『69 sixty nine』
公開:2004年 時間:113分
製作国:日本
スタッフ
監督: 李相日
脚本: 宮藤官九郎
原作: 村上龍『69』
キャスト
矢崎剣介(ケン): 妻夫木聡
山田正(アダマ): 安藤政信
岩瀬学(イワセ): 金井勇太
松井和子(レディ・ジェーン):
太田莉菜
佐藤ユミ(アン・マーグレット):
三津谷葉子
長山エミ: 水川あさみ
工業の番長: 新井浩文
中村譲: 星野源
大滝良: 加瀬亮
増垣達夫: 柄本佑
書記長: 瀬山俊行
城串裕二: 桐谷健太
相原先生: 嶋田久作
ケンの母: 原日出子
ケンの父: 柴田恭兵
勝手に評点:
(一見の価値はあり)

コンテンツ
あらすじ
ベトナム戦争と学生運動に揺れる1969年、佐世保に住む高校三年生の矢崎剣介(ケン)は、同級生のマドンナ、”レディ・ジェーン”こと松井和子の気を惹くため、友人のアダマこと山田正らと共に校内の全共闘を言いくるめて、高校をバリケード封鎖しようと提案する。
バリ封は成功し、ケンは仲間と達成感を味わうが、結局警察に犯行を突き止められ、ケンたちは停学処分となる。しかしその結果、松井和子たちと接近することに成功する。停学が明けたケンたちは、今度はフェスティバルの開催に向けて準備をすすめる。
途中、長山ミエを誘ったことによって工業高校の番長に睨まれるも、友人の助けで窮地を脱し、フェスティバルは大成功を収める。
今更レビュー(ネタバレあり)
『国宝』の李相日監督と村上龍原作の組み合わせで、こんなにくだけた青春ムービーが撮られていたなんて、若い世代には想像できないかもしれない。
セックスやドラッグを題材に、退廃的な世界を書きまくる村上龍の著作の中で、『69』は村上本人が青春期を過ごした基地の町・佐世保の1969年を描いた自伝的小説として、異彩を放つ。
宮藤官九郎の脚本なので相当笑いとくだらなさが加わったと思うだろうが、原作も相当に脱力系な笑いを含んでいて、正直クドカン色は控えめだと思った。
時代はベトナム戦争や学生運動に揺れる頃であり、米軍基地と共生する佐世保の町には、独特の市民感情があったのだろう。
だが、妻夫木聡が演じる主人公の高校生矢崎剣介(ケン)は、そんな小難しいことに興味はなく、目立つ行動でマドンナの“レディ・ジェーン”こと松井和子(太田莉菜)の気をひくことにしか関心がない。

冒頭で米軍基地の金網をよじ登って不法侵入しようとする動機も不純すぎて笑。
妻夫木聡は20年後に『宝島』で物品強奪犯(戦果アギヤー)の一員として沖縄基地に忍び込んで暴れることになるが、それはまた別のお話。
爽やかな笑顔でくだらない言動を繰り返すケン。こういうお調子者の若造役をやらせると、あの頃の妻夫木聡は天下一品だった。
まさか後年、李相日監督と撮る傑作『悪人』で、笑顔を封印した名演技を見せることになるとはね。
ケンはレディ・ジェーンの気をひこうと、二枚目だが訛りがひどいアダマ(安藤政信)や、使い走りで鈍くさいイワセ(金井勇太)らとともに、校内の全共闘を言いくるめて、高校をバリケード封鎖してしまう。
このあたりから物語は、何の思想もない悪ガキどもが、自主映画やロックバンド、ダンスといったイベントをいっきに見せて派手なフェスティバルを開催しようという話に突入していく。
軽薄なケン(妻夫木聡)と、堅物で黙っていれば二枚目のアダマ(安藤政信)の組み合わせは魅力的だが、そこにイワセ(金井勇太)も加えたメイン格の三人以外の取り巻きも、おそろしく豪華なので驚く。
例えば全共闘メンバーの中に、加瀬亮や柄本佑、クラスのお調子者に桐谷健太、さらにバリ封の最中に便意を催して四苦八苦するダメ生徒に星野源、等々。
当時、この級友たちはどの位、売れっ子だったのだろう。星野源が校長先生の机の上で脱糞する姿など、とてもガッキーには見せられないレアもの映像。

同じ高校のマドンナには、レディ・ジェーン(太田莉菜)とアン・マーグレット(三津谷葉子)、そして他校のダンスクイーンに水川あさみ、その彼氏で工業高校の番長が新井浩文。
レディ・ジェーンはどこかで見た顔と思ってたら、ドラマ『おいハンサム!!』で浜野謙太の後輩の美人社員役のひとか。
- その他、先生役は体育教師・嶋田久作を筆頭に、峯村リエ、豊原功補、小日向文世、岸部一徳
- バリ封犯人逮捕に登場する刑事の國村隼
- ケンの両親には柴田恭兵と原日出子
- 意外なところでは、想像の中のいい女に井川遥、喧嘩を仲裁する極道に村上淳など
大人の方もキャスティングは豪華だが、ケンの父親に柴田恭兵はクールすぎて、ちょっと原作イメージと違うかな。

悪ガキどもではあるが武闘派ではないため、終盤で工業高校の番長以下は出てくるが、けして流血沙汰にはならず、喧嘩もバイクで暴走もない。
ベトナム戦争も全共闘も、あくまで時代のキーワードとしてしか使われないが、かといってケンたちは、女のケツを追い回すだけの若者の映画ではない。
モテたいことを原動力に、ロックバンドに精を出したり、ゴダールを意識した映画を撮ろうとしたり、流行や文化知識で理論武装して女子を口説こうとしたり、至極真っ当な青春ムービーなのだ。
『11PM』のオープニング映像とテーマ曲は、久々に聴いたらエモかったっす。
