01『るろうに剣心』
02『るろうに剣心 京都大火編』
03『るろうに剣心 伝説の最期編』
04『るろうに剣心 最終章 The Final』
05『るろうに剣心 最終章 The Beginning』
『るろうに剣心 最終章 The Final』
これで終わる、ここから始まる。長い沈黙を破って、ついに2012年に映画化が始まって以来の頬の十字傷の謎が解き明かされる。
公開:2021 年 時間:138分
製作国:日本
スタッフ 監督: 大友啓史 原作: 和月伸宏 『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』 キャスト 緋村剣心: 佐藤健 雪代縁: 新田真剣佑 雪代巴: 有村架純 神谷薫: 武井咲 相楽左之助: 青木崇高 高荷恵: 蒼井優 明神弥彦: 大西利空 斎藤一: 江口洋介 巻町操: 土屋太鳳 沢下条張: 三浦涼介 呉黒星: 音尾琢真 鯨波兵庫: 阿部進之介 乙和瓢湖: 栁俊太郎 乾天門: 丞威 八ツ目無名異: 成田瑛基
勝手に評点:
(オススメ!)
コンテンツ
あらすじ(公式サイトより引用)
かつて<人斬抜刀斎>として恐れられ、激動の幕末を刀一本で戦い抜いた男、緋村剣心。新時代を迎え、二度と人を殺さないと誓う。
斬れない<逆刃刀>に持ち替え、日本転覆を狙った志々雄真実をはじめ数々の敵との戦いを乗り越えた今は、仲間たちと平穏な日々を送っていたー。
ある日、東京が何者かに攻撃され、次々と大切な人々が襲われた剣心は、次第に追い詰められていく。
憔悴しきった彼の前に現れたのは、あの志々雄に武器や軍艦を送り込んでいた上海マフィアの頭目・雪代 縁。剣心の<十字傷の謎>を知る彼こそが、剣心自らが生み出してしまった最恐最悪の敵だった。
剣心に強烈な恨みを持ち、剣心だけではなく<剣心が作った新時代>をも破壊するため<人誅>を仕掛けてくる!
レビュー(まずはネタバレなし)
待望のシリーズが復活
待ち焦がれたシリーズ最終章の第一弾だ。実写映画化が始まったのは2012年、もう10年近く前になる。人気コミックが実写化されてはファンからの失望というパターンを繰り返す邦画業界にあって、本作は珍しい完成度を見せてくれた作品。
それだけに、作り手のこだわりも思い入れも大きいのだろう。前作『伝説の最期編』の公開2014年からはだいぶ年月も経ち、よもや続編が作られるとは思っていなかった。
だが、佐藤健が俊敏に動けるうちにぜひもう一本撮って、物語を完結させようという、大友啓史監督をはじめメンバーたちの情熱が実を結んだ。
◇
冒頭、明治初期の横浜駅から映画は始まる。汽車の車両に座るは武器商人の雪代縁(新田真剣佑)、かつて志々雄に戦艦を売った罪で斎藤一(江口洋介)率いる警察隊に囲まれる。
大勢を敵に回しての捕り物が始まるが、縁は軽業師のようにすり抜けては反撃する。この列車内の戦いを見ているだけで、早くも『るろ剣』の興奮がよみがえってくる。斎藤一の咥え煙草での構えも懐かしい。
「人斬抜刀斎には、まだ頬に十字の傷が残っているか」
そう斎藤に問い質す縁は、亡き姉の雪代巴(有村架純)の仇を取ろうとしている。
剣心は、自分の愛する妻・巴を斬殺したというのか。 剣心はなぜ〈不殺の誓い〉を立てたのか。そのすべての謎を剣心に語らせる鍵は、この縁が握っている。
今回の敵陣営と味方陣営
今回、剣心が相手にするのは、この縁とその配下の鯨波兵庫(阿部進之介)、乙和瓢湖(栁俊太郎)、乾天門(丞威)、八ツ目無名異(成田瑛基)といった荒くれものどもだ。
いずれ劣らぬ強者だが、縁を除けば、その風貌もまた、どうみても悪党といういかめしい面構えで、大変分かりやすい。
個人的には、両手に歪曲した大鎌を持った乙和瓢湖が『シザーハンズ』みたいで好きだったが、まさかあの恐ろしい顔がイケメンの栁俊太郎だとは気が付かなんだ。まあ、顔が出ている分、ミイラ男だった志々雄よりはましかもしれないけれど。
対する剣心の仲間たちは、薫(武井咲)に左之助(青木崇高)、恵(蒼井優)といつもの顔ぶれ。弥彦の配役は成長しすぎたので、大友啓史監督『3月のライオン』の大西利空が新たに演じている。
