『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』
Birds of Prey (and the Fantabulous Emancipation of One Harley Quinn)
スーサイド・スクワットの超過激女が再登場!ジョーカーとはキッパリ別れても、ケンカっぱやさは健在。マーゴット・ロビーのエッジの効いたアクションと謎の思考回路は、相変わらず魅力たっぷり。
公開:2020 年 時間:109分
製作国:アメリカ
スタッフ
監督: キャシー・ヤン
キャスト
ハーレイ・クイン:
マーゴット・ロビー
レニー・モントーヤ:
ロージー・ペレス
ダイナ・ランス/ブラックキャナリー:
ジャーニー・スモレット=ベル
ヘレナ・バーティネリ/ハントレス:
メアリー・エリザベス・ウィンステッド
カサンドラ・ケイン:
エラ・ジェイ・バスコ
ローマン・シオニス/ブラックマスク:
ユアン・マクレガー
ビクター・ザーズ:
クリス・メッシーナ
勝手に評点:
(一見の価値はあり)
コンテンツ
あらすじ
悪のカリスマ=ジョーカーと別れ、すべての束縛から解放されて覚醒したハーレイ・クイン(マーゴット・ロビー)。
モラルのない天真爛漫な暴れっぷりで、街中の悪党たちの恨みを買う彼女は、謎のダイヤを盗んだ少女カサンドラ(エラ・ジェイ・バスコ)をめぐって、残忍でサイコな敵ブラックマスク(ユアン・マクレガー)と対立。
悪VS悪のクレイジーな戦いに向け、ハーレイはクセ者だらけの新たな最凶チームを結成。予測不能なバトルが始まる。
レビュー(ネタバレなし)
この路線ならマーベルに負けない
マーゴット・ロビーが自身の当たり役となったハーレイ・クインに再び扮したスピンオフ作品。のっけからキャラ全開のノリが小気味よい。
◇
そもそも、言ってはなんだが、前作の『スーサイド・スクワッド』はちょっと残念な映画だった。
ヴィラン勢ぞろいのチームにあって、ジャレッド・レトのジョーカーはホアキン・フェニックスの迫力には遠く及ばず、記憶に残ったキャラは、ハーレイ・クインとデッドショット(ウィル・スミス)だけと寂しい限り。
その点では、数少ない収穫だったこの過激なヒロインを、主役に抜擢するのは好判断。あれだけ熱愛だったジョーカーとの別れ話から始まる展開(しかも男は顔も出さない)も明快で良い。
保有するキャラクターの魅力ではマーベルに負けていない(むしろ優位にある)DCだが、こと映画となると屈辱的な大敗を喫している。
『アベンジャーズ』の向こうを張って『ジャスティス・リーグ』を作ってはみたが、底の浅さは否めない。
『スーサイド・スクワッド』にしても、マーベルの『デッドプール』と同じように最凶で最強のダークヒーローもの路線を目指したように思えるが、どうにも中途半端。根っこがマジメなDCゆえに、ふっ切れていない印象だった。
女性戦士チームの独創性がハマる
だが、本作はマーベル追随でない独創性もあるし、背徳的なふざけ方も切れがいい。
何より、暴力的ヒロインのハーレイ・クインの常識を超越した言動の魅力と、彼女のもとに結集することになる女性戦士たちの即席なチームワークが面白いじゃないか。
しかも、モントーヤ刑事、ブラックキャナリー、ハントレス、更には非行少女のカサンドラまで、みんなキャラが立っている点も、前作から改められている。
◇
女性ヒーローが徒党を組んで戦うというフォーマットは、日本ではセーラームーンからプリキュアまで脈々と続いているが、本作も『BIRDS OF PREY』として原作があり(本来は<猛禽類>の意味。知りませんでした)、『ゴッサム・シティ・エンジェル』としてドラマ化もしていたようだ。
かつては男性中心で組まれたチームを、全員女性で再映画化する流れが、『オーシャンズ8』や『ゴーストバスターズ』あたりから顕著に見られたが、本作もその一つと言えるのかもしれない。
そういえば、原題のタイトルも、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』みたいに思いっきり長ったらしい。邦題はさすがに簡略化しているが。
キャスティング・スタッフについて
さて、出演者をみてみよう。ハーレイ・クインのマーゴット・ロビーは、本作シリーズのほか、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』や『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』あたりが主要作品か。
『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』ではシアーシャ・ローナンとダブル主演。
◇
ハントレスは、クロスボウ・キラーとも呼ばれるアサシンで、家族をマフィアに殺された過去を持つ。
タランティーノの映画に出てきそうな経歴のキャラだと思っていたら、メアリー・エリザベス・ウィンステッドは『デス・プルーフ in グラインドハウス』にも出ていた。
恐怖映画の絶叫ヒロイン役が多いけれど、私が好きなのは『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』。
◇
手柄を上司に奪われてばかりのモントーヤ刑事(ロージー・ペレス)と、歌姫のブラック・キャナリー(ジャーニー・スモレット=ベル)は、残念ながら私の知っている過去作品はなかった。
敵役のラスボスであるローマン・シオニスはブラックマスクというヴィランであり、ユアン・マクレガーが怪演しているのはちょっと意外だった。オビワン・ケノービが典型例だが、彼には善人キャラの記憶しかなかったので。
ユアンは良かったけれど、彼女たち相手ではヴィランも目立ちようがなく、割を食っている感じは否めず。
◇
監督は中国系女性監督のキャシー・ヤン。この手のヒーローものに女性監督の抜擢は珍しいように思うが、本作ではそんな余計な情報を意識させない、納得の完成度。
ダニエル・ペンバートンの音楽とも相俟って、この手の作品好きにはたまらないグルーヴ感だ。
主役は白人女性だけど、仲間はプエルトリコ系からアフリカ系、アジア系、さらには監督が中国系と、ジェンダーだけでなく人種的にもダイバーシティを意識しているのかも。
ハーレイ・クインの魅力
ハーレイ・クインは過激で暴力的で、人格的には勿論問題多いのだけれど、子供や動物、台湾出身の料理店主相手の接し方とかみていると、結構いい面もあったりして、なかなか深みのあるキャラクターだ。
とはいえ、けして安易に予定調和には走らないのも、いいところ。後に結成されるBIRDS OF PREYには、彼女は入っていないのだ。
彼女に痛い目に遭わされた、ローラーボウルの選手とか、シオニスの元運転手とか、ペットショップの店員とか、気の毒ながら笑ってしまう。
極彩色の弾丸を撃ちまくってアジトに突入していくのも、サマになる。ブラックマスクの死に様も、笑っちゃうくらい呆気ないのだけれど、それがまた、本作らしい。