『28年後…』今更レビュー|28ヵ月後じゃないんだね

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『28年後…』
 28 Years Later

ダニー・ボイル監督がアレックス・ガーランド脚本で18年ぶりに描く、感染者の蔓延社会の恐怖。

公開:2025年 時間:115分  
製作国:イギリス

スタッフ 
監督:          ダニー・ボイル
脚本:      アレックス・ガーランド
キャスト
スパイク:   アルフィー・ウィリアムズ
アイラ:        ジョディ・カマー
ジェイミー:

     アーロン・テイラー=ジョンソン
ケルソン医師:    レイフ・ファインズ
エリック:   エドヴィン・ライディング
ジミー・クリスタル:ジャック・オコンネル

勝手に評点:2.0
(悪くはないけど)

© 2025 28 Years Later Limited. All Rights Reserved.

あらすじ

人間を凶暴化させるウイルスが大都会ロンドンで流出し、多くの死者を出した恐怖のパンデミックから28年後。

生き延びるために海を隔てた小さな孤島に逃れた人々は、見張り台を建て、武器を備え、身を潜めて暮らしていた。

ある日、島で暮らす父ジェイミー(アーロン・テイラー=ジョンソン)と、島を一度も出たことのない12歳の息子スパイク(アルフィー・ウィリアムズ)は、島の外へと向かい、本土に渡る。

彼らはそこで、人間が人間でなくなった感染者だらけの恐怖の世界を目の当たりにする。

レビュー(ネタバレあり)

『28日後…』(2002)、『28週後…』(2007)と続いた本シリーズ、よもや18年ぶりに第3作『28年後…』が撮られるとは想像していなかった。

しかも、ダニー・ボイル監督と脚本のアレックス・ガーランドという強力タッグの復活だ。

アレックス・ガーランド『エクス・マキナ』(2015)以降、独自ワールドの怪作に自らメガホンを取るようになったが、ダニー・ボイルとのコンビには安心感がある。

などと期待を膨らませて観始めたのだけれど、冒頭から悶絶必至。

子供たちが張り詰めた雰囲気のなか、「テレタビーズ」(幼児向けTV番組です)を観ているところを、赤い目をした例の連中がいきなり襲い掛かってくる。

ゾンビのようで死人ではない。恐怖のウイルスに感染し狂暴化した、人間ではなくなった者たちだ。

大人も子供も餌食になる中、ジミー少年が一人だけ逃げ延びるというプロローグなのだが、感染者たちの描き方がえげつない。

18年ぶりなのだから、もう少しジワジワと観客を怖がらせるとか、勿体つけた演出はできないものか。Jホラーとは対極的だ。

そして舞台は海の孤島へ。感染者から断絶し、近代文化とは取り残されたような環境だが、それでも島民は秩序ある平和な生活を送っている。

主人公の少年・スパイク(アルフィー・ウィリアムズ)は、一人前の男になるための通過儀礼として、父ジェイミー(アーロン・テイラー=ジョンソン)とともに、今やウイルスのせいで封鎖状態にあるイギリス本土に潜入する。

島国ならではの設定だなあ。他のEU諸国ではこうはいかない。感染した暴徒たちが大勢いる本土に乗り込んでいくシチュエーションは、『新感染半島 ファイナルステージ』に似ている。あっちは朝鮮半島だったけど。

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本土と島が海の中にある一本道で繋がっていて、干潮の時だけ通行できるというのも、舞台設定としては面白い。小舟で行き来するよりも、スリリングだし。

肥満して地面を這うように動く<スローロー>や、体が大きく狂暴で大きい<アルファ>といった、新種の連中が次々と父子に襲い掛かってくる。

その醜い姿や動きは、『進撃の巨人』を彷彿とさせるが、それを弓矢で倒していく活劇風な展開に、いったいいつの時代の話なのかと、不思議な感覚になる。

はるか遠くに見える連中が、父子に気づくと走って近づいてきて、いつの間にかヤバい状況にという見せ方は、怖さがジワってなかなかうまいなと思った。

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だが、いくら人間に見えないからといって、感染者をバッタバッタと残忍に殺していくのを見せられると、さすがに胸糞が悪くなる。

そういう感受性のヤツは、このシリーズのターゲット顧客層ではないのだろうけどさ

相手がゾンビなら、ひたすら逃げることになるのでよいが、このシリーズは、とにかく生きるために殺すのだ。それは分かるが、見せ方がグロい。

一旦、どうにか島に生還した父子だが、スパイクには病気の母親アイラ(ジョディ・カマー)がおり、目下不倫中の父と訣別した彼は、母を医者に診せるために、二人で再び本土にわたる。

子供がこういう無茶をする展開は、『28週後…』でもお馴染みのパターン。当然、危険な状況に陥るのだが、二度目の冒険ではスパイクが随分逞しくなっているのは、成長が早い。

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途中で危ない所を救われたNATO所属のスウェーデン人兵士エリック(エドヴィン・ライディング)

これから三人で旅するのかと思いきや、即座に敵に首を引っこ抜かれる始末。この常識破りの残酷展開も『28日後…』譲りで懐かしいわ~。

結局、訪ねて行った医師ケルソン(レイフ・ファインズ)は、ヨードを全身に塗りたくった黄色い姿とスキンヘッドで異様だが、中身はどうやらまともそう。

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母は結局死んでしまうが、スパイクは医師から死生観について教わる。

ケルソン医師とともにいくつか危機は乗り越えるが、これまでの物語の流れとはちょっと雰囲気が異なってくる。

途中で救い出した、感染者が産み落とした未感染の胎児を、スパイクは故郷の島に連れ帰り、再び本土へ。そして、エンディング間際に、アルファたちに襲われるスパイクのもとに、謎の男たちが助っ人に現れる。

色とりどりの衣装で、殺戮を楽しむかのようにアルファたちを始末していく。鮮やかな色の服をきた男たちが、冒頭のテレタビーズの着ぐるみたちを思わせる。

そして、この集団の首領こそ、冒頭に登場した少年が成長した、ジミー卿(ジャック・オコンネル)なのだ。

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ここで映画は終わり、私はようやく続編の存在を知る。なんと、すぐに本作の続編が控えていたとは。

どうみても、この作品のレイフ・ファインズは名優の無駄遣いでしかないが、きっと続編でジミー卿とともに活躍するのだろう。

でも、18年待って作られた作品が、こんな中途半端に終わって続編に繋ぐのってどうなのよ。このシリーズは1話完結の切れ味の良さが持ち味だったのに。

続編は『28年後… 白骨の神殿』だってさ。そんな分かりにくいタイトル付けるなら、途中に『28ヵ月後…』を撮ってくれた方が、余程スッキリするのだが。