『ミッションインポッシブル2』一気通貫レビュー②

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『ミッション:インポッシブル2』
 Mission: Impossible 2

シリーズ第2弾はジョン・ウーを監督に起用。二丁拳銃は出るわ、ハトは出るわ、そりゃもう、どこを切ってもド派手な演出。

公開:2000 年  時間:123分  
製作国:アメリカ
  

スタッフ 
監督:          ジョン・ウー

キャスト
イーサン・ハント:   トム・クルーズ
ナイア・ホール: タンディ・ニュートン
アンブローズ:   ダグレイ・スコット
ヒュー・スタンプ:
       リチャード・ロクスバーグ
ルーサー・スティッケル: 
          ヴィング・レイムス
ビリー・ベアード:  ジョン・ポルソン
スワンベック: アンソニー・ホプキンス


勝手に評点:2.5
(悪くはないけど)

あらすじ

休暇中、ロック・クライミングを楽しむイーサン・ハントの元に、またしても指令が届いた。

今度のミッションは細菌兵器を狙う元同僚の陰謀を阻止すること。そして、そのためにまずやり手の女泥棒ナイア・ホールに接触せよ、というものだった……。

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一気通貫レビュー(ネタバレあり)

どこを切ってもジョン・ウー演出

前作のデ・パルマから今回はなんとジョン・ウー監督。路線はまるで違う。どこを切ってもジョン・ウー印が出てきそうな、金太郎あめ状態。

興行成績としては、絶好調だ。トップスターに派手なアクション。スパイの仕事って、こんなに目立っていいのか、ル・カレの小説の世界とは真逆を行く。

前作以上に、オリジナルの『スパイ大作戦』の世界から離れていくようだが、もはや、そこが気になる人は観ていないのだろう。別モノ扱いで楽しめばいいのだ。

冒頭、バイオサイト製薬の研究員ネコルヴィッチ博士(ラデ・シェルベッジア)は、開発されたキメラウイルスと、その治療薬ベレロフォンを携えてシドニーからアトランタに移動。

博士はイーサンに護衛を頼んだのだが、飛行機の隣の席にいるのは、イーサンに変装したアンブローズ(ダグレイ・スコット)

IMFを寝返ったこの男は、仲間のヒュー(リチャード・ロクスバーグ)と組んで、飛行機を墜落させ、この開発品を奪取した。

始めから偽物ゴムマスクのイーサンが出てくると、誰も信用できない展開になりそうでやや辟易する。

無駄にすごい岩登りとカーチェイス

だが、さらにすごいのは、その事件の頃、本物のイーサン・ハント(トム・クルーズ)は休暇で音信不通のなか、エアーズロックらしき断崖絶壁でロック・クライミングを楽しんでいるのである。

その墜落ギリギリの危険アクションとカメラワークには惚れ惚れするが、ぶっちゃけミッションにもストーリーにも全く関係しない。さすが、盛り上げ重視ウー監督

そこにヘリが登場し届けられたサングラスをかけると、今回のミッションが流れる。音声は、もはやフェルプス君宛てではなく、イーサン宛てだ。

今回のミッションは、ナイア・ホールという大泥棒の女を仲間に引き入れてウィルスを奪還せよというもの。早速イーサンはセビリアに飛んで、大泥棒が好みそうな罠を張ってナイア・ホール(タンディ・ニュートン)を仲間に引き入れる。

イーサンの罠のかけ方も鼻持ちならないが、アウディとポルシェの男女じゃれ合いカーチェイスで車体ボコボコにして命がけでスピンする高級車が、製作費青天井の昼メロみたいなバカらしさで笑える。

こんなんで大丈夫かIMF

こうしてようやく勝気なナイアを仲間にしたが、ここでまた、IMFの新上司スワンベック(アンソニー・ホプキンス)が、のけぞるようなことを言ってのける。

イーサンが音信不通で休暇中だったので、イーサンへの変装経験のあるアンブローズを、ネコルヴィッチ博士のもとにIMF自身が派遣したのだ。そうしたら、まんまと持ち逃げされてしまった。

更に、ナイアを使えといったのは、泥棒の腕ではなく、アンブローズの元カノだから接触してくるかもという、素人目にもお粗末な発想なのだ。大丈夫かIMF。

今回、IMFの応援メンバーは二人だけ。前回の生き残り、天才ハッカーのルーサー(ヴィング・レイムス)と、新顔のヘリパイロット・ビリー(ジョン・ポルソン)だ。前作と違い、仲間割れや裏切りはないが、活躍度はやや弱め。

