『ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル』
Mission: Impossible Ghost Protocol
シリーズ第4弾は、前作以上にメンバーの結束も高まり、チームプレイを重視。定番のアクションもグレードアップのうえユーモア増量。
公開:2011 年 時間:132分
製作国:アメリカ
スタッフ 監督: ブラッド・バード キャスト イーサン・ハント: トム・クルーズ ジェーン・カーター: ポーラ・パットン ベンジー: サイモン・ペグ ブラント: ジェレミー・レナー サビーヌ・モロー: レア・セドゥ ヘンドリクス: ミカエル・ニクヴィスト シディロフ: ウラジミール・マシコフ ウィストロム: サムリ・エーデルマン レオニド: イワン・シュヴェドフ ブリッジ・ナス: アニル・カプール ボグダン: ミラジ・グルビッチ ハナウェイ: ジョシュ・ホロウェイ IMF長官: トム・ウィルキンソン ルーサー: ヴィング・レイムス ジュリア: ミシェル・モナハン
勝手に評点:
(一見の価値はあり)
コンテンツ
あらすじ
ロシアのクレムリンで爆破事件が発生し、米国極秘諜報組織IMFのエージェント、イーサン・ハントと、ハントの率いるチームが事件の容疑者にされてしまう。
米国政府は「ゴースト・プロトコル」を発令してIMFを抹消。
汚名を着せられたハントは、IMFの後ろ盾もえられないままチームの仲間だけを頼りにクレムリン爆破の犯人をつきとめ、さらには事件の黒幕が目論む核弾頭によるテロを防ぐためロシアからドバイ、インドへとわたり、過酷な戦いに身を投じる。
一気通貫レビュー(ネタバレあり)
仲間との協力重視はピクサー流?
三作目でやっと面白くなってきた本シリーズ、四作目にあたる本作では、タイトルから通し番号が消え、<ゴースト・プロトコル>という名が付く。
これは、組織を存在しないものとして扱う取り決めを意味するが、IMFはテレビドラマの当初から「当局は一切関知しない」仕事専門だったわけで、今頃このタイトルが付くのは謎だ。
◇
とはいえ、本作でも前回同様に、チームプレイに重きが置かれているのは大変好ましい。
監督が、ピクサーアニメの大成長を支えた一人であるブラッド・バードなのは意外だが、アニメ技術よりも心情に訴えるストーリーを重視するピクサーの流儀が、本作でも活かされている気がする。
冒頭、ブダペストで逃亡するハナウェイ(ジョシュ・ホロウェイ)がサビーヌ・モロー(レア・セドゥ)に射殺され、情報を盗まれる。ここは正統派スパイ映画の雰囲気。
そして、モスクワの刑務所で牢の電子錠を操作し、大量の脱獄者で混乱するなか、囚人のボグダン(ミラジ・グルビッチ)に接近するイーサン(トム・クルーズ)登場。ここは既に余裕のおふざけモードになっている。
タイトルバックで本作の名シーンのチラ見せするスタイルはテレビを踏襲するが、お馴染みのテーマ曲は今回思い切ってアレンジしているのが斬新。
さて、今回のメンバーだが…
今回のチーム編成は、イーサンをリーダーに、仲間のハナウェイを殺された仇討を誓うカーター(ポーラ・パットン)。
二人の武闘派を支える技術担当のベンジー(サイモン・ペグ)は前作から出世し、ついにチームの正規メンバーになる。
そして、チームが危なくなってきたあたりから途中加入した分析官ブラント(ジェレミー・レナー)は、実は元エージェントだったので十分戦闘能力もありという設定。
◇
緊張するとおしゃべりになるというベンジーは前回以上にゆるいキャラクターで、仕事はするが、常に笑いもとりにいく。
その空気はイーサンやブラントにも伝播し、一歩間違うとロジャー・ムーア時代の007のようなコメディ路線になりそうな匂いがする。
ちなみに、IMF長官(トム・ウィルキンソン)はあっという間に射殺されてしまう。映画シリーズでのイーサンの上司は、みな不遇な目に遭っている。因果な商売だ。
仮想敵は常にジェームズ・ボンド
本作は従来以上にジェームズ・ボンドの影響を感じる。ホログラフィを廊下に映し出してクレムリンの護衛を欺く大がかりな映写装置や、壁に吸着してビルをよじ登れるグローブなど、ガジェットの登場が007っぽい。
