『デューン 砂の惑星 PART2』
Dune: Part Two
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督による待望の『デューン 砂の惑星 』第二弾。砂漠の民の救世主となったポールの復讐が始まる
公開:2024 年 時間:166分
製作国:アメリカ
スタッフ 監督: ドゥニ・ヴィルヌーヴ 原作: フランク・ハーバート 『デューン砂の惑星』 キャスト ポール・アトレイデス: ティモシー・シャラメ チャニ: ゼンデイヤ スティルガー: ハビエル・バルデム レディ・ジェシカ:レベッカ・ファーガソン アリア: アニャ・テイラー=ジョイ ガーニィ・ハレック:ジョシュ・ブローリン <ハルコンネン家> ウラディミール:ステラン・スカルスガルド フェイド=ラウサ:オースティン・バトラー グロッス・ラッバーン: デイヴ・バウティスタ <皇帝家> シャッダム4世: クリストファー・ウォーケン 皇女イルーラン: フローレンス・ピュー <ベネ・ゲセリット> ガイウス・ヘレン・モヒアム: シャーロット・ランプリング レディ・フェンリング: レア・セドゥ
勝手に評点:
(オススメ!)
コンテンツ
あらすじ
香料が産出される惑星アラキスを制する者は全宇宙を制する。そこを統治していたアトレイデス家はハルコンネン家の陰謀により一夜で滅ぼされた。
アトレイデス家の後継者ポール(ティモシー・シャラメ)は、母ジェシカ(レベッカ・ファーガソン)や砂漠の民フレメンの部族長スティルガー(ハビエル・バルデム)らと反撃の狼煙を上げる。
フレメンのチャニ(ゼンデイヤ)と心を通わせながら、いつしか救世主として民を率いていくポール。
そこに、宿敵ハルコンネン家の次期男爵フェイド=ラウサ(オースティン・バトラー)がデューンの新たな支配者として送り込まれてくる。
レビュー(まずはネタバレなし)
予習復習なしではつらい
前作『DUNE/デューン砂の惑星』から2年半ぶりの続編。カタカナだけの邦題になっていた。
あまりに無学のまま臨んだ前作は、その後にフランク・ハーバートの原作を読みこんで再挑戦し、ようやく面白味と奥深さがわかってきた。
そこから待ち望んだ本作。いよいよ前作で一族を滅亡に追い込まれたアトレイデス家の後継者ポール(ティモシー・シャラメ)が、砂漠の民とともに復興し、宿敵ハルコンネン家を迎え撃つ。映画的な盛り上がりは前作以上といえる。
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の原作愛が強いこともあり、本作は前作以上に予備知識なしでは手強い作品になっている。「香料を支配するものは、全世界を支配する」だったか、冒頭の前口上からして、一見さんには意味不明だろう。
更には前作で起きた陰謀劇と一族の滅亡、そしてわずかに生き延びたアトレイデス家の一族郎党が誰でどうなっていたかなど、何の説明もなく周知の事実として物語が進行する。
記憶が曖昧な方は、原作や前作をおさらいする気力がなければ、せめてキャラクターの復習をしておくと精神衛生上もよいと思う。
ざっくり抑えるべき基礎知識
惑星アラキスは抗老化作用を持つ香料の唯一の生産地。新たにそこを統治することになったアトレイデス家を、採掘権を手離したくないハルコンネン男爵(ステラン・スカルスガルド)が皇帝シャッダム4世(クリストファー・ウォーケン)と結託し滅亡させる。
当主である父・レト公爵は殺され、息子のポール(ティモシー・シャラメ)は母ジェシカ(レベッカ・ファーガソン)とともに、アラキスの砂漠の民フレメンに匿われながら反撃に出る。
フレメンの部族長にはスティルガー(ハビエル・バルデム)。はじめはよそ者と敵対視していたポールを伝説の救世主ではないのかと信じ始める。同じく、ポールの理解者となり、本作では恋人となるチャニ(ゼンデイヤ)。
ポールの母ジェシカは他人の心を操る特殊能力の女性集団ベネ・ゲセリットの一員。腹には娘アリアを宿す。ベネ・ゲセリットの教母ガイウス・ヘレン・モヒアムには怖そうなシャーロット・ランプリング。
宿敵ハルコンネン家の当主ウラディミール(ステラン・スカルスガルド)は湯舟に漬かっている肥満男。
甥っ子のグロッス・ラッバーン(デイヴ・バウティスタ)は前作で大暴れしたが、今回は精彩を欠き、残虐な後継者のフェイド=ラウサ(オースティン・バトラー)が新たに登場。
◇
そして中盤から登場するのが、消息を絶っていたアトレイデス家の武術指南役ガーニィ(ジョシュ・ブローリン)。ポールとは感動の再会を果たす。
前作からのキャスト
砂の惑星の地中に生息するサンドウォームが強大で、こいつを飼い慣らすことがこの星でのライフハック。こちらが本家ではあるが、まるで『風の谷のナウシカ』の王蟲のような存在。
