『TITANE チタン』考察とネタバレ|あの必殺仕事人の武器のような鋭いヘアピンもチタン製なのか

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『TITANE/チタン』 
Titane

オシャレなポスタービジュアルに騙されてはいけない。エグいシーンがたっぷりのボディホラー。

公開:2022 年  時間:108分  
製作国:フランス

スタッフ  
監督・脚本:  ジュリア・デュクルノー  

キャスト 
ヴァンサン:   ヴァンサン・ランドン 
アレクシア/アドリアン: アガト・ルセル 
ジュスティーヌ: ギャランス・マリリエ 
ライアン:    ライス・サラーマ 
マカレナの女性: ドミニク・フロ 
アドリアンの母: ミリエム・アケディウ 
アレクシアの父: ベルトラン・ボネロ

勝手に評点:2.5
(悪くはないけど)

(C)KAZAK PRODUCTIONS – FRAKAS PRODUCTIONS – ARTE FRANCE CINEMA – VOO 2020

あらすじ

幼少時に交通事故に遭い、頭蓋骨にチタンプレートを埋め込まれたアレクシア(アガト・ルセル)。それ以来、彼女は車に対して異常なほどの執着心を抱き、危険な衝動に駆られるようになってしまう。

自身の犯した罪により行き場を失ったアレクシアは、消防士ヴァンサン(ヴァンサン・ランドン)と出会う。ヴァンサンは10年前に息子が行方不明となり、現在はひとり孤独に暮らしていた。

二人は奇妙な共同生活を始めるが、アレクシアの体には重大な秘密があった。

レビュー(まずはネタバレなし)

オシャレすぎてボディホラーと気づかず

ボディホラーといわれるジャンルにあたるのだろうか。身体が極度に変容しちゃう気色悪いヤツだ。

本作はそのオシャレなポスタービジュアル女性監督であることにすっかり騙されてしまい、どぎつい内容に驚かされることになる。このギャップの大きさは、近年だと『ミッドサマー』(アリ・アスター監督)に匹敵するか。

監督はジュリア・デュクルノー。長編監督二作目にして、本作でカンヌのパルムドールに輝く。女性監督が同賞を獲得するのは『ピアノ・レッスン』(1993)のジェーン・カンピオン以来二人目だ。まだまだ男性偏重の世界なのである。

(C)KAZAK PRODUCTIONS – FRAKAS PRODUCTIONS – ARTE FRANCE CINEMA – VOO 2020

映画は冒頭、クルマの後部座席で悪ふざけをする子供。それを叱っている父親(ベルトラン・ボネロ)の脇見運転でクルマが事故を起こす。『X-MEN:ダーク・フェニックス』のジーン・グレイが少女時代に両親を亡くした惨事のような導入部。

だがこちらで重傷を負うのは子供の方だ。頭蓋骨固定のために、チタンを埋め込まれる。その語源である神話的な意味合いも含んでいるのかもしれないが、この金属プレートがタイトルに繋がる。

(C)KAZAK PRODUCTIONS – FRAKAS PRODUCTIONS – ARTE FRANCE CINEMA – VOO 2020

クルマ好きのオンナ

そして時が流れ、成人したアレクシア(アガト・ルセル)はモーターショーでショーガールをやっている。そうか、あの子供は女の子だったか。

マッスルカーのボンネットで大胆に腰を振り悩殺ポーズを決めるアレクシア。頭の中のチタンのせいか知らないが、彼女は子供の頃からクルマを偏愛している。いや、ただのカーマニアという意味ではない。クルマを異性としてみているのだ。

自分にアプローチしてきたクルマに気づくとアレクシアは、全裸になって車内に乗り込み、クルマと激しい性行為に及ぶ。これがホントのカーセックスだな、とか、いいたくなる。

(C)KAZAK PRODUCTIONS – FRAKAS PRODUCTIONS – ARTE FRANCE CINEMA – VOO 2020

この段階で、早くもぶっ飛んだ内容に驚かされる。パルムドールって、ここまでとんがった前衛作品もありなんだ。

『万引き家族』(2018、是枝裕和監督)、『パラサイト 半地下の家族』(2019、ポン・ジュノ監督)とアジア勢が続いたあとコロナ禍で一年空白があり、だいぶ毛色の違う作品が選ばれるようになったものだ。

クルマの擬人化や性愛というと、思い出されるのはスティーヴン・キング原作+ジョン・カーペンター監督の『クリスティーン』(1983)、或いはデヴィッド・クローネンバーグ監督の『クラッシュ』(1996)あたり。本作も随所にその影響を感じ取れる。