全編を通じて何台も乗り換えるイーサンのBMWも、ピアース・ブロスナン時代のボンド・カーを思い出す。
考えてみれば、今回の敵陣の華である女アサシンのモローを演じたレア・セドゥは、本作後に『007 スペクター』と『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』でボンド・ガールを演っている。あちらの製作陣も、<ミッション:インポッシブル>を意識しているのだ。これは雰囲気も似るわけだ。
本作後の他作品への出演という点では、ブラントを演じたジェレミー・レナーも、本作と同年公開の『マイティ・ソー』を皮切りに、ホーク・アイ役でMCU作品のレギュラーとなっていく。
本作でのブラントは、過去に自分の失態でイーサンの妻を救えなかったというトラウマや、イーサンとも互角に戦える腕前など、なかなか魅力あるキャラ。
ただ、チームに三人も戦える人材がいるのは、やや過剰感。彼は普通に分析官の方が、映画としてはバランスが良かったように思う。
シリーズの定番アイテムは健在
シリーズの定番アイテムは揃っている。
まずは、お馴染みの高いビルの壁面クライミング。今回はドバイのブルジュ・ハリファ。世界一の高層ビルだから、この企画は本作で打ち止めかもしれないが、さすがに見応えあり。この最高峰を相手に、最新技術のへなちょこグローブの組み合わせが笑える。
◇
次にワイヤー宙づりもお約束だが、今回は趣向を変えて、イーサンからブラントに選手交代。ベンジーの操縦とからめて、これもすっかり余興扱いになっている。
忘れちゃいけないのが、手の先までピンと伸ばして全力疾走するイーサンが、大爆発の爆風で飛ばされるパターン。これも毎回出てくる気がするが、本作でも何度か登場。まるで人工波のプールで波に乗るみたいに気持ちよく爆風に飛ばされるイーサンがいい。
◇
なお、あまりに定番すぎる自動的に煙が出て消去される指令テープは、今回不具合で公衆電話を叩かないと作動しなかったり、フルフェイスの変装マスクは時間切れで完成が間に合わなかったりと、あえて<外す>演出で新鮮味をだす。
ブルジュ・ハリファでの偽装取引
前半のキモとなる、ブルジュ・ハリファのホテルの上下二室を使った偽装取引。
コバルトの異名を持つ核戦争論者のヘンドリクス(ミカエル・ニクヴィスト)。その代理人としてウィストロム(サムリ・エーデルマン)が、サビーヌ・モローの盗み出した核ミサイルの発射コードを、ダイヤと引き換えに手に入れようとする。
◇
全員が顔を知らないことをいいことに、IMFがなりすまして、二つの取引を同時に成立させてコードを奪取しようと企む。
このシーンは、変装マスクの完成が間に合わなかったことも奏功し、大がかりな仕掛けなく、カット割りでドキドキさせる本シリーズの原点といえる面白味があった。
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この取引あたりまでは最高の出来だった。ここからも砂嵐の中のバトルやインドのメディア王ブリッジ・ナス(アニル・カプール)の登場、そしてパーキングタワーでの死闘など、まあテンコ盛りの大サービス。
どれも見応えはあるのだが、後半は正直ちょっとお腹いっぱいに。ただ、本作をシリーズで最高評価とする人の気持ちも分かる。
最後には、シリーズ皆勤賞のためかワンシーンのみ出演のルーサー(ヴィング・レイムス)。イーサンが彼にチームメンバーを紹介したり、みんなに次の仕事も組もうと言ったり、今までになく結束は固い。
そして、同じくチラ見せだけの妻・ジュリア(ミシェル・モナハン)。公開時は、前作から5年も経過していたので、あまり妻の登場に感動しなかったが、続けて再観賞してみると、ここは結構感慨深い。
『ミッション:インポッシブル』
M:I-1 (1996)
『ミッション:インポッシブル2』
M:I-2 (2000)
『ミッション:インポッシブル3』
M:I-3 (2006)
『ゴースト・プロトコル』
M:I-4 (2011)
『ローグ・ネイション』
M:I-5 (2015)
『フォールアウト』
M:I-6 (2018)
『デッドレコニング PART ONE』
M:I-7 (2023)