『バレリーナ The World of John Wick』一気通貫レビュー⑤|復讐が舞う

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『バレリーナ The World of John Wick』
From the World of John Wick: Ballerina

『ジョン・ウィック』シリーズ初のスピンオフ。なんと主演はアナ・デ・アルマス。魅せる!

公開:2025年 時間:125分
製作国:アメリカ

スタッフ 
監督:         レン・ワイズマン


キャスト
イヴ・マカロ:    アナ・デ・アルマス
ジョン・ウィック:   キアヌ・リーブス
ウィンストン:   イアン・マクシェーン
シャロン:      ランス・レディック
ディレクター:アンジェリカ・ヒューストン
ノーギ:シャロン・ダンカン=ブルースター
教団主宰:      ガブリエル・バーン
ダニエル・パイン:  ノーマン・リーダス
レナ:  カタリーナ・サンディノ・モレノ

勝手に評点:3.5
(一見の価値はあり)

(C) 2025 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

あらすじ

謎の組織「ルスカ・ロマ」で殺しのテクニックを磨き、暗殺者として認められたイヴ(アナ・デ・アルマス)は、ある殺しの仕事の中で、亡き父親に関する手がかりをつかむ。父親を殺した暗殺教団の手首にあった傷が、倒した敵にもあったのだ。

コンチネンタルホテルの支配人・ウィンストン(イアン・マクシェーン)とその忠実なコンシェルジュのシャロン(ランス・レディック)を頼り、父親の復讐に立ち上がるイヴだったが、教団とルスカ・ロマは、はるか以前から相互不干渉の休戦協定を結んでいた。

復讐心に燃えるイヴは立ち止まることなく、教団の拠点にたどり着くが、裏社会の掟を破った彼女の前に、伝説の殺し屋ジョン・ウィック(キアヌ・リーブス)が現れる。

レビュー(ほぼネタバレなし)

『ジョン・ウィック』シリーズ全4作のメガホンを取ったチャド・スタエルスキに代わり、『アンダーワールド』レン・ワイズマンが監督を務める。

スピンオフという扱いにはなっているが、これはもう正史と言ってもいいだろう。

主人公はアナ・デ・アルマス演じる殺し屋イヴ・マカロになっているが、ジョン・ウィックだってちゃんと重要な役を担っているし、シリーズでこれまで築いてきた世界観は、しっかりと踏襲している。

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これまでの『ジョン・ウィック』シリーズ作は、回を追うごとにスケールもアクションもレベルアップしてきており、『ジョン・ウィック:コンセクエンス』でついに到達点に達した手ごたえがあった。

これ以上、ジョン・ウィックに不死身の強さを与えても、もはや行き詰まるのが見えていたところに、本作の登場。

伝説の殺し屋と化したジョン・ウィックの強さは従来通りでも、父を殺されて復讐に燃え、殺し屋として成長していくイヴを主人公に据えることで、シリーズに新たなブルーオーシャンを見出したといえそう。

謎の教団に父を殺された少女イヴは、女子はバレエ、男子はサンボで鍛え上げて殺人兵器を養成する組織「ルスカ・ロマ」に拾われて、一流の殺し屋として成長していく。

イヴは父の仇である教団を突き止めるが、そこは「ルスカ・ロマ」と不戦協定を結んでいる先であり、組織を飛び出して敵のアジトに向かう。

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更に、お馴染みのコンチネンタルホテルの支配人ウィンストンやコンシェルジュのシャロン、そしてジョン・ウィックも絡んできて、激しいバトルを展開するのが大きな流れ。

時系列的には、3作目『ジョン・ウィック パラベラム』とほぼ同時期の物語のようだ。

たしかに『パラベラム』では本作同様、「ルスカ・ロマ」ディレクター(アンジェリカ・ヒューストン)のもとをジョンが訪ね、愛犬の話をしたり、背中に焼き印いれられたりする場面があった。イヴと思しきバレリーナが舞台で特訓を受けているシーンもある(演者は違うけど)。

