『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』
Scott Pilgrim vs. the World
エドガー・ライト監督がハリウッド進出で描くゲーム感覚のアクションコメディ
公開:2010 年 時間:112分
製作国:アメリカ
スタッフ 監督: エドガー・ライト 原作: ブライアン・リー・オマリー キャスト スコット・ピルグリム: マイケル・セラ ラモーナ・フラワーズ: メアリー・エリザベス・ウィンステッド ウォレス・ウェルズ:キーラン・カルキン ステイシー: アナ・ケンドリック ナイブス・チャウ: エレン・ウォン エンヴィー・アダムズ:ブリー・ラーソン キム・パイン: アリソン・ピル スティーヴン: マーク・ウェバー ニール: ジョニー・シモンズ <7人の邪悪な元カレ軍団> マシュー・パテル: サティヤ・バーバー ルーカス・リー: クリス・エヴァンス トッド・イングラム:ブランドン・ラウス ロキシー・リヒター:メイ・ホイットマン カタヤナギ・ツインズ: 斉藤慶太、祥太 ギデオン: ジェイソン・シュワルツマン
勝手に評点:
(一見の価値はあり)
コンテンツ
あらすじ
カナダに住む売れないバンドのベーシスト、スコット・ピルグリム(マイケル・セラ)は、ある日不思議な女性ラモーナ(メアリー・エリザベス・ウィンステッド)に出会い、すぐさま恋に落ちる。
だが、ラモーナと付き合うためには、彼女の邪悪な元カレ7人と決闘をして、すべてを倒さなければならなかった……。
今更レビュー(ネタバレあり)
エドガー・ライト監督の描く任天堂世界
エドガー・ライト監督が『ショーン・オブ・ザ・デッド』、『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』、『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』のコルネット三部作の途中で仕上げた、ハリウッド初進出作品。
任天堂ゲームやオタクワールドに思いっきり特化した作品の原作はブライアン・リー・オマリーによるコミック。
マイケル・セラ演じるヘタレバンド青年のスコット・ピルグリムが運命の女性ラモーナに出会うが、恋愛成就には元カレ7人を倒さないといけない宿命を背負う。訳がわからない強引なストーリー展開が頼もしい。
冒頭のユニバーサルピクチャーズのお馴染みのロゴと音楽が、粗いピクセル画とコンピュータ音楽に差し替えられているところから、遊び心満載。
こういうノリは、ドラマ『勇者ヨシヒコ』シリーズ(2011)や『WE ARE LITTLE ZOMBIES』(2019)などといった作品に共通するものだろうか。
舞台はトロント。ロックバンドを組んでいる22歳のスコットが、新しいカノジョ、中国人の女子高生ナイブス・チャウ(エレン・ウォン)を仲間に紹介する。
ゲーム好きでロック好きのナイブスはバンド仲間とも親しくなっていくが、肝心のスコットは、パーティで出会った赤毛のワイルドな女性ラモーナ(メアリー・エリザベス・ウィンステッド)に一目ぼれ。
彼女がバイトしているamazon.ca(カナダです、はい)に注文すると、当の本人が配達に現れるご都合主義。そんなことから、二人はすぐに親しくなり、そして早くも最初の刺客がスコットの前に現れる。
それまではよくあるバンド仲間の青春映画だったが、ここから急遽アクション映画に様変わりする。
スコットの元カノ軍団
ラモーナの元カレは7名。スコットがひとり倒すたびにコインが獲得でき、絶叫するセリフが吹き出しのように描かれる。最近でいえばスピルバーグの『レディ・プレイヤー1』っぽい感じ。
スコットにはゲイのルームメイト、ウォレス(キーラン・カルキン)がいて、スコットの日常はすぐに彼の妹のステイシー(アナ・ケンドリック)に通報される。
可愛い彼女のナイブスがいるのに、ラモーナと二股かけるとはけしからんと周囲に責められ、ナイブスに別れを切り出すスコット。
ちなみにラモーナに負けず、スコットにもバンドのドラマー、キム(アリソン・ピル)や売れっ子ミュージシャンのエンヴィー(ブリー・ラーソン)など、女性遍歴は豊富。
主人公スコットには『JUNO』のマイケル・セラ、最近は『バービー』に出演。妹ステイシーには『ピッチ・パーフェクト』のアナ・ケンドリック。ウォレス役のキーランはご存知カルキン兄弟のひとり。
ラモーナ役のメアリー・エリザベス・ウィンステッドは異色作『スイス・アーミー・マン』のヒロイン。『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』ではクロスボウ・キラーを演じていた。
週替わりで髪の色が赤⇒青⇒緑と変化するラモーナが、『エターナルサンシャイン』のケイト・ウィンスレットを思い出させる。顔立ちも似てるか、或いは菊地凛子っぽい気もする。
ラモーナの元カレ軍団
さて、一方そのラモーナがリストアップした7人の邪悪な元カレ軍団。
一人目は高校時代の交際相手、インド人のマシュー・パテル(サティヤ・バーバー)。出会いの経緯はコミック形式で紹介される。インド音楽に合わせて舞いながら攻撃する『踊るマハラジャ』戦法。戦うミュージカルだ。このバカらしさには笑う。
◇
続くはウォレスも夢中になっているアクション俳優のルーカス・リー。よく見れば、演じるのはクリス・エヴァンスではないか。この頃はワイルド路線だったっけ。
キャプテン・アメリカにあるまじき卑怯な戦いっぷり。しかも最期はスケボーで調子に乗って技を披露して自滅。
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三人目はスコットの元カノ・エンヴィー(ブリー・ラーソン)の現在の恋人・トッド(ブランドン・ラウス)。こいつが厳格な菜食主義者なのを逆手にとって禁断の食生活を取らせ、ヴィーガン・ポリスに逮捕させるというナンセンスな攻撃。
ブリー・ラーソンが後にキャプテン・マーベルになるなんて、想像し得なかった。本作にキャプテンが二人いるとは。
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四人目は何と元カレではなく元カノのロキシー・リヒター(メイ・ホイットマン)。ラモーナは一時、同性愛者でもあったのだ。
そしてお待ちかね、次はカタヤナギ・ツインズの斉藤慶太・斉藤祥太。双子といえば、女優はマナカナ、男優はこのふたり。ザ・たっちじゃないよ。そもそもあだち充の『タッチ』も斉藤慶太・斉藤祥太だったし。
ツインズ役誰よりもカッコよかったのに、バトル自体がコングと双龍のアバター対決になってしまったのが残念。これじゃ印象が薄い。
トリの七人目はラモーナが今も愛してるっぽいギデオン(ジェイソン・シュワルツマン)。そこに別れを告げたはずのナイブスも協力。
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スコットはギデオンに敗れるも、貯まっていたポインで復活して逆転勝利。最後は大団円というおめでたい映画なのであるが、そこがエドガー・ライト監督っぽいところ。エンドクレジットまでゲームっぽさにこだわり。
ちなみに、NETFLIXが本作のキャストを声優に起用したアニメ『スコット・ピルグリム テイクス・オフ』を2023年11月に配信。またブームがくるか。