『キャリー』(1976年/2013年版)考察とネタバレ!あらすじ・評価・感想・解説・レビュー | シネフィリー

『キャリー』新旧比較レビュー|クロエ・グレース・モレッツじゃないんだな

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スティーヴン・キングのデビュー作にしてデ・パルマの出世作、青春ホラーの金字塔をリメイク版と比較レビュー。

『キャリー』(1976年版)
 Carrie

公開:1976年  時間:98分  
製作国:アメリカ

スタッフ 
監督:      ブライアン・デ・パルマ
原作:       スティーヴン・キング
              『キャリー』
キャスト
キャリー・ホワイト: シシー・スペイセク
マーガレット・ホワイト:
           パイパー・ローリー
クリス・ハーゲンセン: ナンシー・アレン
スー・スネル:  エイミー・アーヴィング
コリンズ先生:    ベティ・バックリー
トミー・ロス:    ウィリアム・カット
ビリー・ノーラン:  ジョン・トラボルタ

勝手に評点:3.5
(一見の価値はあり)

『キャリー』(2013年版)
Carrie

公開:2013年  時間:99分  
製作国:アメリカ

スタッフ 
監督:       キンバリー・ピアース
原作:       スティーヴン・キング
キャスト
キャリー・ホワイト:
       クロエ・グレース・モレッツ
マーガレット・ホワイト:
           ジュリアン・ムーア
クリス・ハーゲンセン:
          ポーシャ・ダブルデイ
スー・スネル:   ガブリエラ・ワイルド
リタ・デジャルダン先生:ジュディ・グリア
トミー・ロス:   アンセル・エルゴート
ビリー・ノーラン: アレックス・ラッセル

勝手に評点:2.5
(悪くはないけど)

あらすじ

狂信的な母親のもとで育てられ、学校でも日常的にいじめを受けている少女キャリーは初潮を迎えて動揺するが、生理現象は汚れの象徴だと母親に罵られる。

しかし、その日を境にキャリーは念じることで物を動かせる超能力に目覚めていく。

一方、いじめっ子たちは陰惨な嫌がらせを思いつき、高校最後のプロムパーティの場でキャリーを陥れるが、怒りを爆発させたキャリーの超能力が惨劇を招く。

新旧比較レビュー(ネタバレあり)

原作はモダン・ホラーの巨匠スティーヴン・キングのデビュー作。彼が投げ出してゴミ箱に捨てた初稿3ページを夫人が拾って読み、面白いから最後まで書きなさいと励まして完成したという逸話が残る。

映画化したのはブライアン・デ・パルマ監督。『悪魔のシスター』『ファントム・オブ・パラダイス』といったカルトムービーは撮っていたが、彼の名を一躍有名にしたのは、この『キャリー』の大ヒットによるところが大きい。

狂信的なシングルマザーの家庭に育ち、スクールカーストの最下層にいる少女・キャリー。悲劇のプロムナイトを描いた青春ホラーの金字塔映画。

本作はブライアン・デ・パルマ監督による初映画化のヒットを受けて、1999年に続編『キャリー2』(カット・シーア監督)が公開され、2002年にはTV映画も撮られた。

そして2013年には、第一作のリメイク版となる『キャリー』が公開される。監督は『ボーイズ・ドント・クライ』キンバリー・ピアース。いじめ映画に定評があるということかな。

本作はネタバレなしには語れないような、シンプルなストーリーだ。

変わり者で学校でも日常的にいじめを受けている少女キャリーは、校内のシャワー室で初潮を迎え、大騒ぎする。彼女は生理を知らなかったのだ。怖がる彼女に級友たちはナプキンを投げつけてからかう。

キャリーは狂信的な母親と二人暮らしだが、その母に、女になったことを責められ、汚れてしまったと折檻される。キャリーはこの異様な家庭環境の中で、突然の怒りによる念動力を覚醒させていく。

一方、初潮を知らずいじめを受けたキャリーを助けた女教師は、関わった女生徒たちに体育補講の罰を与え、それを無視する主導者の女生徒クリスは、プロムの参加資格を剥奪される。

いじめを反省した女生徒スーは、ボーイフレンドのトミーに、自分のかわりにキャリーをプロムに誘うように仕向ける。

キャリーは人気者の男子に誘われパーティに参加することとなり、出禁となって逆恨みするクリスは恋人のビリーとともに、豚の血の入ったバケツを天井に仕込み、キャリーに復讐を企てる。

こうして、悪夢のプロムパーティが始まるという話だ。(オリジナル版の時代では、まだ日本ではプロムなる言葉が浸透しておらず、字幕はパーティとなっている)

