『レイダース 失われたアーク《聖櫃》』(1981)
『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』(1984)
『インディ・ジョーンズ 最後の聖戦』(1989)
『インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国』(2008)
『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』(2023)
『インディ・ジョーンズ 最後の聖戦』
Indiana Jones and the Last Crusade
シリーズ3作目はインディの父親にショーン・コネリー、少年時代にリヴァー・フェニックスと豪華な布陣で文句なしの興奮。
公開:1989 年 時間:127分
製作国:アメリカ
スタッフ 監督: スティーヴン・スピルバーグ 脚本: ジェフリー・ボーム 製作総指揮: ジョージ・ルーカス キャスト インディ・ジョーンズ:ハリソン・フォード (少年時代) リヴァー・フェニックス ヘンリー・ジョーンズ:ショーン・コネリー エルザ・シュナイダー: アリソン・ドゥーディ ウォルター・ドノバン: ジュリアン・グローヴァー マーカス・ブロディ: デンホルム・エリオット サラー: ジョン・リス=デイヴィス エルンスト・フォーゲル:マイケル・バーン カジム: ケヴォルク・マリキャン
勝手に評点:
(オススメ!)
コンテンツ
ポイント
- 一般的に考えれば、シリーズ最高の娯楽大作ではないかと思う。ショーン・コネリーのパパ・ジョーンズがキャラとして秀逸。
- 笑いとアクションのバランスも文句なし。ノリと雰囲気は完全にジェームズ・ボンド映画になっているが。
あらすじ
1938年。考古学者インディ・ジョーンズ(ハリソン・フォード)は富豪ドノヴァン(ジュリアン・グローヴァー)から、キリストの血を受けた聖杯の捜索を依頼される。
最初は渋っていたインディだったが、行方不明になったという前任者が自分の父ヘンリー(ショーン・コネリー)だと知り、引き受けることに。
ベネチアで父の同僚シュナイダー博士(アリソン・ドゥーディ)と合流したインディは、父から託された聖杯日誌を頼りに、聖杯の在り処を示す手掛かりをつかむが…。
一気通貫レビュー(ネタバレあり)
豪華、三人のジョーンズ揃い踏み
インディ・ジョーンズのシリーズ第3弾は、父ヘンリーにショーン・コネリー、少年時代のインディにリヴァー・フェニックスをキャスティングするという贅沢な手段により、マンネリ化どころか、シリーズ屈指の面白さを実現。
賛否両論あった前作『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』も個人的には気に入っているが、本作の方が万人受けする内容ではないかと思う。
◇
冒頭は、インディの少年時代のエピソードから。『モスキート・コースト』(1986、ピーター・ウィアー監督)でハリソン・フォードの長男を演じたリヴァー・フェニックスが、本作では若きインディ。
盗掘者が掘り出したコロナドの十字架を博物館に収めさせようと、十字架を奪って派手な逃走劇。サーカス列車に逃げ込んで猛獣や爬虫類にまみれて奮闘する様子は、王道エンタメの本作にふさわしい雰囲気。
スパイ映画定番といえる、本筋に関係ない割にレベルの高い序盤アクションは本シリーズでもお馴染みだが、今回はそこに大人になったインディの原型となる小ネタがふんだんに採り入れられる。
なぜ蛇が苦手になったのか、なぜアゴに傷があるのか、なぜ鞭の扱いがうまいのか。憎き盗掘団のリーダー(リチャード・ヤング)には出し抜かれるが、インディ少年の根性を称え、帽子をプレゼントされる。それが今のインディのトレードマークになっている経緯も面白い。
聖杯と父を求めて
そして時代は1938年に。インディは博物館のスポンサーでもある大富豪ドノバン(ジュリアン・グローヴァー)から相談が持ちかけられる。
イエス・キリストの聖杯の所在を示す重大な遺物を手に入れたが、調査隊の隊長が行方不明になり、それを探して欲しいというのだ。
その隊長こそ自分の父、考古学者のヘンリー・ジョーンズ(ショーン・コネリー)。こうしてインディは、聖杯探しに巻き込まれていく。
聖杯(ホーリー・グレイル)などと言われると、『モンティ・パイソン』かよと思ってしまうが、まずは聖杯の隠された場所を突き止めようと、インディは一応大学で上司にあたる博物館長のマーカス・ブロディ(デンホルム・エリオット)とともにベネチアに飛ぶ。
