はじめに
10年かけて完結した、ドニー・イェンが主演のイップ・マンシリーズの『序章』『葉問』『継承』『イップマン外伝マスターZ』『完結』の全5作一気通貫レビューです!
1. 『イップ・マン 序章』(2008)
2. 『イップ・マン 葉問』(2010)
3. 『イップ・マン 継承』(2017)
4. 『イップ・マン外伝 マスターZ』(2019)
5. 『イップ・マン 完結』(2020)
『イップ・マン 序章』 葉問
公開:2008 年 時間:108分
製作国:香港
スタッフ 監督: ウィルソン・イップ キャスト イップ・マン: ドニー・イェン 三浦大佐: 池内博之 チンチュン(工場経営者): サイモン・ヤム ウィンシン(妻): リン・ホン リー・チウ署長:ラム・カートン カム・サンチャウ(道場破り): ルイス・ファン リュウ師匠: チェン・チーフイ 佐藤: 渋谷天馬
勝手に評点:
(一見の価値はあり)
あらすじ
1930年代の中国広東省・佛山。武術館の師範に勝ったイップ・マンは、町一番の武術家として知られるようになる
しかし1938年、日中戦争により町が日本軍に占領され、日本兵たちに武術を教えることを拒否したイップ・マンは、空手の名手である日本軍将校・三浦と対決することになる。
一気通貫レビュー(ネタバレあり)
イップマン/カンフーウォーズ・ストーリー
実在の武術家・葉問(イップ・マン)を主人公としたアクション・カンフー映画。
この手のジャンルの映画はたまに観たくなるのだが、私は特にアクションに明るい訳でもない。ドニー・イェンと聞いて、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』の方が先に頭に浮かぶくらいだ。
ドニ―・イェン。見た目はサッカー元日本代表の長谷部誠、いや役者でいうと梶原善に似てるか、などと思ってしまうほどの、門外漢である。
◇
そうはいっても、このシリーズは面白い。気が付けば、シリーズ完結編まで複数配信されている嬉しい状況だったので、改めて追いかけてみることにした。まずは、第一作にあたる、『イップ・マン 序章』である。
ブルース・リーにとっての唯一の師匠として知られる中国武術<詠春拳>の達人、イップ・マンの壮絶人生の始まりは1930年代の中国広東省佛山。
猫も杓子も武術を学び、道場が乱立するこの町にあって、家族と共に平穏な日々を送る詠春拳の達人、イップ・マンは、その実力と人格で人々の尊敬を集める。
だが、やがて、日中戦争が勃発し、佛山を占領した日本軍が家屋を奪い、市民は窮乏を強いられる。友人に工場経営を誘われるも、清廉なイップ・マンは、土木工事の日雇いで何とか妻と子供を養う始末。
日本人の、鬼が来た!
何ということだ。完全に日本軍は悪者扱いで描かれている。まあ、中国側の視点にたてば、当然そうなるか。
ここに颯爽と現れるのが、日本軍の空手高段者である三浦大佐(池内博之)。三浦は配下にも空手の有段者を多数抱え、佛山の武術家を招いては戦わせ、勝った者には米を与える。
そんな試合には関心を示さないイップ・マンだったが、なぶり殺しにあった仲間の復讐のために、ついに怒りの拳を日本軍の空手家たちに向けることになる。
いや、これは強い。しかも美しく、素人目にも無駄な動きがないことが伝わる。10人がかりでも歯が立たない。日本人としては悔しいが、とても敵わない。
三浦大佐の部下・佐藤(渋谷天馬)が何とも卑劣漢で、すぐに銃口を中国人に向ける輩なのだが、こいつを見ていると同じ日本人として情けなくなる。
一方、三浦大佐は高圧的な面はあるが、意外にも誠意ある人物として描かれている。池内博之は、なかなか合っているではないか。
やがて三浦大佐は、イップ・マンの実力に目を付け、日本兵たちに中国武術を教えるよう迫るが、彼はそれを拒否。結果、二人は対戦する流れとなる。
結論、イップマンは強すぎる
本作は、イップ・マンの強さと人格の高さ、その美しい妻ウィンシン(リン・ホン)には頭が上がらないところなど、彼の人となりを知るにはうってつけの作品。
だが、彼が強すぎるので、戦いに見応えはあっても、ハラハラする場面はない。
三浦大佐も弱くはないが、イップ・マンが普段稽古でつかっている木偶の坊のように、あっという間にボコられてしまう。それを見た部下の佐藤は引き金を引くが、弾丸は急所を外れ、イップ・マンは一命を取り留める。
◇
日本軍との話とはまったく関係なく、カム・サンチャウ(ルイス・ファン)率いる道場破りの集団がイップ・マンに負け、その後チョウ・チンチュンの経営する工場を襲う話が出てくる。
一度痛い目に遭った従業員たちが、イップ・マンの教えを受け手老若男女問わず<詠春拳>を覚えて、再度荒くれ者たちと戦う姿が、いかにも香港映画っぽい。
工場労働者が一丸となる姿が、池井戸潤の『陸王』のようだ。このカム・サンチャウたちの集団は、今後の作品にも登場するのだろうか。
◇
最後は、ついに佛山から香港に渡ったイップ・マン。弟子であるブルース・リーと並ぶ写真も出てくると、次回作への期待も高まる。