01『るろうに剣心』
02『るろうに剣心 京都大火編』
03『るろうに剣心 伝説の最期編』
04『るろうに剣心 最終章 The Final』
05『るろうに剣心 最終章 The Beginning』
『るろうに剣心 京都大火編』
公開:2014 年 時間:139分
製作国:日本
スタッフ 監督: 大友啓史 原作: 和月伸宏 『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』 キャスト 緋村剣心: 佐藤健 神谷薫: 武井咲 高荷恵: 蒼井優 相楽左之助: 青木崇高 斎藤一: 江口洋介 志々雄真実: 藤原竜也 四乃森蒼紫: 伊勢谷友介 瀬田宗次郎: 神木隆之介 巻町操: 土屋太鳳 柏崎念至: 田中泯 明神弥彦: 大八木凱斗 沢下条張: 三浦涼介 佐渡島方治: 滝藤賢一 悠久山安慈: 丸山智己 駒形由美: 高橋メアリージュン 川路利良: 小市慢太郎 高野: 眞島秀和
勝手に評点:
(一見の価値はあり)
あらすじ
かつては「人斬り抜刀斎」と恐れられた緋村剣心は、新時代の訪れとともに穏やかな生活を送っていた。
しかし、剣心の後継者として「影の人斬り役」を引き継いだ志々雄真実が、全身に大火傷を負わせた明治政府へ復讐を企てていると知った剣心は、逆刃刀を手にとり、単身で志々雄のいる京都へ向かう。
一気通貫レビュー(ネタバレあり)
次の作品と前編後編の構成
本編公開の翌月には『伝説の最期編』が公開され、しかもそれぞれが140分近い長篇ということで、スケールの大きさに驚いたのを思い出す。邦画でいえば『僕等がいた』や『ソロモンの偽証』みたいな前編後編パターンだ。
なので、本作単体でのレビューは難しい。物語としてはクライマックスが後編主体になっているからだ。「ここで終わるのかよ」的な幕切れではあるが、公開時でも1か月、今なら即配信で観られるわけだから、まあ仕方がない。
◇
前作で倒した相手を除けば、レギュラーメンバー勢ぞろいの展開、しかも二作目となれば余計な背景説明も不要であり、冒頭からお馴染みのキレの良い戦闘シーンが炸裂する。
今回の敵は、志々雄真実。人斬り抜刀斎の後継者として政府の影の仕事を請け負い、維新後も暗躍している。剣の腕前と明晰な頭脳は抜刀斎と互角のようだが、全身に大火傷を負わせた明治政府へ復讐心と慈悲のなさで、敵にまわせば恐ろしい男。
火傷のおかげで回想シーン以外は基本全身包帯のミイラ男なのだが、それでも眼光の凄みと声で藤原竜也だと判別できてしまうのがすごい。まあ、藤原竜也ファンには複雑な心境だろうけれど。
◇
剣心をからかって先輩と呼びながらも手下を使いあしらったり、大勢の影武者で翻弄したり、本作では直接対決に至らない。「何が<ござるよ>だ」と剣心を罵倒するところをみると、シシオも<ござるよ>言葉に忍者ハットリくんを感じ取って苛立ったのかもしれない。シシマルといえばハットリくんの飼い犬だし。
剣術アクションのすばらしさと新たな敵
前作に増して、佐藤健の剣心はカッコいい。ヒーローに必要な哀愁が漂っているのは仮面ライダーからの石ノ森章太郎の教えか。
相変わらずアクションは美しく、キレとスピード感が想像を上回り、私では動体視力が追い付かない。
逆刃剣で戦うので人は斬れない、従って大集団相手の戦いでも剣は鈍らにならない。1対大勢の立ち合いは前回同様、本シリーズのお約束。
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本作での大収穫は、志々雄の配下の若者・瀬田宗次郎(神木隆之介)というキャラクターの登場だと思う。
神木ならではのソフトで紳士的な物腰と優しい顔立ちはそのままに、剣の腕前は滅法強い。なにせ、本作では剣心との勝負において、彼の逆刃刀を折ってしまうのだから。
アクションにおいてはさすがに二人で向かい合ってくるくる回るなど不自然な動きが気にはなったが、神木隆之介が本気で佐藤健を斬りにいっている気迫と若さを感じる。十分な見応えだ。
「今度会うときまでに、新しい刀、用意しておいてくださいね」
ここまで若造に言われると、敗北感もひとしお。
折られてしまった逆刃刀の代わりを求めて旧知の刀鍛冶を探し求めた末に、出会う志々雄の十傑の一人・刀狩の張(三浦涼介)。
この対決も面白いが、敵の無双ぶりや金髪のビジュアル、おまけに卑劣なやり口が、まるで『今日から俺は‼』の磯村勇斗に引き継がれた風にみえる。
◇
剣心がやられそうになった瞬間に、刀鍛冶の遺した最後の一本が投げ込まれ、それをキャッチして「俺、参上!」となる。ここはケレン味たっぷりで痺れるシーン。
だが、そこにはるばる遠方より京都にきた神谷薫(武井咲)が登場し、「斬っちゃダメ、剣心!」と叫ぶ。うーん、斬らない信条は本作を貫く大事な要素だが、なんともスッキリしない。
結局、剣心が受け取った刀は逆刃刀で、だから殺さずにすんだというオチなのだが、本人には殺意があったのだから、誓いが守られたといえるのか心理的には微妙。
謎の立ち位置の隠密御庭番衆
隠密御庭番衆の面々も本作においては重要な役割。特に、四乃森蒼紫(伊勢谷友介)はでかくて強そうだし、精悍な面構えに狂気も相まって、敵としては一番強く見える。
本作においては、終始「抜刀斎はどこだ」を念仏のように唱えるばかりで、活躍は次回に期待したい。
彼を慕う巻町操(土屋太鳳)の目の前で、その父である御庭番衆の長(田中泯)を刺殺してしまうのは、なんとも時代劇っぽい展開であった。
尻切れトンボな幕切れは仕方ないか
その他、盛り上がってくると登場してはおいしいところを持っていく斎藤一(江口洋介)は何となくずるい気もしたり、相楽左之助(青木崇高)の能天気な暴れん坊ぶりと剣心への友情が好ましかったり。
とにもかくにも、映画は京都大火に向けて盛り上がっていき、そのまま次回作に丸投げされる。
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高荷恵(蒼井優)の出番が申し訳程度だったのは、スケジュールの都合なのか原作由来なのかよく分からないが、ちょっと不安なのは、志々雄に仕える佐渡島方治(滝藤賢一)のコミカルな演技。
これは前作の香川照之を思い出す、作品の調和を乱すキャラづくりだ。香川から滝藤と『半沢直樹』演出が継承されるとは思わなかったが、次回作への不安材料。
◇
最後は、『未来少年コナン』さながらに、志々雄によって船の舳先に縛られたヒロインを助けに海に沈んでいく剣心。そして砂浜にうちあがり失神する剣心を山賊抱っこするのは謎の男・福山雅治。
まるでマーベル映画のようにラストで次に繋げたのと、次回への引きこみ戦略はわかるけれど、ワンカットの福山にすべての余韻を持ってかれるのは、他の役者に申し訳ない気もする。