さて、この名作をなぜリメイクしようとしたのか不思議に思うが、案の定、リメイク版にはどこにもオリジナルに比肩できる部分がない。

あえて見るべき点を探せば、リメイク版の主演のクロエ・グレース・モレッツが可愛いことくらいだが、これすら、映画においてはマイナスポイントである。

なぜならば、キャリーはシシー・スペイセクが演じているからこそ、心に訴える作品になり得ているのだ。

生理も知らないような、どんくさい、いじめられ系な少女が、着飾ってメイクして見違える美しさでプロムに参加するギャップが萌えるのである。

この役にクロエ・グレース・モレッツでは、素の状態からあか抜けててカースト最下層に見えやしないし、着飾ることによる変化が少ない。これではキャリ―には見えない。

リメイク版では、恐ろしい母親役をジュリアン・ムーアが演じている。

こちらは彼女の演技力から相応の期待があったのだが、蓋を開けてみると、オリジナル版パイパー・ローリーの方が得体の知れない不気味さは上だった。ジュリアン・ムーアも怖くはあるが、どこか演技に過剰感が漂う。

女生徒の役は、キャリーをいじめる主犯のクリスと反省するスーをオリジナル版ではナンシー・アレンエイミー・アーヴィングリメイク版ではポーシャ・ダブルデイガブリエラ・ワイルドがそれぞれ演じている。

オリジナル版の両女優は本作以降もブライアン・デ・パルマ監督が重用しており、本作でも存在感あり。リメイク版の二人も健闘はするが、やはり本家越えは難しい。

男子生徒に関しては、キャリーをプロムに誘うイケメンのトミー役に、オリジナル版ウィリアム・カットリメイク版アンセル・エルゴートの配役。

輝かしい旧作のリメイク出演という点では、スピルバーグ『ウェスト・サイド・ストーリー』でも主演を張るアンセル・エルゴート

本作でも好青年は悪くなかったが、ここは『ビッグ・ウェンズデー』『新・明日に向って撃て!』ウィリアム・カットを買ってしまうのは世代のせいか。

また、クリスの恋人ビリー役には、オリジナル版ジョン・トラボルタリメイク版アレックス・ラッセル。これも、『サタデー・ナイト・フィーバー』のブレイク前夜のトラボルタ出演ということで、前者に軍配をあげたい。

さて、キャスティングに勝ち目のないリメイク版だが、演出・脚本面はどうか。驚いたのは、時代の流れなのだろうが、リメイク版は演出面ではきわどさや怪しさが薄れ、また内容が実に分かり易く、説明的になっている。

例えば序盤のシャワー室シーン。オリジナル版ではミスト充満で見えにくい室内を全裸の女生徒が闊歩し、シシー・スペイセクが念入りに体を洗っていると、股間から鮮血。驚いて助けを求める彼女に明確な台詞はなく、表情で語る。

一方のリメイク版。無駄なムードは排除され、クロエ・グレース・モレッツのシャワーシーンも淡泊。「血が!死ぬわ!」と分かり易く叫ぶ台詞が興ざめだ。

説明的という意味では、スーが反省していい子になる点も明快だし、終盤、助手席のクリスが運転するビリーに「キャリーを轢き殺して!」と口に出しちゃうところもなあ。何でも台詞にしてしまう時代なのだ。

そして、こんなジャンルの映画でもコンプラ重視の世の中、オリジナルにあった、校長先生の机の上の灰皿(キャリーが念力で動かす)はウォーターサーバーになり、ビリーの飲酒運転シーンも消え失せた。

いよいよクライマックスのプロム。晴れてキング&クイーンに選ばれたキャリーがバケツの豚の血を浴びて、ついに怒り心頭に発し悪魔と化すシーン。

ここはさすがに映像技術の進歩でリメイク版に分があるかと思いきや、ここでもオリジナル版は強かった。まず、ステージの頭上高く固定されたバケツのショットが、構図的に決まっている。

リメイク版はバケツの見せ方も弱く、また血を浴びるキャリーの姿を三回もリピートして見せるという手法が、まるで陳腐なバラエティ番組のようで残念至極。

そして、念動力が抑えきれくなる姿も、オリジナル版の画面分割の斬新さや火の海地獄のような迫力には乏しい。そもそもCGの画面処理に我々の目が慣れ過ぎてしまったせいかもしれないが、物足りない感じは拭えず。

原作ではもっと大勢のひとたちが焼死してしまうのだが、さすがに映画ではスケールダウンしている。

また、原作はスティーヴン・キングのデビュー作だけあって創作性に富み、いろいろな関係者の証言や事件掲載記事等を寄せ集めたような構成で物語を綴っていく形式をとっているのだが、映画には反映されていない。

ただし、原作にある本質的な怖さはしっかり踏襲されているようだ。キューブリック監督の傑作『シャイニング』を「原作の理解不足」と酷評するキングも、本作オリジナル版には好意的な反応だという。

では、ジュリアン・ムーア演じる母親の出産シーンから始まり、スーの妊娠で締めくくるリメイク版キングはどう見たのかは、気になるところではある。

リメイクの本家越えがいかに難しいかを、再認識する結果となった。