『エイリアン:コヴェナント』
Alien: Covenant
リドリー・スコット監督による『プロメテウス』と『エイリアン』の世界の橋渡し。
公開:2017 年 時間:122分
製作国:アメリカ
スタッフ
監督: リドリー・スコット
キャラクター創造: ダン・オバノン
ロナルド・シャセット
H・R・ギーガー
キャスト
デヴィッド/ウォルター :
マイケル・ファスベンダー
ダニー(移住計画責任者):
キャサリン・ウォーターストン
ジェイコブ(船長):ジェームズ・フランコ
クリス(副長): ビリー・クラダップ
カリン(生物学者): カルメン・イジョゴ
ティー: ダニー・マクブライド
マギー: エイミー・サイメッツ
ロープ軍曹: デミアン・ビチル
ハレット軍曹: ナサニエル・ディーン
リックス: ジャシー・スモレット
アップワース :キャリー・ヘルナンデス
アンカー: アレクサンダー・イングランド
レドワード: ベンジャミン・リグビー
コール: ウリ・ラトゥケフ
ローゼンタール: テス・ハウブリック
ウェイランド社長: ガイ・ピアース
勝手に評点:
(一見の価値はあり)
あらすじ
滅びゆく地球から脱出し、人類移住計画を託された宇宙船コヴェナント号には、カップルで構成された乗組員が搭乗していた。
やがて人類の新たな楽園となるであろう未知の惑星にたどり着いたコヴェナント号だったが、そこには想像を絶する脅威が存在していた。
その恐怖を目の当たりにした乗組員たちは、命からがら星からの脱出を試みる。
一気通貫レビュー(ネタバレあり)
プロメテウスからエイリアンへ
本作は『エイリアン』の名を冠してはいるが、厳密にはシリーズではない。
リドリー・スコット監督が当初『エイリアン』の前日譚として撮る予定だった『プロメテウス』が、思ったほど明確に繋がりを創り出せなかったため、そのリカバーショットとして本作が作られた。確かそんな経緯じゃなかったか。
いずれにせよ、本作によって、『プロメテウス』と『エイリアン』は無事に美しく連結することができている。
◇
『エイリアン』はシリーズとして4作目まで作られ、その他プレデターとの他流試合なども映画になっている。
シリーズにはジェームズ・キャメロン(2作目)やデヴィッド・フィンチャー(3作目)、ジャン=ピエール・ジュネ(4作目)と、大ブレイク前の大物監督が名を連ねる。
但し、シリーズには何かと制約も多いのか、監督の経験不足か、はっきり言って3作目以降に観るべきものは少ない。キャメロンの『エイリアン2』で打ち止めにしておけば良かったものを。
リドリー・スコット監督もそう考えているのかは分からない。
だが、1作目の前日譚として『プロメテウス』と本作を撮り、彼が製作に加わり公開予定の最新作『エイリアン:ロムルス』も『エイリアン1・2』の間の時代の作品だというから、2作目まではリドリー・スコットも認めているのだろう。
2作目のキャメロン監督もまた、『ターミネーター』でシリーズ続編がどんどん軌道を外れていき、自らが我慢できずに新作で立て直しをする構図が共通しているのは興味深い。
約束の地は目的地変更へ
本作の舞台は2104年、植民船コヴェナント号が、船を管理するアンドロイドのウォルター、冷凍休眠中の乗組員15人と2千人の入植者、1千体以上の人間の胎芽を乗せ、人類移住先の惑星<オリガエ6>に向けて航行中に衝撃波を受けてトラブルに見舞われる。
「コヴェナント」とは契約か。それに縛られて過酷な労働を強いられる乗組員にとっては嫌味な船名だと思ったが、聖書にある「約束の地」に起因するらしい。
◇
映画は冒頭、このコヴェナント号の事故シーンの前に、ウェイランド社の社長(ガイ・ピアース)と自社製品のアンドロイド、デヴィッド(マイケル・ファスベンダー)との対話シーンがある。
二人とも前作『プロメテウス』の登場人物だが、社長がまだ若いことから、前作より何十年も前の設定なのだろう。ガイ・ピアースは前作が老けメイクで誰だか判別できないほどだったので、本作でやっと顔出し。
