『ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE』考察・ネタバレ!あらすじ・評価・感想・解説・レビュー(パート1) | シネフィリー

『ミッションインポッシブル デッドレコニングPART ONE』一気レビュー⑦

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『ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE』
Mission: Impossible – Dead Reckoning Part One

ついに登場、人気シリーズ最新作は前後編の二部作。危険を顧みないスタント野郎トム・クルーズのどこまでやるの!?

公開:2023 年  時間:163分  
製作国:アメリカ
 

スタッフ 
監督・脚本: クリストファー・マッカリー

キャスト
イーサン・ハント:    トム・クルーズ
グレース:     ヘイリー・アトウェル
ガブリエル:     イーサイ・モラレス
パリス:     ポム・クレメンティエフ
ルーサー:      ヴィング・レイムス
ベンジー:       サイモン・ペッグ
イルサ:     レベッカ・ファーガソン
アラナ:      ヴァネッサ・カービー
ゾラ:     フレデリック・シュミット
ジャスパー:      シェー・ウィガム
ディガス:グレッグ・ターザン・デイヴィス
キトリッジ:     ヘンリー・ツェニー

勝手に評点:4.0
(オススメ!)

(C)2023 PARAMOUNT PICTURES.

あらすじ

IMFのエージェント、イーサン・ハント(トム・クルーズ)に、新たなミッションが課される。それは、全人類を脅かす新兵器を悪の手に渡る前に見つけ出すというものだった。

しかし、そんなイーサンに、IMF所属以前の彼の過去を知るある男が迫り、世界各地で命を懸けた攻防を繰り広げることになる。

今回のミッションはいかなる犠牲を払ってでも達成せねばならず、イーサンは仲間のためにも決断を迫られることになる。

レビュー(まずはネタバレなし)

デッドレコニングとは

待ってました!トム・クルーズ最新作はシリーズ初となる前後編構成。『トップガン マーヴェリック』の大ヒット直後に、こんな大型作が控えているとは、さすが働き者。

米国俳優協会のストライキの影響で、日本びいきのトム・クルーズが公開直前に来日できなくなってしまったのは残念だが、上映の直前には彼からのメッセージが流されて、ちょっと嬉しくなる。

監督は『ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション』(M:I-5)、『ミッション:インポッシブル フォールアウト』(M:I-6)に続き、シリーズ監督三作目となるクリストファー・マッカリー

トム・クルーズも全幅の信頼を置いているのだろう。実際、彼が手掛けてから、シリーズは一段と面白くなっている。

タイトルの『デッドレコニング』とは推測航法、すなわち船舶や車両などの移動体の現在位置を推定する技術をさす用語。

本作では全員が血眼で追いかけるマクガフィンとなる一対の鍵が登場するが、それが使われる人類滅亡の脅威ともなりかねない装置と、この推測航法デッドレコニングが関係している。

とはいえ、デッドという言葉や、最後の位置から相手や自分の動きを推測するという意味は、映画全体の暗喩とも感じられる。

不老のスタント野郎

冒頭、この装置によって巨大な潜水艦が狙われるシーンはスケールも大きく緊迫感もある。イーサン(トム・クルーズ)やIMFのメンバーが挨拶代わりに派手なアクションをみせる、シリーズお馴染みのアヴァンタイトルとは一味違い、重厚だ。

イーサンにしては珍しく、登場シーンから陰鬱で、作品全体のシリアスさが伝わる。そこに古式ゆかしく、イーサンのもとに上司からミッションのテープが届く。

タイトルバックの導火線とテーマ音楽、そしてこの消滅するテープ『スパイ大作戦』の頃からの不滅アイコン。今回イーサンは、何の背景も知らされず、盗まれた鍵を奪還するミッションを請け負う。

本シリーズの凄いところは、回を追うごとにアクションも興奮度も着実に増量傾向にあるところだろう。命知らずのスタント野郎トム・クルーズは、全てのカットではないだろうが、かなりの数のスタントシーンを自ら演じている。

500回のスカイダイブ、13,000回のモトクロスジャンプ。俳優の域を越えている。しかも、ハリウッドを代表するスタープレイヤーが年齢を超越してやっているのだ。超人の称号にふさわしい。

公開時期の重なった『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』は、ハリソン・フォードの老いと正面から向き合ったアクションになっていた。若い頃の場面はCG加工だ。

それも一つの解法だが、われらがイーサンは年齢をとらない。CGの若作りもなしだ(おそらく)

金をかけたアンチエイジングはあるにせよ、基本は生身でできるところまで挑戦するのだろう。勿論、過去作のイーサンほど若くはないが、身体のキレは衰えているようにはみえない。ご立派です。

往年のメンバー勢ぞろい

本シリーズを初めて観る人でも無論楽しめるが、古参のファンには嬉しいメンバーが勢ぞろい。まずはイーサン以外では唯一の皆勤賞、天才ハッカーのルーサー(ヴィング・レイムス)

そして『ミッション:インポッシブル3』(2006)からの常連ベンジー(サイモン・ペッグ)は、ルーサーとのの凸凹コンビ健在。どこか頼りないのに、仕事はきちんとこなすベンジーは今回も期待通り。

(C)2023 PARAMOUNT PICTURES.

MI6を除籍された女スパイ・イルサ(レベッカ・ファーガソン)は、『ローグ・ネイション』(M:I-5)からのレギュラーメンバー。イーサンとも、深いところで信頼しあう仲になっている。

相変わらず眼光が鋭い。レベッカ・ファーガソン『DUNE/デューン 砂の惑星』(ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督)でもヒロインとして活躍中。

(C)2023 PARAMOUNT PICTURES.

