『ベイビーわるきゅーれ』
公開:2021年 時間:95分
製作国:日本
スタッフ
監督: 阪元裕吾
キャスト
杉本ちさと: 髙石あかり
深川まひろ: 伊澤彩織
浜岡一平: 本宮泰風
浜岡ひまり: 秋谷百音
浜岡かずき: うえきやサトシ
渡部: 三元雅芸
田坂: 水石亜飛夢
須佐野: 飛永翼
姫子: 福島雪菜
勝手に評点:
(一見の価値はあり)

あらすじ
高校卒業を目前に控えた女子高生殺し屋二人組のちさと(髙石あかり)とまひろ(伊澤彩織)。
組織に委託された人殺し以外、何もしてこなかった彼女たちは、高校を卒業したらオモテの顔として社会人をしなければならない現実を前に、途方に暮れていた。
二人は組織からルームシェアを命じられ、コミュ障のまひろは、バイトもそつなくこなすちさとに嫉妬し、二人の仲も徐々に険悪となっていった。
殺し屋の仕事は相変わらず忙しく、ヤクザから恨みを買ったことから面倒なことに巻き込まれてしまう。
今更レビュー(ネタバレあり)
女子高生殺し屋コンビ
ずっと観たいと思っていたのに先延ばしにしてしまっていた『ベビわる』をついに観た。イマドキ女子高生でありながら精鋭の殺し屋という二人組の異色青春アクション。あ~、こういうノリなのかあ。
掛け合い漫才のような会話の二人。激しいトークを浴びせるテンション高い系のちさと(髙石あかり)と、コミュ障で常にどんよりキャラのダウナー系のまひろ(伊澤彩織)のバディ。組み合わせ的には『探偵はBARにいる』の大泉洋と松田龍平のようなバランスか?
緩い内容が続く会話だけならただの青春コメディだが、何せ二人はプロの殺し屋だ。アクションとなれば、切れ味抜群の動きを見せるし、銃火器類もタランティーノ作品並みにお手軽にトリガーをひく。
冒頭のコンビニ店で何人もの刺客を相手にした立ち回りが、この作品の世界観をわかりやすく教えてくれる。ドラマの流れ的にはギャグだが、アクションパートに移行すると迫真のバトルにモードチェンジ。そういう映画らしい。
◇
なんで二人が殺し屋なのかはよく分からないが、なんでプロの殺し屋なのにバイト探しをしているのか、なんで同居しているのかは、やがて判明する。

女子高生で殺し屋組織に登録している二人は、会社のルールに則って、高校卒業でアパートを借りてバイトをすることになっているのだ。会社が用意したアパートが鶯谷というミスマッチ感がツボ。
裏稼業の中でも、大手のしっかりした組織に所属しているのが面白い。更には委託先の死体清掃サービスまである。
◇
阪元裕吾監督の『ある用務員』に登場した女子高生の殺し屋コンビ、リカ&シホで人気を博した髙石あかりと伊澤彩織を主演に起用し、同じような役で『ベイビーわるきゅーれ』が撮られる。
ともに映画初主演だが、高石あかりは2025年後期の朝ドラ『ばけばけ』のヒロインに選ばれている。一方の伊澤彩織はスタントが本職で、『ジョン・ウィック:コンセクエンス』でもアクションを披露していたとは驚き。そりゃ、本作のバトルシーンが際立つわけだ。

殺し屋はメイドカフェにいる
ちさととまひるが依頼を受けて始末した援交目的っぽいオヤジが、とある暴力団の幹部で、その組織を牛耳る男が、復讐のために犯人を捜させるというのが大きな話の流れ。
この極道の男・浜岡一平が(本宮泰風が最高!)、だんごを買った和菓子屋の店主(仁科貴)に「はい、おつり200万円」と渡された硬貨を睨み、真面目な顔で「カネが足りねえだろう!」と凄むところは本作イチで怖い場面。

浜岡には息子のかずき(うえきやサトシ)と娘のひまり(秋谷百音)という仲の悪い兄妹がいるが、殺し屋探しはこのサディスティックなひまりに委ねられ、腕の立つ渡部(三元雅芸)とともに調査を始める。
◇
ひまりと渡部が、犯人探しでちさとたちの存在に気づき始める一方で、アルバイト探しに精を出す二人は秋葉原のメイド喫茶で慣れない「萌え萌え、キュン」の仕事を始める。
やがて、もつれた物語は収束していき、最後にはひまり・渡部コンビとの決戦に発展する。

メイド喫茶を訪れた浜岡が、はじめは「萌え萌え」に喜んでいたのに、「てめえ、ホントのメイドに送ってやろうか」と凄むのは笑。でも、このナイスなキャラは死ぬのも早かったのが惜しい。
◇
てなわけで、ストーリー云々を語る映画ではないのよ、本作は。ベビわるな二人の脱力系な会話と、本格バトルアクションを素直に楽しむのが正解。さあ、次作行ってみよう。