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まあ、そんな細かい話は覚えてなくても、本作はアクションだけで十分満足できるが、聖域コンチネンタルホテルでは殺しはご法度、そして裏社会でコインが流通していることくらいは知っていると尚良いかな。

今回もホテルの支配人ウィンストン(イアン・マクシェーン)は渋かったけど、頼れるコンシェルジュのシャロンを演じたランス・レディック撮影直後に亡くなっているのでこれが遺作。寂しい限りだ。

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少女たちが養成所で殺しのプロとして鍛えられて成長するパターンは、近年なら『ブラック・ウィドウ』スカヨハフローレンス・ピューを思い出すが、その役を『ブレードランナー2049』アナ・デ・アルマスが演じるとはちょっと驚き。

たしかに『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』のボンドガールでアクションは披露していたけど、こっちのシリーズは激しさのレベルが違う。

そんな彼女が強靭な大男たちを相手に激しいバトルを繰り広げるわけで、これはたまらない。

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ところで、殺し屋女子二人組の『ベイビーわるきゅーれ』のベースにある殺し屋協会の世界観って、『ジョン・ウィック』シリーズからインスパイアされたのだろうか。

あの作品のバトルもなかなかのものだと思っていたが、やはり本家のリアルでスピード感溢れるアクションは一味も二味も違う。

もともと、バトルアクションの品揃えには定評のある本シリーズは、単調な殴り合いや撃ち合いがずっと続くような退屈さとは無縁だ。

イヴがタイトなドレス姿で殴る蹴るのアクションを見せたかと思えば、ショットガンを撃ちまくったり、斧を放り投げたり、アイススケート靴のエッジで戦ったり。

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特徴的なのは手りゅう弾の使い方。あんな至近距離で使って大丈夫なのかというくらい、手元近くで爆発させる。一応、鉄の扉とか敵の身体とかを盾にして防ぐのだけれど、ギリギリのタイミングなのが凄い。

そして本作で初めてお目にかかったのが、火炎放射器の撃ち合い対決。これは破壊力満点で、なかなか逃げ切れない。だが途中で燃料切れとなったイヴは、武器を放水銃に持ち替えて応酬。

火炎流VS水流の戦い。こんなの見たことない。昔『X-MEN』で炎と氷のビーム合戦があった気はするけど、こっちの迫力にはとても敵わず。

ただ、途中に登場するクルマで激突してくるアクションだけは、あまりに凄すぎて嘘くさく思えてしまった。これはちょっと盛りすぎ?

この極端なカーアクションで思い出したのが、ジョン・ウー監督の新作『サイレントナイト』。そういえば、本作で教団の殺し屋レナを演じたカタリーナ・サンディノ・モレノも、あの映画に主人公の妻役で出演していた。

どっちの作品も子供のためのオルゴールが小道具になっていたけど、演出的にはこっちのが洗練されている。

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他には、NYやプラハのコンチネンタルホテルの雰囲気や、村の住民が全員殺し屋という、教団の集落の歴史ある町並の美しさ。

あと、毎度おなじみ、電話の交換手みたいなマダムたちが殺しの懸賞金情報を管理するクラシックなスタイルもいい感じ。

妻と愛犬を殺され、殺し屋稼業から足を洗いたいのに抜けられないジョン・ウィックと、父を殺され、組織を抜けて復讐に燃えるイヴ。

それを似た者同士というのかは分からないが、伝説の殺し屋とは微妙な距離を保ちながら、イヴは教団主宰(ガブリエル・バーン)を追い詰めていく。

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個人的には、韓国人の殺し屋(チョン・ドゥホン)とのカンフー対決が見ものだった。彼の蹴り技は凄いな。あと、福島リラ「ルスカ・ロマ」の対戦相手としてカメオ出演。

なんか、『ジョン・ウィック』シリーズ、まだまだ続けられるんじゃないか。そんな期待を抱かせる鮮烈な一本だった。