『映画 みんな!エスパーだよ!』考察とネタバレ!あらすじ・評価・感想・解説・レビュー | シネフィリー

『みんなエスパーだよ!』今更レビュー|グラビアアイドルだよ、の間違いだに

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『映画 みんな!エスパーだよ!』

ほぼ8割のシーンをパンチラと水着が埋め尽くすナンセンスSF。園子温監督なのに健康的なエロだに。深く考えずに女優陣に見惚れるのには、おバカな笑いだらけの突き抜けたくだらなさが、とても大切だ。

公開:2015 年  時間:114分  
製作国:日本
  

スタッフ 
監督・脚本:       園子温
原作:                若杉公徳
   『みんな!エスパーだよ!』

キャスト
鴨川嘉郎:       染谷将太
浅見紗英:      真野恵里菜
平野美由紀:    池田エライザ
浅見隆広:        安田顕
永野輝光:    マキタスポーツ
鴨川律子:      筒井真理子
榎本洋介:       深水元基
ヤス:         柄本時生
矢部直也:       柾木玲弥
ミツコ(刑事):    今野杏南
秋山多香子:      神楽坂恵
タエコ(新聞記者): 星名美津紀
ポルナレフ愛子: 
       高橋メアリージュン
ケイコ(本屋):     篠崎愛
ジュリー・バブコック:  
         サヘル・ローズ 
しずか(教師):   清水あいり
神谷秋子(渡し舟):  冨手麻妙
サヤ(スマートボール):星名利華

勝手に評点:2.5
(悪くはないけど)

(C)若杉公徳・講談社/映画「みんな!エスパーだよ!」製作委員会

あらすじ

突然人の心の声が聞こえるようになった高校2年生の鴨川嘉郎。同じ頃、人類滅亡を企む悪のエスパーが「世界エロ化計画」を始動させた。

超能力研究者の浅見教授は、嘉郎や同じく超能力に目覚めたエスパーたちを招集し、彼らが超能力に目覚めた事実と、迫りくる世界危機の阻止を命じるのだが、鴨川たちの能力はエッチなことにしか発動できず……。

レビュー(ネタバレなし)

そういう映画なのです

本作はぶっちゃけ、エロ全開の映画であり、ストーリーも園子温的な演出も、あるようでないようなものである。

こういうジャンルに、ナンセンスとか嫌悪感とか言いたくなるような人は、観てはいけない。基本的に、メインターゲットは中2男子だと考えるといいかもしれない(PG12だからOKだ)。

同じエロ目線な園子温監督作品でも、『奇妙なサーカス』のように殆どの観客が嫌悪感を示すようなマニアックなアブノーマルさはないし、『愛のむきだし』のように、エロはあってもそれを正当化する骨太なドラマがある訳でもない。

テレ東の深夜枠で気楽に観るのがふさわしい作品なのだが、それを劇場版にしてしまう英断は評価したい。

(C)若杉公徳・講談社/映画「みんな!エスパーだよ!」製作委員会

テレビドラマ版からみると

映画のストーリーは、テレビドラマ版の続編ではなく、エスパーの集団結成から始まる流れは一緒だが、中盤以降は異なる。

浅見紗英(真野恵里菜)は映画にも登場するが、もう一人のヒロイン、平野美由紀の役は夏帆に代わって池田エライザになったのが、ドラマ版を観ていた当時はちょっと残念だった。

だが、改めて観てみると全然OKだった。というか、何で女優業一本の夏帆が今更この路線をやるのと思っていたので、むしろ作品へのフィット感はこっちの配役の方が上かも。

ちなみに、浅見教授(安田顕)が集めるエスパー軍団のやや頼りない面々はTVと同じで、永野(マキタスポーツ)らの脱力系のギャグも一緒、安心感がある。

染谷将太は、今や織田信長を堂々と演じてしまう才能ある俳優で、『初恋』にみられるダーティな役も得意だが、本作の鴨川のような少々ヘタレで性欲旺盛な高校生というのが、見慣れている気がする。

冒頭のシーンで、染谷奨太が自分の右手に話しかけるので『寄生獣』かと思ったが、話し相手はティッシュケースだった。

『映画 みんな!エスパーだよ!』予告編

エロとくだらなさの徹底

舞台は愛知県東三河の豊橋・豊川で、全編過激なまでに三河弁での会話が徹底されている。

「だに」とか、「だら」とかを語尾に付けることで、<標準語ではとても言えないエロくて恥ずかしい台詞でも、何とかなる>好例なのかもしれない。

原作通りかと思えば、園子温監督の出身地ということらしい。公式サイトにはロケ地マップもある。

出演者に占めるグラビアアイドル系の女優陣の比率がすごい。しかも、惜しみなく下着だとか水着のシーンがバンバンでてくる。

このあっけらかんとしたおバカさ加減が、同じようにお色気満載映画だった『鬼灯さん家のアネキ』(今泉力哉監督)にも、欲しかった。

この手の映画には、上品さや良識を残すと、かえって照れくさいものなのだ。

生まれる前に母親のお腹の中から胎児同士で通信しあった運命のひとと、高校で出会うというロマンチックな要素。

それぞれが異なる特殊能力をもったエスパーたちが平和のために結集するという、『X-Men』なら盛り上がり必至の要素。

この二大要素がありながら、徹底的にくだらなさとエロさで映画を進行させていく。凄い作品である。

(C)若杉公徳・講談社/映画「みんな!エスパーだよ!」製作委員会

園子温らしさはどこか

園子温らしさを感じさせたのは、『自殺サークル』ばりに、女生徒の集団が異口同音に「仲良くしましょう!」と唱えてすり寄ってくるシーンくらいか。

そういえば、市民ホールの観客席に集めた大勢の女性たちが全員眠らされているシーンは、あの『TENET』の冒頭のオペラハウステロ事件にパクられていたぞ。きっと、クリストファー・ノーラン監督も『みんな!エスパーだよ!』を観たに違いない。

本作でストーリーをあれこれ論じるのも無粋だが、あれだけ迫力をみせたポルナレフ愛子(高橋メアリージュン)をやっつける、普通なら見せ場であるべき部分が、あまりに雑で呆気ないのではないか。

また、劇中に何度となく繰り返される、運命の二人が相手をみつける合図となるメロディというのが、<起立礼の伴奏>ではないが単調な三音階なのは、どうなのよと思う。

こんな単調なメロディが観終わって耳に残るのは、ちょっと冴えない。終盤では、学校中の女生徒が、これを口ずさんでいるのが怖い。

あまりお下劣にならずに本作の感想を語るのは難しい。

鴨川の夢に現れる運命の彼女の、生足・ホットパンツ・タンクトップで陽光を浴びてという演出をみると、園子温監督にはこのまま健康的なエロ路線を突き詰めてほしいと願わずにはいられない。

一番エロかった出演者は誰かと振り返ると、私服姿だけなのに鴨川の母親(筒井真理子)だったのではないかと思ってしまった。永野と話が合うかもしれない。