『ハリー・ポッターと謎のプリンス』一気通貫今更レビュー⑥

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『ハリー・ポッターと謎のプリンス』
 Harry Potter and the Half-Blood Prince

公開:2009 年  時間:153分  
製作国:イギリス

スタッフ 
監督:      デヴィッド・イェーツ
脚本:     スティーブ・クローブス
原作:        J・K・ローリング
  『ハリー・ポッターと謎のプリンス』
キャスト
ハリー・ポッター:ダニエル・ラドクリフ
ロン・ウィーズリー:ルパート・グリント
ハーマイオニー・グレンジャー:
            エマ・ワトソン
ダンブルドア校長: マイケル・ガンボン
セブルス・スネイプ:アラン・リックマン
スラグホーン:  ジム・ブロードベント
ドラコ・マルフォイ: トム・フェルトン
ジニー・ウィーズリー: ボニー・ライト
ニンファドーラ:    ナタリア・テナ
マクゴナガル:     マギー・スミス
ハグリッド:   ロビー・コルトレーン
ベラトリックス:ヘレナ・ボナム=カーター

勝手に評点:3.0
 (一見の価値はあり)

あらすじ

ヴォルデモートとの最終決戦が迫っていることを予感するダンブルドア校長は、ヴォルデモートの守りを解く手がかりを見つけようと、かつて学生時代のヴォルデモートを教えたこともあるホラス・スラグホーンを魔法薬学教授として学校に迎える。

ハリーはスラグホーンの授業で「半純血のプリンス」と署名された古い魔法薬学の教科書を手に入れるが、そこには魔法薬学以外にもさまざま魔法が記されていた。ハリーは次第にその教科書に夢中になる。

一気通貫レビュー(ネタバレあり)

「終わりの始まり」という訳ではないが、シリーズも6作目を迎え、いよいよ完結に向けての布石を打ってきた感がある。

全編に不穏な雰囲気が漂う。いつもならマグルの世界でバカ騒ぎしてからホグワーツ魔法魔術学校にやってくるハリー・ポッターが、今回はロンドンの地下鉄駅にダンブルドア校長が直々にお迎えに登場。

やはり、前作『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』でのヴォルデモート復活シリウス・ブックの死が、本作でも尾を引いているのだろう。

それにしても、今回は過去作とはだいぶ異なりダークファンタジーの様相だ。

親友ロン・ウィーズリーの惚れ薬のエピソードや、幸運の薬を服用したと思い込んで活躍するクィディッチの試合など、多少コミカルな場面はあるが、申し訳程度。

何せ、あのいじめっ子ドラコ・マルフォイがすっかり別人のように陰キャになっている。これは不気味だ。

(C) 2009 Warner Bros. Ent.
Harry Potter Publishing Rights (C) J.K.R.
Harry Potter characters, names and related indicia are trademarks of and (C) Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

ダンブルドア校長は、旧知のホラス・スラグホーン(ジム・ブロードベント)を魔法薬学教授としてホグワーツに迎え入れるが、それには理由があった。

ヴォルデモートがかつてトム・リドルという名の学生だった頃、スラグホーンはこの学校で彼を教えていたのだ。

その時の記憶を手に入れれば、ヴォルデモートを倒す手がかりがつかめる筈。ハリーはダンブルドア校長と協働して、この記憶探しを進めていく。

トム・リドル(11歳)を演じているヒーロー・ファインズ・ティフィンは、前作のヴォルデモート役だったレイフ・ファインズの甥だそうだ。

トム・リドル(15歳)を演じたフランク・ディレイン二宮和也っぽい聡明そうな顔立ちの方が、個人的には印象的だったが。

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以下、ネタバレになりますので、未見の方はご留意願います。

本作のサスペンスタッチで進む展開の中で、鍵を握る人物はアラン・リックマン扮するセブルス・スネイプだ。

彼はシリーズ当初から、ハリーたちにやたら塩対応する厳しい先生で、その正体も謎に包まれており、ハリーはこの男は敵なのではないかと睨んでいたが、ダンブルドア校長だけは、セプルスに全幅の信頼を寄せていた。

回が進むにつれ、観ている方もすっかりセプルスは我らの味方だと信じ込んでしまっていたが、今回は雲行きが怪しく、闇落ちしたドラコをサポートする役割を担っている風である。

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そして、本作では重要な登場人物が殺されるという情報だけが、原作出版直前に流布されたが、結局それは、セプルスに裏切られて殺されるダンブルドア校長なのである。

本来ならばセプルスの力では敵う相手ではないが、ヴォルデモートを倒すために必要な分霊箱探しをしていたダンブルドアは、その過程で毒入りの水を大量に飲まされて抵抗できないところを襲われたのだ。

死喰い人が大勢襲い掛かるシーンといい、これがハリポタ・シリーズかと思わせるようなホラー感。大人の鑑賞に堪える作品になっているのは好感。

ただ、本作の白眉であるはずの、ダンブルドアの最期の演出は、ずいぶんと淡泊なのだ。

これは前作でシリウス・ブラックが殺されたシーンでも思ったことなので、デヴィッド・イェーツ監督は、重要人物の死を勿体ぶってコテコテに過剰演出で見せるのが嫌いなのかも。

「シリウス・ブラック殺してやった!」

と、楽しく歌う前作の実行犯ベラトリックス(ヘレナ・ボナム=カーター)は、今回のダンブルドアの死にも立ち会うが、ディズニーの『クルエラ』っぽい魔女キャラは、本作のテイストからはやや浮いている気がした。

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タイトルにもなっている『謎のプリンス』は、映画の中では原題どおり『半純血のプリンス』と呼ばれている。

その正体はセブルス・スネイプなのだが、そうとは知らずハリーは、古い魔法薬学の教科書に<半純血のプリンス>が書いた闇の呪文を使い始める。

その一件は後でハーマイオニーに窘められるが、それでも過去作に比べると、いつもヒーロー気取りで先走って痛手を被るハリーにしては、今回は成長が見られた(ロンは相変わらずガキっぽいが)。

ハーマイオニーとハリーの関係はよく分からないが、本作では、ロンの妹ジニー・ウィーズリーとハリー・ポッターはすっかりステディな仲になっている。

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ラストで、ハリーが分霊箱にあった銀のロケットの蓋を開けると本物の分霊箱を壊すために偽物とすり替えたことを綴っていた手紙が出てくる。これを書いたR・A・Bなる人物は何者なのか。

ダンブルドア校長を失ったハリーは、これ以上愛する者たちを失いたくないと、ひとりで学校を離れ旅立つ。さあ、ここからどういう展開を見せるのか。