『タイラー・レイク 命の奪還』
Extraction
タイラー・レイクという男。アズガルドの王子でもなく無敵のハンマーもないが、生身の人間とは思えぬ。報酬目的で救うだけのはずだった少年ともいつしか絆がめばえ、救い出してやろうと一肌脱いで大暴れする。
公開:2020年 時間:117分
製作国:アメリカ
スタッフ 監督: サム・ハーグレイブ 製作: アンソニー・ルッソ ジョー・ルッソ キャスト タイラー・レイク: クリス・ヘムズワース オヴィ・マハジャン: ルドラクシャ・ジェイスワル サジュ: ランディープ・フーダー アミール・アシフ: プリヤンシュ・ペインユリ ギャスパー: デヴィッド・ハーバー ニック・カーン: ゴルシフテ・ファラハニ
勝手に評点:
(一見の価値はあり)
コンテンツ
ポイント
- レイクがほのぼのしてたのは、昔の話だぜ(ピンとこない若者はググってみてね)。生身のクリス・ヘムズワースのアクションを観るのも久々だ。
- まあ、どうってことない映画だけど、楽しけりゃいいじゃんのルッソ兄弟お墨付き。
あらすじ
裏社会の傭兵タイラー・レイク(クリス・ヘムズワース)は、インド・ムンバイで誘拐された麻薬組織のボスの息子(ルドラクシャ・ジェイスワル)を救出するため、ギャングが支配するバングラデシュのダッカ市街地に向かい、少年の奪還に成功するのだが。
レビュー(まずはネタバレなし)
ルッソ兄弟製作だが、生身の人間
クリス・ヘムズワース主演のサバイバルアクション、製作がルッソ兄弟とくれば、当然ながら『アベンジャーズ』路線の活劇を期待してしまう。
おまけに世界中がステイ・ホームせざるを得ない状況下、Netflixにおける1か月の視聴世帯数史上最高記録を、わずか1週間で塗り替えたのも納得。
◇
さて、クリス・ヘムズワース演じる、このタイラー・レイクという男。アズガルドの王子でもなく無敵のハンマーもないが、生身の人間とは思えぬ戦いっぷりにまずは満足。
しかもただのマッチョな傭兵ではなく、難病の息子を亡くしていたり、妻とは別れていたりのつらい過去もあり、本来は報酬目的で救うだけのはずだった少年とも絆がめばえ始める。
まあ、言ってしまえば、途中から報酬目当てでなくなった仕事なのだけれど、つい息子と重なって見えてしまう少年を救い出してやろうと、命を張って大暴れしてしまう話だ。
孤軍奮闘で逃げ回っているだけではなくて、俺を信じるかと少年に聞いた途端に隣のビルの屋上に放り投げたり、1・2・3でクルマから飛び降りろと言って1で飛んだり、タイラーにはお茶目な面もある。
◇
映画全体にスカッとする感じはあったが、欲をいえば、ダッカの麻薬王で敵役のアミール・アシフ(プリヤンシュ・ペインユリ)が頭もキレ、怖くてカッコいいキャラだったので、もっと直接対決してほしかった。
レビュー(ここからネタバレ)
もう一人のヒーローか
アシフの出番が多そうで実際は物足りなかったのに対し、ときにタイラー以上の活躍をみせたのが、少年の父親の麻薬王に雇われていた元特殊部隊員のサジュ(ランディープ・フーダー)だ。
ちなみに、恐れられていたはずの少年の父である麻薬王は収監されていて、本作においては殆ど影響を与えないワンカット友情出演みたいな役柄。
サジュは、この麻薬王に脅かされて無理筋な少年奪還をタイラーたちの組織に依頼するのだが、少年が救出されると、約束の報酬を払わず、タイラーたちに攻撃さえ仕掛けてくる始末。
うーん。なぜだ、サジュ? 強いんだけど、このサジュの立ち位置が良く分からないんでモヤモヤ。しかも、いつの間にかタイラーと協力して少年を救出する方向に話が転がりだしていく。もはや、敵味方が入り乱れの状態。
サジュにも幼い息子と妻がいて、それを守るために今回の強行策に及んだという理屈だけなら、ちょっと物足らない。
ほかにも出てくる怖い連中
変なキャラでいうともう一人、タイラーの元傭兵仲間だったギャスパー(デヴィッド・ハーバー)も無茶な人だった。
タイラーが少年とともにギャスパーの自宅に匿ってもらうと、
「どうせアシフはいつか必ず少年をみつける。捕まったら時間をかけて拷問だ。ひとおもいに殺してやった方が幸せだぞ」
という理屈が怖かった。
◇
紅一点はタイラーの組織のリーダーのニック・カーン(ゴルシフテ・ファラハニ)。彼女はあれこれ指示するだけかと思っていたら、終盤ではいい活躍を見せてくれた。
男子トイレにおけるアクションシーンは、『ミッション:インポッシブル フォールアウト』や『孤狼の血』には及ばなかったが、クールな役回りだ。
あとは、指詰めた少年か。アシフに屋上で脅かされ機転を利かせる登場シーンは良かったのに、途中でタイラーに恥をかかされて、よし今度こそ仕返ししてやるっていう流れとオチは、想定内だった。
◇
さて、終盤も終盤。ここで冒頭のタイラー登場シーンにも出てきた高飛び込みが再現されるのは意外。なるほど、ここにつなげるか。
確か、タイラーが以前にダイブしたときは、などと記憶を巡らせていると、いつのまにかラストシーンになっている。
ここのピントをぼかしたままで終わるところ、憎い演出だと思った。答えは人それぞれ違うかもしれないが。