『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』今更レビュー|そういうジャンルの映画だったか

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『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』
 The World’s End

エドガー・ライト監督のスリー・フレーバー・コルネット3部作、ついに完結編

公開:2013年  時間:109分  
製作国:イギリス

スタッフ 
監督:        エドガー・ライト

キャスト
ゲイリー・キング:   サイモン・ペグ
アンディ・ナイトリー:ニック・フロスト
スティーヴン・プリンス:
         パディ・コンシダイン
ピーター・ペイジ:  エディ・マーサン
オリヴァー・チェンバレン:
        マーティン・フリーマン
サム・チェンバレン:ロザムンド・パイク
ガイ・シェパード:ピアース・ブロスナン
バジル:   デイビッド・ブラッドリー

勝手に評点:3.0
  (一見の価値はあり)

(C)Focus Features

あらすじ

ゲイリー(サイモン・ペグ)はかつての親友5人組と故郷の田舎町で再会する。20年前、12軒のパブを一晩でハシゴするパブ・クロールに挑んだが失敗したことを悔やむ彼らは20年ぶりにパブ・クロールに挑むことに。

12軒目の店の名前は「ワールズ・エンド(世界の終わり)」。しかしチャレンジの途中、数々のトラブルが5人を見舞い、中には世界を終末に導きかねない異常事態も。それでも5人はパブ・クロールの成功を目指す。

今更レビュー(まずはネタバレなし)

一晩に5人で12軒のパブでハシゴ酒

『ショーン・オブ・ザ・デッド』(2004)、『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』(2007)に続く、
<スリー・フレーバー・コルネット3部作>の第3弾。

毎度お馴染みエドガー・ライト監督とサイモン・ペグ&ニック・フロストのトリオによる愛すべきおバカ映画である。

『ワールズ・エンド』などという壮大なスケールなタイトルがついているが、これは主人公たちが育った町にあるパブの名前。

この町で高校を卒業した5人の悪ガキどもは、その足でこの町にある12軒のパブを渡り歩きハシゴ酒に挑戦。だが、途中で挫折してしまう。

(C)Focus Features

それから20年後、その挑戦の中心的存在だったゲイリー(サイモン・ペグ)は中年でアルコール中毒となっていたが、突如故郷に戻ってきた。

それぞれの人生を歩んでいる4人を訪ね歩き、当時達成できなかった「一晩に5人で12軒のパブでハシゴ酒」(ゴールデンマイル)への再挑戦を企てる。

 

中年男たちが意気投合して故郷のパブをハシゴするというナンセンスな計画を実現するあたり、『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』(2010)の元カレ軍団のバトルに通じるバカバカしさで、エドガー・ライト節が炸裂。

(C)Focus Features
  • リーダー格のゲイリーには普段よりワイルドなサイモン・ペグ
  • 無二の親友で今は弁護士のアンディには鉄壁のバディ、ニック・フロストを配置
  • アウディのセールスディーラーでかつてのいじめられキャラ、ピーターは、いつも梶原善デーブ・スペクターに見えてしまうエディ・マーサン
  • 不動産屋のオリヴァーには常連のマーティン・フリーマン。当時はもう『ホビット』シリーズの主役もやっていたはず
  • オリヴァーの妹サムにはほぼ紅一点のロザムンド・パイク『ゴーン・ガール』のヒットはこの翌年なので、まだ比較的おとなしめ
  • そして、そのサムに惚れてるのがスティーヴン(パディ・コンシダイン)

これで中年男5人と若い女が1人。この連中が12軒のパブを一つずつ回ってはジョッキを空け始める。

(C)Focus Features

昔はどの店にも個性があったのに、今ではチェーン店になっていて味気ない店だったり、20年経ってもゲイリーが出禁になっていたりと、随所に笑いあり。

『サイドウェイ』ワインバー巡りをパブに替えたような感じ? これでバカ騒ぎして青春時代を懐かしむ映画なのだろうと思っていた。

だが、私は公開時に観た際にも衝撃を受けたはずの、大きなサプライズをすっかり忘れていた。

今更レビュー(ここからネタバレ)

以下、ネタバレになるので、未見の方はご留意願います。

何軒目かですっかり酔っ払ったゲイリーは、パブのトイレで並んだ、かつての自分たちのような高校生にからみ、もみ合いになる。仰天するのは、何かの拍子でその若者の首がもげ、青い血が飛び散ることだ。ナニコレ。

酔っ払いの妄想だと思ったがどうやら違うことに気づく。町全体の雰囲気がどうもおかしいとゲイリーたちは感じていたが、周囲の人々がみな、この若者同様に青い血のロボットにすり替わっているのだと分かってくる。

いや、もはやこれではコメディではない。SFスリラーだ。町中の人が何者かにすり替わっているなんて、まるで米国の赤狩りを描いたSF映画の古典『ボディスナッチャー』(原作はジャック・フィニィ『盗まれた街』)じゃないか。

(C)Focus Features

普通、想定していたものとまるで違うジャンルの映画になったら、観客は文句をいうものだ。怪獣特撮と思ったらコメディだった『大怪獣のあとしまつ』然り、バイオレンスの続編がミュージカルになっていた『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』然り。

だが、この映画はSFスリラーになっても笑いを持続させるせいか、意外なジャンルに落ち着いても、落胆はない。むしろ歓迎すべきサプライズだった。

ロボットたちに正体がバレたことを悟られないように、当初予定どおりパブのハシゴを続けようと考える能天気なところがいい。

(C)Focus Features

敵は、街の住民から採取したDNAからクローンのようにヒューマノイドを創り出し、だからみんな若々しいままらしい。

サム(ロザムンド・パイク)はかつての憧れの人物が若いままで現れたことに衝撃を受ける。それは若いからではなく、その人物は数年前に事故死した筈だからだという。ああ、何か眉村卓のジュブナイルSFっぽい。

正体を現したヒューマノイドたちが片手を突き出して大きく口を開ける姿は懐かしきペプシマンのそれに近い。

目と口を光らせた集団がゾンビのように夜の町をひしめく様子は、さすが『ショーン・オブ・ザ・デッド』の流れを汲んだ三部作といえる。

酔ったうえにパブの店内でジョッキ片手に敵と戦うゲイリーは、まるで『ドランクモンキー酔拳』ジャッキー・チェンだ。

後半にかつての高校の恩師だったガイ先生が登場するのだけれど、これがピアース・ブロスナン

そういえば、『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』には確か、ティモシー・ダルトン出てたよね! 歴代ジェームズ・ボンド俳優を起用することに、何か意味があるのか、エドガー・ライト

『ワールズ・エンド』って、ただのパブの店名だと思ってたけど、ホントに世界の終わりとも関係してくるとは。
敵の正体は、過去にいくつもの星の文明を高めるためロボットを送り込み支配してきたザ・ネットワーク。

「若い頃のお前に戻してやろう」という誘い文句に、動じないゲイリーがカッコいい。

「俺は指図など受けたりせず自由に暮らしたいのだ」