デヴィッドと同じ顔の人物が、コヴェナント号にウォルターという名で乗船している。これには一瞬戸惑ったが、やがて答えがわかる。
コヴェナント号が突如近距離に偶然発見した理想的な惑星に目的地を変更し、そこに探索にいくと、プロメテウス号の遭難後、何年も孤独にそこで研究を続けているデヴィッドが彼らを待っているのだ。
ウォルターもデヴィッドもアンドロイドだから、同じマイケル・ファスベンダーの顔をしているというわけだ。
◇
コヴェナント号が着陸したこの惑星は、プロメテウス号の遭難した惑星LV-223なのだと思っていたが、前作のラストで、生き残ったエリザベス・ショウ博士(ノオミ・ラパス)とデヴィッドは異星人の故郷の星に向かったはず。ならば、この惑星は異星人の故郷星か。
序盤の事故で冬眠カプセルのまま台詞もなく黒こげになる船長役のジェームズ・フランコや、冒頭のみのガイ・ピアースといったノークレジットの配役は豪華だが、それ以外の乗組員たちは名前の分からない俳優が殆どで、みんな死んじゃうんだなあと思いながら観る。
シガニー・ウィーバーを継承する主人公はやはり女性で、移住計画責任者で死んだ船長の妻・ダニー。演じるのは、『ファンタビ』でお馴染みのキャサリン・ウォーターストン。
新旧アンドロイド対決
「カントリーロード」の鼻歌を受信した乗組員たちが、おそるおそる未知の惑星に探索に入り、地球と同じ環境じゃないかと喜ぶのもつかの間、突如現れたお馴染みのエイリアンに襲われていく。
シリーズとしては何度も見たような場面ではあるが、本家本元のリドリー・スコットによるものと思えば、ありがたく思える。
ポケットモンキーのようにすばしこく動き回るエイリアンは、『ロード・オブ・ザ・リング』のゴラムのようだ。「いとしいしと」と言い出しそうで怖い。
◇
登場時点から悪役の匂いしかしないデヴィッドとウォルターの新旧アンドロイド対決は、本作での新機軸。整った顔立ちのファスベンダーの表情があまりに冷静で、どこからみてもアンドロイド。
デヴィッドがあまりに創造的だったために、後継機種は何も新たなものが作りだせないよう機能制限させられたというところに、ウォルターの悲哀をにじませる。
エイリアンが地表で乗組員たちを次々と殺していき、最後には宇宙船にも潜入しようとするストーリー展開はシリーズで何度も繰り返されたものなので、新鮮味はない。
ただ、恐ろしいエイリアンがどのようにして生まれ育ったのか、そこには彼らの創造主であるデヴィッドが関与していたというのは、意外だったけど。
◇
以下、ネタバレになるので未見の方はご留意願います。
新旧アンドロイドバトルで、善玉ウォルターはデヴィッドに機能停止させられてしまうが、機種の改良により復活し、形勢逆転する。だが、最後にどちらが勝利したのかは、映画では明確に示さない。
生き残ったウォルターが妙に悪人顔に見えるのは、やや演出がミエミエだった。だから、最後にサプライズはない(あえてそうしたのかな)。
乗組員で唯一の生存者となったダニーを冬眠ポッドに閉じこめて、悠然とデヴィッドがコヴェナント号を徘徊し、大道芸人が口から卵を出すかのようにエイリアンの胎芽を取り出して、冷凍キャビネにしまい込む。
こんなに鮮やかに悪が勝ち残るのは、本シリーズにおいて珍しいことだ。完全犯罪が発覚せずに『太陽がいっぱい』が終わってしまうかのようだ。そして、コヴェナント号は約束の地へ。
シリーズ一気通貫レビュー(時系列順)
『プロメテウス』(2011)
リドリー・スコット監督
『エイリアン:コヴェナント』(2017)
リドリー・スコット監督
『エイリアン』(1979)
リドリー・スコット監督
『エイリアン2』(1986)
ジェームズ・キャメロン監督
『エイリアン3』(1992)
デヴィッド・フィンチャー監督
『エイリアン4』(1997)
ジャン=ピエール・ジュネ監督