そこで彼らを待っているのは、失踪した父の同僚シュナイダー教授(アリソン・ドゥーディ)。くたびれたオッサンかと思ったら、若く美しい女性教授。本作のヒロインだが、前作と異なり、絶叫おバカキャラとは対極的。
ベネチアの古い教会を訪ねては、そこで古文書に書かれた謎を解読して聖杯の在処に近づいていくプロセスは、後にベストセラーとなり映画化されるダン・ブラウンの『ダ・ヴィンチ・コード』を思わせる。本作がヒントになっていたりして。
ベニスより愛を込めて
インディ・ジョーンズのシリーズは元来、考古学のロマンと冒険に007のスパイ映画の面白さを融合させようというコンセプトであり、前作『魔宮の伝説』でも、それは随所に窺えたが、本作は一層濃厚に007らしさが感じ取れる。
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まずは何といっても、インディの父・ヘンリー・ジョーンズを、初代ジェームズ・ボンド役のショーン・コネリーが演じていることによる。『ザ・ロック』(1996)で彼が演じたように元諜報部員という設定でもない、ただの考古学者の役なのに、やはり007の空気が滲み出てしまうのか。
このヘンリーというキャラは、息子とも確執もあるが、ともに考古学を探究し、ただの堅物ではないお茶目な部分も多く、何とも魅力的な存在だ。
名優ショーン・コネリーをして、これまでの出演作で最も愛着のある役だと言わしめただけあって、実にいきいきと楽しそうに演じているのが伝わってくる。
父親との確執から信頼関係の再構築という流れに、かつて本作を観た時にはあまり特別な関心を持たなかったが、スピルバーグの自伝的な作品『フェイブルマンズ』(2023)を観ると、個人的な経験が影響を与えているのだなと推察できる。
◇
過去二作でもコメディ要素は意外なほど多かったが、インディが自らボケながら冒険アクションも進めるという慌ただしさがあった。
本作では父ヘンリーがナイスなボケをかましてくれ、インディが突っ込みながらアクションをこなす役割分担がうまく機能していたように思う。
更には、1作目『レイダース 失われた聖櫃』で重厚な雰囲気の真面目キャラだったマーカス・ブロディ(デンホルム・エリオット)も、本作では「自分の博物館で迷うほどの間抜けキャラ」に書き換えられ、これは結構フィット感があった。
まだまだ周辺を固める007出演俳優
ショーン・コネリー以外にも、ボンドゆかりの俳優多数。
エルザ・シュナイダー役のアリソン・ドゥーディは、インディガール以前に、『007/美しき獲物たち』(1985)で史上最年少のボンドガールを演じている。ちなみに、彼女は現在ロングラン・ヒット中のインド映画『RRR』にも出演。
また、インディを巧みに使い、聖杯を手に入れようとする悪玉の富豪ウォルター・ドノバンを演じるジュリアン・グローヴァーは、『007/ユア・アイズ・オンリー』(1981)のメイン・ヴィランであった人物。
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そして1作目でもインディの協力者だったサラー役のジョン・リス=デイヴィスは、『007/リビング・デイライツ』(1987)でKGBのトップを演じている。
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そんな訳で、ロジャー・ムーアからティモシー・ダルトンまでボンドと絡んだ俳優たちと、本家本元のショーン・コネリー登場で、完全に007の雰囲気をパクッているのである。
笑いを着実にとりながら、アクションも進行
それにしても、父子背中合わせで後ろ手を椅子に縛られたインディとヘンリーが、ライターを落として火事を起こしてしまったり、隠れていたら壁がどんでん返ししてナチスに見つかったり。
どう見てもドリフのコント級のドタバタをやっているのに、最後はきちんとアクションに仕立てて完結させているのは大したものだ。
ドイツの飛行船ツェッペリンの機内で、インディが扮した乗務員がナチスの追っ手を飛行船から突き落とし、”No tickets”と説明すると、乗客がみな慌ててチケットを差し出す場面をはじめ、コメディ演出のキレは歴代で最も良かったのではないか。
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最後に宝物の魔力によって、悪役が顔をとろけさせながら死んでいくのも、 1作目に通じるお約束だが、手作り感の強かった1作目からだいぶ技術は革新しており、今回はCG処理となる。
娯楽アクション大作として、文句なしに楽しい一作。年齢的な理由から、本作1作でショーン・コネリーは次作には出演しなかったのが、大変悔やまれる。