◇
警視局の密偵として、かつて剣心が倒した志々雄の十本刀の一人、刀狩りの張(三浦涼介)が出てきて驚いた。そうか、逆刃刀で倒したし、薫が「剣心、殺しちゃダメ!」と制したから、こいつも生きているのだ。すっかり忘れていた。
◇
アクションに関しては、過去作に比べ全くの手抜きや衰えをみせず、相変わらず高い次元での仕上がりとなっている。そりゃちょっと、重力を無視した動きだろうと思える瞬間はあるものの、やはりスピード感と高度な動きは他者の追随を許さない。
このアクションは、ずっと続いても見飽きることがない。大人数によるあんな複雑な動き、一体どう殺陣を作るのか。アクション監督・谷垣健治の頭の中を覗いてみたい。
レビュー(若干ネタバレあり)
ここからネタバレがありますので、未見の方はご留意願います。
頬の十字傷については語らない
剣心の頬の十字傷をめぐっては、祝言をあげるはずだった武士・清里明良(窪田正孝)が人斬抜刀斎に闇討ちに遭い斬殺される。
彼が死ぬ間際に反撃し負わせた傷、そしてその許嫁だった女性の付けた傷が、頬の十字傷。過去作で何度も登場する回想シーンでは、そう取れる。
◇
ではなぜ、その許嫁であった雪代巴(有村架純)は剣心の妻なのか、そしてなぜ彼の手で殺められなければならなかったのか、その答えは本作で与えられる。
詳細は触れないが、有村架純の登場シーンがもっと欲しかったとは思った。次作に期待したい。彼女はシリーズ初参加だが、佐藤健にとって、「剣心の役作りは巴から始まっている」、つまり、原点といえる重要な存在なのである。
オールスター総出演だ!
さて、控えめなネタバレの中でどうしても語りたいことは、オールスター勢ぞろいの高揚感だ。倒したはずの刀狩りの張は、また早々に敵側に寝返ってしまうのだが、その他にも、懐かしい面々が結集する。
まずは御庭番衆。前作では微妙に感情移入できないポジションだった四乃森蒼紫(伊勢谷友介)は、今回は剣心の側について、堂々の戦いぶり。さすがに迫力がある。その後、彼を取り巻く諸般の事情で公開時には大きく名前も出ないが、作品の中で存在感はある。
◇
翁はさすがに生き返らないので、御庭番衆を率いる巻町操。演じる土屋太鳳は、かつて本シリーズに憧れてオーディションで役を射止めただけあって、本作でも人一倍溌剌としているようだった。
公開までシークレットキャストだったのは、瀬田宗次郎(神木隆之介)だ。これは興奮せずにはいられなかった。彼も前作で、逆刃刀の前に倒れたわけだが、不殺の誓いなので、死んではいない。なので、今回復活である。
あの、後ろ足でケンケンしてリズムを取るような流麗な太刀裁きがまた観られるとは、感涙。しかも、なんと今回は、縁がボスを務める上海マフィアの副官・呉黒星(音尾琢真)に従うとみせて、剣心と組むのである。
『バクマン。』の最強タッグの再来か! いや、彼ら二人が大勢の敵を切り捨てていくアクションシーンは圧巻だ。こんなにキレイに敵陣が片付いていく訳はないと思いながら、惚れ惚れとみてしまう。
◇
今回、全般的にアクションは文句なし。昨日の敵が今日の友になって一緒に戦うあたりは、さすが少年ジャンプの基本原則に忠実だ。これ以上の盛り上がりはない。
次作に渡さず、きちんと終わる
過去作で不満だったデフォルメしすぎなキャラ(香川照之や滝藤賢一)は、本作でいえば音尾琢真の役なのだけれど、今回は丁度いい塩梅だ。これならコメディ路線にならず、映画全体が引き締まる。
◇
そして当然最後は、剣心と縁の一騎打ち。これまでと違い、縁は剣心の憎き敵ではない。本気で戦い合うも、戦いたくない相手だという苦悩。単なる活劇で終わらせない哀愁が漂う。
嬉しいことに、本作は『The Beginning』 と二部構成とはいえ、『京都大火編』のように危機の真っただ中で「後編に続く」で終わらせはしないのだ。きっちりと決着をつける。
本作で終わっても映画はきれいに完結する。では、一体なぜ、最後に『The Beginning』を持ってくるのだろう。あと数週間、気になって仕方がない。