『チャーリーとチョコレート工場』考察とネタバレ!あらすじ・評価・感想・解説・レビュー | シネフィリー

『チャーリーとチョコレート工場』今更レビュー|森永は金なら1枚 銀なら5枚

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『チャーリーとチョコレート工場』
 Charlie and the Chocolate Factory

ティム・バートン監督がジョニー・デップとの最強タッグで贈る風刺の効いたファンタジー。

公開:2005 年  時間:115分  
製作国:イギリス
 

スタッフ 
監督:         ティム・バートン
脚本:        ジョン・オーガスト
原作:         ロアルド・ダール
       『チョコレート工場の秘密』
キャスト
ウィリー・ウォンカ:  ジョニー・デップ
チャーリー・バケット:フレディ・ハイモア
ジョー爺ちゃん:   デイビッド・ケリー
バケット夫人: ヘレナ・ボナム=カーター
バケット氏:       ノア・テイラー
ジョゼフィーン婆ちゃん:
          アイリーン・エッセル
ジョージーナ婆ちゃん:   リズ・スミス
ジョージ爺ちゃん:  ディビット・モリス
オーガスタス・グループ:
       フィリップ・ウィーグラッツ
オーガスタスの母親:
      フランツィスカ・トローグナー
バイオレット・ボーレガード:
           アナソフィア・ロブ
バイオレットの母親:  ミッシー・パイル
ベルーカ・ソルト: ジュリア・ウィンター
ベルーカの父親: ジェームズ・フォックス
マイク・ティービー: ジョーダン・フライ
マイクの父親:     アダム・ゴドリー
ウンパ・ルンパ:     ディープ・ロイ
ウィルバー・ウォンカ:
          クリストファー・リー

勝手に評点:3.5
(一見の価値はあり)

あらすじ

失業中の父親や母親、二組の祖父母と貧しいながらも幸せに暮らす少年チャーリー(フレディ・ハイモア)。彼が住む町の中心には、世界一のチョコレートを作り続けていると評判の謎めいたチョコレート工場が。

ある日、工場主のウィリー・ウォンカ(ジョニー・デップ)は商品のうち五個だけに入っているゴールデン・チケットを引き当てた五人に工場の見学を特別に許可する。

運よくチケットを手に入れたチャーリーは他の子ども四人と工場に入る。

今更レビュー(ネタバレあり)

ティモシー・シャラメが若き日のウィリー・ウォンカを演じる、『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』が2023年12月に公開予定ということもあり、久々にオリジナルを観直した。

ティム・バートン監督とジョニー・デップの強力タッグは『シザーハンズ』以来いくつもの優れた作品を生み出してきたが、本作もまた、二人の代表作のひとつと言えるだろう。

原作はロアルド・ダールによる児童文学『チョコレート工場の秘密』。1971年に『夢のチョコレート工場』(メル・スチュアート監督)という題名で初映画化されており、本作が二度目。

前作は全編ミュージカル仕立てであったが、本作ではウンパ・ルンパという名の小人たちだけが歌い踊る設定となっている。

児童向けのファンタジー映画ではあるが、毒気を含んでいるところが本作の持ち味だろう。

ロアルド・ダールの原作にも十分に風刺やブラック・ユーモアが含まれており、少し生意気でませた子供たちが喜びそうな内容だが、ティム・バートン監督の手にかかると、さらに独特の魅力が加わる。

原作は読み手が想像を膨らますように工夫して書かれているが、映像はその想像よりも見劣りしないよう、細部に至るまで注意が払われている。

チャーリー少年の三世代家族が暮す傾いたボロ家の造形ウォンカのチョコレートのパッケージデザイン工場の遊び心あふれた設計、そして憎たらしさ満点の子供たち。

中でも、ジョニー・デップが嬉々として演じているウィリー・ウォンカという工場主の謎めいた人物設定は、原作のただの変わり者であるキャラクターを、一段と魅力的な存在に昇華させたと思う。

(C)2005 Theobald Film Productions LLP

映画は冒頭、雪の舞う町にある傾いた家に住むバケット一家。

一人息子のチャーリー(フレディ・ハイモア)に歯磨き粉工場勤務の(ノア・テイラー)(ヘレナ・ボナム=カーター)。そして、それぞれの祖父母も一緒に暮らしているという三世代七人家族の大所帯。

スープの具材にも困るほどの貧窮だが、みな優しく愛情に満ちていて、平和な家庭である。

祖父のジョー(デイビッド・ケリー)はかつてウォンカのチョコレート工場に勤めていた。

ウォンカは天才ショコラティエで数々の画期的な製品を創り出すが、ライバル企業がスパイを送り込んでレシピを盗んだことに立腹し、突然工場を閉鎖した。

ジョーも解雇されたが、数年後に工場は再開。ただし従業員の姿を見たものはなく、ウォンカの工場は謎に満ちていた。

そんな折に、「工場で生産するチョコレートに五枚だけ金色のチケットを同封し、それを引き当てた子供は工場見学に招待する」というキャンペーンが始まる。

夜中にウォンカのロゴ入り赤いモペットで従業員が町中を走り回り貼り紙するのが楽しい。翌日から、世界中がこのキャンペーンに熱狂し、東京、モロッコ、NYと世界各地で人々は我先にとチケットを探し求める。

