており、更に息子までイラクで戦死したと知らされたばかり。

そこで、旧友二人を探し、遺体引き取りに同行してもらおうと考えたのだった。

一緒に行こうと盛り上がるサルと昔を忘れたいミューラーのリアクションの差や、当初は取り澄ましていたミューラーが結局昔のように口汚くなっていくのが楽しい。

こうして、三人はドーバー空軍基地まで遺体引き取りの旅に出る。

息子の棺を前にして、損傷の激しい遺体との対面を勧めない責任者のウィリッツ大佐(ユル・ヴァスケス)。それはそうだと言うミューラーと、絶対に会うべきだというサル。

結局、愛息の遺体と対面し気落ちしたドクだが、更に驚く話を息子の同隊の親友ワシントン(J・クイントン・ジョンソン)から聞く。

息子は勇敢に戦って死んだのではなく、彼の代わりに文具を配っているところを市民に撃たれたのだと。

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ホワイトには共感できない。俺はグリーンだ

ドクは、アーリントン墓地に息子を埋葬するという大佐の申入れを頑なに断り、妻の眠る墓地に、軍服ではなく私服で埋葬することを決心する。

遺体を運ぶ旅は、レンタカーから列車へと変わり、ボストンに向かう。この珍道中の間にも、三人の仲の良さが伝わってくる。

ニューヨークで初めてケータイをみんなで買って、これでいつでも無料で会話できるぞ、と夜の街ではしゃぐところが最高。

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そして、何かというと30年前の従軍話。「占領する相手に好かれたがるのは米国だけだ」と軽口をたたき、政府や軍上層部が信用ならないと嘆く。

それでもやり抜くしかない海兵隊がみんな大好きだというのが伝わってくる。

なにせサルは白人でありながら、「ホワイトには共感できない。俺が納得できた唯一のカルチャーはグリーン(海兵隊)だ」と豪語するくらいだから。

三人には胸の中に共通の重荷があった。従軍中、ドクが管理していたモルヒネを乱用し使いきってしまい、仲間が瀕死の重傷を負った際に、鎮痛できずに苦しみながら死なせてしまったのだ。

その結果、ドクは懲戒で服役し、サルは酒におぼれ、ミューラーは聖職を選んだのだった。

30年の時を経て、彼らはこの苦しんで死んだ仲間の母親に、意を決して謝罪に行く。そして、その母親からは、思いがけない言葉が…。このあたりの演出もさりげなく控えめなのが好感。

Flag Flyingで息子を葬送

さて、ウィリッツ大佐から「彼は軍服で埋葬し兵士の尊厳を守ってやれ」との軍隊式の厳命を受け、ドクの息子の遺体を運搬したワシントンたち。

どうなることかとハラハラしたが、筋肉がついて昔のスーツが着れないということで、案外すんなり決着する。

埋葬にはサルとミューラーが制服を着て、格式を重んじ棺の前で星条旗を畳み、ドクに渡す。二人の大きな慈しみと友情が感じられる。

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国旗を儀式の作法に則り丁寧に畳んで渡す、この行為をFlag Flyingというらしい。やっと、原題が生きてくる。ちなみに『Last Flag Flying』 の前篇は『Last Detail』『さらば冬のかもめ』の原作。Detailは雑役)。 

最後にドクは、息子と交換してそれぞれで持っていたという遺書をワシントンから授かる。本来は、埋葬前に読むべき内容だったが、結果オーライで少し救われた。