チームプレイで一番気に入っているのは、敵陣営に潜り込んだナイアとイーサンらが競馬場で落ち合う場面で、ナイアを尾行するヒューをビリー扮するドアマンが邪魔するところかな。何てことのないシーンだが、あのチープさにオリジナルのチームプレイ精神を感じる。

M:I-2 - 予告編

まずは二丁拳銃でいくぜ

さて、調査を進めるうちにイーサンは、アンブローズが持っているのは治療薬のベレロフォンだけで、キメラはバイオサイト社に保管されているものしかないと気づく。

この辺のプロセスはイマイチ釈然としないが、イーサンが本社ビルの真上を飛ぶヘリからダイブして、40秒しか開かないスリットをすり抜けて得意の宙づりで侵入するのは、もっと不可解だ。

だって、スリット開くか分からないタイミングで、待ちきれずダイブしちゃプロ失格だろう。

この後の展開は、もうジョン・ウーのためにある。保管されたキメラを全て破壊することに成功しかかって、最後の一本でちょっと躊躇う

そこにアンブローズらがナイアを連れて登場。激しい撃ち合い。二丁拳銃を構えてダイビング撃ち。キタコレ!

 

そして、最後のキメラが入った注射銃をアンブローズがナイアに拾わせると、なんと彼女はそれを自分の体内にショット。

まあ、ベタな展開だけど、すぐさま腕時計(G-Shockだ!)で致死までの残り時間20時間をセットするイーサンがカッコいい。

そんなに冷静なら、もっとうまい手が取れただろうに。だが、ここはとりあえず、ナイアを置いてパラシュートで飛び降りて退散するしかないらしい。

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イーサン・ハトには無駄な動き多し

20時間のうちに治療薬のベレロフォンを入手しないと、ナイアが無残な病状で死んでしまう。アンブローズはシドニーの街中に彼女を放ち、キメラを蔓延させて治療薬を大量に売り捌こうと企んでいる。

そしてイーサンは単身、敵アジトに乗り込む。敵の手下とのバトルは、飛び蹴りやら回し蹴りやら、どうにも派手だが無駄な動きが多すぎる

イップマン(ドニー・イェン)やザ・ファブル(岡田准一)を見て無駄のないアクションを学ぶと、イーサンのスパイ生命が10年は延びる気がする。

ジョン・ウーが二丁拳銃ときたら、次はハトだろうと安易な想像がヒットする。洞窟のようなアジトにハトにまみれて現れては敵を倒す。まさか「これじゃイーサン・ハトじゃん」と言わせたいのか。

イーサンが拉致され、アンブローズに何度も撃たれ絶命してしまうが、さすがにそんな展開はあり得ず、敵を変装させたことはミエミエ。

ただ、ここで、前半でアンブローズが仲間のヒューを恫喝するために、シガーカッターで小指を切った伏線が効いてくるのは良かった。射殺体は指に包帯をしているのだ。

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サービス精神旺盛なウー演出

仲間を殺してしまい驚くアンブローズを尻目に、ベレロフォンを盗んで一目散で逃げるイーサンの姿は、妙に滑稽だ。だが、主人公でも卑怯な手にでることはある。

そして、二人の戦いはまだ続く。バイク同士のアクションとなるが、まるで仮面ライダーさながらに、空中で衝突し、もつれ合ったりする。もう、ここまできたら、何でも思いついたものを、やって見せてくれという気持ちになる。

最後に勝負がつくが、イーサンはアンブローズにとどめを刺さず背を向けて、救出が間に合ったナイアのもとへ。その隙を突き、銃口を向けるアンブローズ。

だが、なんと足元には、さっき落とした銃が砂に埋もれているではないか。ここから先は、まるで曲芸師のようなワンアクションで反撃である。最後まで、見た目にこだわるウー演出なのだ。

正直、脚本はツッコミどころが多いし、ナイアの致死まで20時間のタイムリミットのハラハラ感も相当薄っぺらい。このホンではアンソニー・ホプキンスが浮いてしまうよ。

とはいえ、サービス精神旺盛で憎めないのが、ジョン・ウー監督作品らしいところ。