エグイっす、ボディーホラー

だが、クルマとのからみは途中からしばらく影を潜め、アレクシアのシリアルキラーぶりが前面に出る。

はじめは、彼女に言い寄ってきたストーカー気味のファンを衝動的に殺してしまっただけに見えたが、すぐに殺人欲求は抑えられなくなり、次々と犯罪を繰り返すようになる。

その殺し方ひとつとっても、銃殺のようなあっさりしたものはなく、どれもエグイ内容ばかりだ。

こういうジャンルは男性社会と思い込んでいたが、ジュリア・デュクルノー監督は、これでもかとばかり畳み掛けてくる。両親が皮膚科医と婦人科医だったことから、子供の頃から肉に魅せられたからだと語っている。そういうものなのか。

殺人を繰り返す一方で、アレクシアは自身の妊娠に気づくそれって、クルマと交わって子供ができたってこと? そして彼女の身体からは、オイルのような黒ずんだ液体が垂れてくる。

まあ、観ていて気持ちよい作品ではない。ボディホラー上等!と喜ぶ一部のマニアにはたまらない作品なのだと思うが、うかつに人には薦められない。

不快感たっぷりの映像に、いろいろと深読みできそうなネタがふんだんに。おまけに公式サイトには(ちっともスッキリしない)謎解きコーナーまで存在。これじゃまるで、ロバート・パティンソンウィレム・デフォー共演の『ライトハウス』(2021、ロバート・エガース監督)の再来だ。

TITANE Trailer | TIFF 2021

本作は、カンヌで批評家連盟賞を受賞したジュリア・デュクルノー監督のデビュー作『RAW 少女のめざめ』(2016)とも関連性が多いようだ。生肉を食べたことで、覚醒していくベジタリアンの少女のアブノーマルな青春。おお、生肉だからRAWなのか。順番は前後してしまうが、未見なのでぜひ同作もおさえておきたくなった。

レビュー(ここからネタバレ)

ここからネタバレしている部分があるので、未見の方はご留意願います。

その同居生活には無理がある

さて、クルマとの子供を宿したシリアルキラーの女、アレクシアは、ついには自分の父親まで焼死させて逃亡する。彼女はもう指名手配されている。

(C)KAZAK PRODUCTIONS – FRAKAS PRODUCTIONS – ARTE FRANCE CINEMA – VOO 2020

それまでに、テレビのニュースで子供たちの失踪事件を取り上げており、どういう関連があるのかと思っていると、なんと彼女は自分の顔をぶん殴り、失踪した少年アドリアン(今は成人になっている)を名乗って出頭するのだ。

こうして彼女は、男として、アドリアンの父親、消防署長のヴァンサン(ヴァンサン・ランドン)のもとで暮らし始める。いや、凄い話になってきた。

子供が戻ってきたと喜ぶヴァンサンの前で、病気かトラウマのせいで言葉が話せないフリをして過ごすのはよいとして、どれだけ顔付きが凛々しいといっても、男を装うのには無理がある

手塚先生の「リボンの騎士」なら、さらしを巻いて胸をおさえて男になりすませるかもしれないが、アレクシアは胸が大きいだけでなく、腹のせり出してきている妊婦なのだ。さらしでごまかせるレベルではない。

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薄々怪しんではいるのだろうが、息子が帰ってきたと思いたいヴァンサンは、自分の職場にアドリアンを迎え入れ、共同生活を始める。ここからは、やがて嘘がばれることが確実な中で、疑似父子として暮らす二人の人間ドラマだ。

ステロイド注射で若さを保とうとあがいている父親がもの悲しい。彼女が連続殺人犯だということさえ、忘れそうになるが、腹は日に日に大きくなり、出産日が近づいてくる。そして体内からはオイルが流れ落ちる。

(C)KAZAK PRODUCTIONS – FRAKAS PRODUCTIONS – ARTE FRANCE CINEMA – VOO 2020

そして出産予定日が近づく

かつては次々と人を殺め、父親さえあっさり燃やしたアレクシアが、アドリアンになりすますようになると、なぜかヴァンサンと心が通じ合うようになる。

本作はヒューマンドラマとして作られているのか定かではないが、この疑似父子の心の機微は、いまひとつ分からない。彼女の正体を見抜きながら、引き続きヴァンサンの世話を頼むアドリアンの母親の方が、余程分かりやすい。

そして最後は出産。腹のすき間からチタンプレートが見え隠れする。まさか小型車を産み落とすのではあるまい。

ホラー映画の出産といえば『ローズマリーの赤ちゃん』(ロマン・ポランスキー監督)だろうが、赤ん坊の作り込みは『アネット』(レオス・カラックス監督)の雰囲気に近い。

Titane. Tráiler oficial.

ヴァンサンは消防署の部下たちに「ここでは私が神なのだから、息子はキリストだぞ」というが、そのアドリアンが処女受胎して子供を産むのだ。

映画のラストでは、アレクシアは死ぬが、子供は無事に生まれる。「俺がついているぞ」と、新たな生き甲斐をみつけるヴァンサン。

頭にチタンプレートを入れただけで、こんな奇想天外なことになってしまうのか。私も頭ではないが、実は過去に手術で体内にチタンを入れている。今のところ、クルマに欲情したことはない。