『るろうに剣心』『京都大火編』『伝説の最期編』考察とネタバレ!あらすじ・評価・感想・解説・レビュー | ページ 3 | シネフィリー

『るろうに剣心/ 京都大火編/ 伝説の最期編』劇場版一気通貫レビュー

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01『るろうに剣心』
02『るろうに剣心 京都大火編』
03『るろうに剣心 伝説の最期編』

04『るろうに剣心 最終章 The Final』
05『るろうに剣心 最終章 The Beginning』

『るろうに剣心 伝説の最期編』

公開:2014 年  時間:135分  
製作国:日本

スタッフ 
監督: 大友啓史
原作: 和月伸宏
『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』

キャスト
緋村剣心:  佐藤健
神谷薫:   武井咲
高荷恵:   蒼井優
相楽左之助: 青木崇高
斎藤一:   江口洋介
志々雄真実: 藤原竜也
四乃森蒼紫: 伊勢谷友介
瀬田宗次郎: 神木隆之介
佐渡島方治: 滝藤賢一
悠久山安慈: 丸山智己
駒形由美:  高橋メアリージュン
巻町操:   土屋太鳳
柏崎念至:  田中泯
明神弥彦:  大八木凱斗
伊藤博文:  小澤征悦
川路利良:  小市慢太郎
高野:    眞島秀和
比古清十郎: 福山雅治

勝手に評点:3.5
(一見の価値はあり)

(C)和月伸宏/集英社
(C)2014「るろうに剣心 京都大火/伝説の最期」製作委員会

あらすじ

日本征服を狙う志々雄を阻止するため京都に辿り着いた剣心は、志々雄一派に立ち向かうが、志々雄は甲鉄艦・煉獄で東京へ攻め入ろうとしていた。

志々雄に連れ去られた薫を助けるために剣心は海に飛び込み、一人岸へ打ち上げられたところを、偶然師匠の比古清十郎に助けられる。

今の自分では志々雄を倒せないと悟った剣心は師匠に奥義の伝授を懇願する。

一気通貫レビュー(ネタバレあり)

カンフー映画なら師匠は飲んだくれ老人

『京都大火編』で思い切り未回収のストーリーを本作で一機に完結させる。公開時期も近いことから、実質的には4時間半の壮大な剣術アクションを観終わった感覚に近い。

前作のラストワンシーンで、すっかりおいしいところを持っていった福山雅治の正体は、なんと少年の頃の剣心に目をかけ、飛天御剣流を教えた父親同然の師匠・比古清十郎

志々雄に勝つために奥義を伝授してほしいとせがむ剣心を、スパルタ式に鍛え上げる流れは、この手の武術アクションにはお約束。

佐藤健にとって事務所の大先輩でもあり、また大友啓史監督にとっては『龍馬伝』ヒットの立役者である福山雅治ゆえ、本作でも主役を食いそうな目立ち方だが、映画としてはバランスが悪い。

奥義を教えて前半でサヨナラよりは、敵陣に回ってくれた方が盛り上がった気もする。

ひとり浮いていたぞ四乃森蒼紫

もっとも、福山抜きの中盤以降も、けして物足りなさはない充実ぶりであり、剣術アクションに関しては過去二作に遜色のない出来栄えで、感心するしかない

時には、力と力のぶつかりあい、時には大勢の警察隊を相手にひたすら攻撃を神業的にかわすのみ、更にはブレイクダンスさながらの回転技を披露したりと、剣心の戦いは観る者を魅了し、けして飽きさせない。

本作はきちんと面白味を持続させながら前作を完結させる点では前作よりも評価できるが、気になった点もある。

剣心や斎藤は勿論のこと、新政府への復讐を掲げる志々雄や、そこに集う者たち、或いは隠密御庭番衆はみな、時代の変化の影響を受け、その中での立ち位置を認識している。

だが、四乃森蒼紫(伊勢谷友介)だけは、ひたすら明治維新の前から、<誰が最強か>ということにこだわり、仲間や師匠を討って<打倒抜刀斎>を目指すのである。

せっかく強いし見た目も冴えるキャラだというのに、どうにも原動力となるものが幼稚に思える。

こんな男に斬られた傷から、死に至る柏崎念至(田中泯)が不憫でならない。巻町操(土屋太鳳)も翁の仇と蒼紫に敵意を抱いたくせに、最後は親密な仲に戻ってしまうところが、中途半端で甘ったるい。

(C)和月伸宏/集英社
(C)2014「るろうに剣心 京都大火/伝説の最期」製作委員会

志々雄配下の面々

前作で魅せてくれた瀬田宗次郎(神木隆之介)とのリベンジ・マッチも、躍動感に溢れていたと思う。最後に脚を痛めて、得意の片足ケンケンから攻撃に入れず、劣勢になる宗次郎が哀愁を漂わせる。

その他、志々雄のもとに集まっていた佐渡島方治(滝藤賢一)の芝居過多は前作同様でまたもシラケた。機関銃で対戦するところも、一作目の香川照之の模倣にみえる。

戦う坊主の悠久山安慈(丸山智己)相楽左之助(青木崇高)と対戦。これは卑怯な戦法で左之助が勝つが、それがケンカ殺法なのだろう。

愛人の駒形由美(高橋メアリージュン)は、志々雄に刺され悲惨な死を遂げる。とまあ、このように敵陣は一人一人崩れ落ちていく。

志々雄、あなたはサノスだった

志々雄(藤原竜也)について改めて思ったのは、メチャクチャ強いということだ。さすが、映画の前編後編にわたってヴィランを務めるだけはある。

終盤の敵艦の中での戦いをみると唖然とする。本来なら剣心と志々雄がタイマン勝負で、最後は奥義を使って勝利するのが通常の剣術アクションの最終決戦だと思う。

だが本作では、剣心、相楽左之助、斎藤一、更には四乃森蒼紫までが助太刀し、四人対一人の戦いで志々雄を責めるのだ。

一人一人斬っては投げの志々雄は、しかし一向に衰えを見せず、むしろ主人公のオーラさえ感じる。これでは、まるでたった一人の敵・サノスに群がって戦うアベンジャーズだ。

しかも、志々雄が負けてしまうのは、政府が彼に負わせた大やけどが原因で発汗による体温調整ができず、限界時間の15分を超過して戦うことになったことに起因し、剣心の奥義をくらってしまう訳だ。この勝ちっぷりもフェアとはいえない。

そんなことから、冷静に振り返ると長い闘いの終わり方がこれでいいのかという釈然としない点はあるが、意外と鑑賞後に不満が残っていないのは、斎藤一の登場の仕方がキマッていたからかもしれない。

志々雄の策略で政府の斬首刑に処せられそうになる剣心を、土壇場で救い出し、反撃のきっかけを作るのが斎藤一。

江口洋介が最後の場面で毎回おいしいところを持っていくのが『るろうに剣心』で、いつも痛い目にあうのが『コンフィデンスマンJP』なのだな。