『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』シリーズ一気通貫レビュー

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『蜘蛛の巣を払う女』
The Girl in the Spider’s Web

公開:2018年 時間:117分  
製作国:アメリカ

スタッフ 
監督:        フェデ・アルバレス
原作:    ダヴィド・ラーゲルクランツ

    『ミレニアム4蜘蛛の巣を払う女』
キャスト
リスベット・サランデル: クレア・フォイ
ミカエル・ブルムクヴィスト:
         スヴェリル・グドナソン
エド・ニーダム:ラキース・スタンフィルド
カミラ・サランデル:シルヴィア・フークス
ヤン・ホルツェル:    クレス・バング
フランス・バルデル:
       スティーヴン・マーチャント
アウグスト・バルデル:
       クリストファー・コンベリー
エリカ・ベルジェ:ヴィッキー・クリープス
プレイグ:    キャメロン・ブリットン

勝手に評点:3.0
 (一見の価値はあり)

あらすじ

冷え切った空気が人の心まで凍てつかせるストックホルム。背中にドラゴンのタトゥーを背負う天才ハッカー、リスベット・サランデル(クレア・フォイ)に仕事が依頼される。

AI研究の世界的権威であるフランス・バルデル博士(スティーヴン・マーチャント)が開発した核攻撃プログラムを米国国家安全保障局(NSA)から取り戻すこと。

それは、その天才的なハッキング能力を擁するリスベットにしてみれば簡単な仕事のはずだった。

しかし、それは16年前に別れた双子の姉妹、カミラ(シルヴィア・フークス)が幾重にもはりめぐらした狂気と猟奇に満ちた復讐という罠の一部に過ぎなかった。

一気通貫レビュー(ネタバレあり)

『ミレニアム』シリーズを生み出した作家スティーグ・ラーソンは3作目まで執筆して亡くなっている。

これまでに、シリーズ3作は全てスウェーデンで映画化され、中でも1作目はデヴィッド・フィンチャーによりハリウッドリメイクされた。

いずれも出来はよいが、原作者が存命でないのなら、もう映画化は打ち止めだろうと思っていた。だが、ダヴィド・ラーゲルクランツが後を引き継ぎ、原作シリーズは遜色のない品質で書き続けられている。

こうして生まれたのが、4作目にあたる『蜘蛛の巣を払う女』なのだ。

すっかりお馴染みになった天才ハッカーのリスベットと雑誌編集長ミカエルの名コンビは継承されるが、キャストは一掃。

今回リスベットを演じるのはクレア・フォイ。これまで3作全てを演じてきたノオミ・ラパスや、米国版のルーニー・マーラのド迫力の渾身の怪演に比べると、あまりにも普通すぎるのがまず残念。

また、ミカエル役を演じるスヴェリル・グドナソンもだいぶ若返ってしまった印象で、これまでノオミ・ラパスと組んでいたスウェーデンの名優ミカエル・ニクヴィストの渋さと伊達男ぶりに比べると、こちらも物足りない(ニクヴィストは2017年に他界)。

とはいえ、映画全体は重厚でゴージャスな雰囲気に包まれ、北欧を舞台にした映画であることは随所から伝わってくる。

監督は『エイリアン ロムルス』が良かったフェデ・アルバレス

幼少期のリスベットと双子の妹カミラが氷上の孤城のような家でチェス対決をする場面から、父であるロシアの巨悪ザラチェンコからリスベットだけ逃げるまでの冒頭の激しい展開。

AI研究の世界的権威フランス・バルデル博士(スティーヴン・マーチャント)の依頼で、彼が開発した核攻撃プログラムをNSAから取り戻すはずのリスベット。

だが、彼女は珍しく仕事をしくじり、博士が幼い息子アウグスト(クリストファー・コンベリー)の前で殺され、その罪はリスベットになすりつけられてしまう。

リスベットのアパートが敵に襲われ、派手に爆破される様子を、寒々しくも美しい北欧の町並の引きのショットで見せる演出がいい。

リスベットが普段は直接会わないミカエルに、隣接するビルの外付けエレベータを向かい合って止まるように細工し、電話でコンタクトするショットも心憎い。

リスベットの乗り回す単車はドゥカティ、盗むクルマはランボルギーニ・アヴェンタドールとこちらもゴージャスだ。

天才ハッカー仲間のプレイグ(キャメロン・ブリットン)や、NSAからプログラムを取り戻しにやってきたエド・ニーダム(ラキース・スタンフィールド)らと共に、リスベットは謎の敵を追う。

スパイアクションのような展開は、全体の流れが洗練されすぎていて、空港での攪乱作戦は『ボーン・アイデンティティー』、ハッカーが知恵を絞って戦う様子は『ミッション・インポッシブル』のようだ。

よく出来てはいるが、『ミレニアム』らしさが薄らいでしまった感じも否めない。

殺されたバルデル博士の息子アウグストは、天才的な頭脳を持つサヴァン症候群の少年だ。ただ、映画ではあまりその才能が前面に出ておらず、普通に会話もしている。

原作では無口で絵ばかり描いている子供で、父親が殺された瞬間の映像を、写真のような正確さで絵に描いて犯人を知らせるという展開だった。これは映画的な演出なのに、なぜか全て割愛されてしまったのが惜しい。

今回の敵は、自殺したと思われていた妹カミラ(シルヴィア・フークス)。幼少期にリスベットと生き別れ父親に折檻され続けた妹が、自分を救いに来なかった姉に復讐する話。2作目は親子喧嘩、3作目は兄妹喧嘩、そして今度は姉妹喧嘩という訳だ。

リスベット役のクレア・フォイ『ファースト・マン』で宇宙飛行士の妻、カミラ役のシルヴィア・フークス『ブレードランナー2049』の敵レプリカントとして、どちらもライアン・ゴズリングと共演。

ミレニアムの原作はいずれも超長編であり、過去の3作は全て3時間近い完全版で観ていたせいか、今回は随分とコンパクトにまとめてしまったような印象を受けたが、2時間枠ならこんなものか。

リスベットからすっかり毒気が抜けてしまったことは、何とも言えず寂しい。もう続編映画化はないだろうな。