IMFのメンバーではないが、ホワイト・ウィドウとして知られる闇商人アラナ(ヴァネッサ・カービー)が、前作『フォールアウト』(M:I-6)に続いて登場してきたのは嬉しい誤算。

彼女が前作で騙されたまま、イーサンを「ジョン・ラーク」の偽名で呼んでいるのも楽しい。

(C)2023 PARAMOUNT PICTURES.

ちなみに、一番の懐かしメンバーはIMFの元理事キトリッジ役のヘンリー・ツェニーだろう。このひと、記念すべき第1作『ミッション:インポッシブル』(M:I-1)でも、イーサンを追いかけてた上官だ。久々の出演ではないか。「おはよう、イーサン」の声のひとでもある。

新登場のキャラクター

次に新キャラクター。まずは鍵を空港で奪い取る天才的腕前のスリの女グレース(ヘイリー・アトウェル)。はじめはただの賑やかし女性キャラかと思ったが、どっぷりとミッションに組み込まれて、本作のメインキャラの一人に。

しかも演じているのがヘイリー・アトウェル『キャプテン・アメリカ』の恋人・エージェント・カーターではないか。正義のひとじゃない彼女もまた新鮮。

(C)2023 PARAMOUNT PICTURES.

そして、鍵を巡ってイーサンやグレースを追う、謎の男ガブリエル(イーサイ・モラレス)

本作のヴィラン的存在で、古くからイーサンのことを良く知っている。この男のヤバさをイーサンも熟知しているらしく、警戒するものの、あの手この手で襲い掛かってくる。

(C)2023 PARAMOUNT PICTURES.

そしてガブリエルの腹心の部下パリス(ポム・クレメンティエフ)が、女ターミネーターかと思わせる執拗さで、激しく獲物を追いかけてくる。

アジア系の顔立ちのこの過激女、ポム・クレメンティエフといえば『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の癒し系異星人マンティスだ。彼女は本来、アクションがこなせる女優なのである。

(C)2023 PARAMOUNT PICTURES.

過去作の集大成的な面白さ

さて、ネタバレせずにどう面白さを語るか。

まずは、今回の脅威となるAI装置の設定が、まさに生成AIの危険性が取り沙汰される現代にふさわしい。

デジタル情報はすべて敵に筒抜けになるリスクがあり、諜報機関は過去のデータを社員総動員で全て紙にタイプし始める。笑えるが、実は現実味のある恐怖である。

本作は上記の懐かしメンバーもそうだが、アクションや設定自体も過去作の集大成的な部分が多くみられる。

デスマスク製作の機械は相変わらず本番での信頼性が低いし、予告編に登場するはるか崖の上からの落下も過去作オマージュ、オリエント急行の登場もどこか第1作を思わせる。

だが、どれも過去作の単なるオマージュではなく、ワンランク上の仕上がりになっている。

ベネチアを舞台にしたサスペンスや、主人公とヒロインが手錠のままアクロバティックなカースタントを見せるなどは、ジェームズ・ボンドとの重複感は否めないが、模倣のチープ感はなく、もはやどちらが本家か分からない。

ルパン三世でお馴染み古いフィアット500アバルトでローマの細道を逃げ回ったり、列車の屋根の上でトンネルにぶつかりそうになりながら戦ったりと、ベタだがジェットコースター的な興奮も健在。

(C)2023 PARAMOUNT PICTURES.

レビュー(ここからネタバレ)

ここからネタバレしている部分がありますので、未見の方はご留意ください。

前編後編に分かれるため、本作だけではまだ物語の決着がつかない部分が多い。意外なキャラクターが亡くなったり、鍵の行方がどうなったりと、本作のラストで認識していることが、どこまで正しいのかも、続編を観ないと確信が持てない。

公開は2024年の6月というから、まだ1年もある。とはいえ、焦らされている感じはしない。『スターウォーズ 帝国の逆襲』ハン・ソロが敵の手に落ちて彫像にされてしまって、「待て、次号」みたいな放り出された感じのラストではない。

本作は本作で、きちんとひとつのクライマックスを切り抜けてくれるので、観る方も安心感できる。

(C)2023 PARAMOUNT PICTURES.

高い山頂の崖からバイクとともに自然落下するイーサン。なぜイーサンが崖の上に来たのかは、ベンジーが高度を考慮せずにGPSの地図を見て誘導したから(過去にもやってた)かと疑っていたら、そうではなかったが。

本作の最大の売りは、予告編のアイキャッチであるこの落下シーンだと思っていたが、個人的には、その後のオリエント急行が橋の爆破で落下するシーンの方が、断然興奮した。

一両ずつ渓谷から川に落ちていくのだが、その車両内を必死で這い上がっていくイーサンたちのカット。これは大迫力で目が釘付けになった。

(C)2023 PARAMOUNT PICTURES.

劇場の大スクリーンでぜひ観てほしい映画だと、冒頭にトム・クルーズが語ってくれるが、これは掛け値なしにそう思った。

米国俳優協会のスト影響で、今後大型作品の撮影・公開時期は大きく後ろにずれていく可能性が高い。『PART TWO』はもう撮影まで終わっているから安泰なのだろうか。

焦らされない終わり方とはいえ、さすがに1年以上待つのは厳しい。