チャーリーも大のチョコ好きだが、毎年誕生日に板チョコを一枚買ってもらえるのが精一杯のバケット家。これでは工場見学したくても、チケットの夢は遠い。

そのうちに、資本力や組織力、あるいは才能にまさる世界各国の子供たちが次々とチケットを当て始め、ニュースになっていく。誰も皆、負けず劣らず憎たらしいキャラクターで、分かり易い構図。

最後の一枚をチャーリーが引き当てるのは容易に想像できる展開だ。

面白いのはこの一枚、誕生日プレゼントでも、爺ちゃんのヘソクリで買ったものでもなく、チャーリーが販売店の前で偶然拾った紙幣(10ポンドかドルか?)で買ったチョコから出てくるのだ。

日本の児童文学なら「交番に届けたらお巡りさんがお駄賃をくれる」的なステップが入るところだが、他国では拾った者勝ちが当たり前か。

ともあれ、こうして我らがチャーリーもチケットを手にし、晴れて保護者のジョー爺さんと工場見学ツアーに参加する。

ここでようやくジョニー・デップの登場だ。既に40分近く経過して初お目見えゴジラ好きで有名なティム・バートンだから、主役の登場まで焦らすのもゴジラ流か。

  1. ドイツ・デュッセルドルフ肉屋の息子で食いしん坊オーガスタス・グループ(フィリップ・ウィーグラッツ)は、食い意地のはった肥満気味の少年。『20世紀少年』でいうマルオですな。
  2. 英国・バッキンガムシャーナッツ工場の社長令嬢ベルーカ・ソルト(ジュリア・ウィンター)は、何でもすぐに欲しがる我儘娘。ナッツ工場の女性総動員で仕事のかわりにチョコの包装剥がしでチケット入手という資本主義の権化。
  3. 米国・アトランタカラテキッズバイオレット・ボーレガード(アナソフィア・ロブ)は、ステージママの影響で賞獲りに執念を燃やす少女。普段はガム噛みの記録更新のために常にガムを噛んでいる。
  4. 米国・デンバーハイテクオタクマイク・ティービー(ジョーダン・フライ)は、シューティングゲーム好き。頭脳明晰の自信家で、様々な分析により当たりチケットを手繰り寄せる。米国二人は偏ってるなあ。アジア勢が欲しかった。

工場見学が始まると、ウォンカが毒舌たっぷりにあちこちを紹介してくれる。

特筆すべきは、彼が異境の地で出会った小さな民族ウンパ・ルンパ(ディープ・ロイ)だろう。

カカオの実を提供するかわりに、工場労働者として大勢が働いている。みな同じ顔でクローンのようだ。彼らが大勢で歌い踊る姿は、原作にはないインパクトだ。

本作はここから、チャーリーと一緒に見学する子どもたちが一人ずつ脱落していく展開になる。

普通この手の物語には、主人公以外に勝ち残りそうなライバルがいそうなものだが、四人ともただ悪ガキとして描かれており、最後の勝者は明白だ。

このファンタジーで楽しむべきは、脱落者がそれぞれどのような報いをうけるのか、そして脱落のたびにウンパ・ルンパがどのような曲で踊るのか。

音楽はティム・バートンの盟友ダニー・エルフマン。インドの音楽系からファンク調、あるいはクイーンっぽい曲など、バラエティに富む。そのたびに、大勢のウンパ・ルンパが一糸乱れずダンスを見せる。

ダークサイドに堕ちた<イッツ・ア・スモールワールド>のようである。ああ、これぞイギリス映画の風刺。

映画には、原作にはないキャラとして、ウィリーの父で歯科医のウィルバー・ウォンカクリストファー・リーだよ!)が登場する。

幼少期に甘い物を厳しく禁止されていたウィリーは、父親と訣別し、事業を興す。彼にとって父の存在はトラウマとなっていたが、家族を大事にするチャーリーに触発されて、長年を隔ててついにウォンカ父子は和解する。

このエピソードのおかげで、本作はただのシニカルなだけのファンタジーとは異なる後味を残す。

新作『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』は、『パディントン』ポール・キング監督がメガホンを取るが、はたして本作のティム・バートンならではの風刺の効いた美しい世界観が継承されるかが気になるところ。

そして、イケメン度合いではジョニー・デップに負けないティモシー・シャラメだが、ジョニデのような怪演ができるかどうか、これもまた楽しみではある。