砂をバスンバスンと叩いてこのウォームを誘き出し、両手の鎌のような道具を手綱のように使い乗り回す砂漠の民フレメンの姿が、ナウシカのキャラクターを彷彿とさせる。
ポールの行動や容貌が伝説の救世主の姿と同じだという流れもまた、ナウシカ的ではないか。
◇
運命に目覚めていくポール役のティモシー・シャラメが前作より精悍さを増す。ずっと鼻の下にチューブ差し込んだままなのに、カッコいいのはさすが。
”I am Paul Atreides, Duke of Arrakis!”(私はポール・アラキス。この惑星を救う者だ!)。”My name is Willy Wonka!“のシャラメもいいが、やっぱこっちのが痺れる。
◇
恋人のチャニ役のゼンデイヤも、『スパイダーマン』の彼女役より全然ハマっている。怖い顔でにらみつける表情がちょっとイモトっぽい。
砂の上で砂虫を攪乱するステップを踏んで舞うように歩くポールとチャニは、まるで『ジンジャーとフレッド』だ。
そういえば、デヴィッド・リンチ版『デューン 砂の惑星』ではチャニ役はショーン・ヤングだった。ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督は『ブレードランナー2049』で彼女をアーカイブ映像で出演させているし、どこか奇縁を感じる。
◇
フレメンを率いるスティルガー(ハビエル・バルデム)と、アトレイデス家の武術指南役ガーニィ(ジョシュ・ブローリン)は頼もしい味方陣営。
ジョシュ・ブローリンとドゥニ・ヴィルヌーヴ監督とくれば『ボーダーライン』を思い出す。両作品に共通する重低音バリバリの音楽は、本作では亡きヨハン・ヨハンソンに代わりハンス・ジマー。
新たなるキャラクター
新メンバーとしてはまず冒頭に登場の皇帝シャッダム4世(クリストファー・ウォーケン)とその娘で伝記の執筆者でもあるイルーラン(フローレンス・ピュー)。
二代目ブラックウィドウのフローレンス・ピューの投入に、またマーベル濃度が高まったかと思えば、ベネ・ゲセリットのレディ・フェンリングにはレア・セドゥが参入。
ポールの母ジェシカ役のレベッカ・ファーガソンとともに、『ミッションインポッシブル』濃度もあがってきた。
◇
そして新メンバーで最大の驚きは、ハルコンネン男爵の若き甥、残虐なフェイド=ラウサ。スキンヘッドと特殊メイクのせいで分からなかったが、オースティン・バトラーだったとは。
『エルヴィス』の女性ファン悩殺プレスリーとのギャップに萌える。ちなみにこの役、デヴィッド・リンチ版ではスティングが演じていた。
デヴィッド・リンチが一作では描き切れなかった世界を、ここまでたっぷりの製作費と時間をかけてカタチにしたヴィルヌーヴ。
圧倒的なスケール感と迫力の戦闘シーン、そして巨大なイソギンチャクのような砂虫の存在感。ハンス・ジマーの音圧に負けていない映像。
破壊力のラッバーンから狂気のフェイド=ラウサへの選手交代。そしてポールとの運命を賭けた一騎打ちの決闘。
相変わらず、一番おっかなそうなキャラはシャーロット・ランプリング演じる超能力の教母だったけど。
レビュー(ここからネタバレ)
ここからネタバレしている部分がありますので、未見の方はご留意ください。
ジェシカは女性だけの組織ベネ・ゲセリットの一員だったが、教母に背いて男子を産んだ。それがポールだ。ジェシカは「命の水」を飲み自ら解毒してフレメンの教母となる。
そして本来は男が飲めば死んでしまうはずの「命の水」をポールにも飲ませる。ベネ・ゲセリットの教えを受け、チャニの涙により解毒に成功したポールは、救世主リサーン・アル=ガイブとしての運命を受け入れる。
過去が読めるようになったポールは、母ジェシカが宿敵ハルコンネン男爵の娘であったことを知る。ポールは親族であるフェイド=ラウサと決闘し、自分以外のハルコンネンの血を絶やす。
そして、勝利により皇帝を自分に跪かせ、その娘イルーランを娶り、新たな皇帝の座に着こうとする。
ガーニィの活躍で入手した核爆弾を攻撃に使うのではなく、貯蔵する香料をそれで破壊すると脅かすところは奇策ではあるが、核兵器を脅迫の材料に使う交渉術には複雑な思いが否めない。
そしてラストは、愛するポールの政略結婚にショックを受けたチャニが独りで砂虫に乗る悲しいシーン。この終わり方は明らかに次がある。二作目がこの完成度なら、ゴーサインが出るだろう。
ポールが見る未来にいるのはジェシカが生んだ、ポールの妹アリア。演じるのはアニャ・テイラー=ジョイ、もうすぐ公開のジョージ・ミラーの新作『マッドマックス:フュリオサ』の堂々の主役だ。きっと続編では活躍するだろう。
次に来るのは『デューン 砂漠の救世主』。今のうちに原作読んで予習しとこ。