『アンダーニンジャ』考察とネタバレ|劇場予告の出来なら今年ナンバーワン

記事内に広告が含まれています。
スポンサーリンク

『アンダーニンジャ』

福田雄一監督が花沢健吾の人気コミックを、山崎賢人・浜辺美波の共演で映画化

公開:2025年  時間:123分  
製作国:日本

スタッフ 
監督・脚本:      福田雄一
原作:         花沢健吾

         『アンダーニンジャ』
キャスト
雲隠九郎:       山﨑賢人
野口彩花:       浜辺美波
加藤:        間宮祥太朗
鈴木:         白石麻衣
山田美月:       山本千尋
蜂谷紫音:       宮世琉弥
瑛太:        坂口涼太郎
担任:    長谷川忍(シソンヌ)
川戸愛:        木南晴夏
大野:        ムロツヨシ
猿田:         岡山天音
主事:          平田満
吉田昭和:       佐藤二朗

勝手に評点:2.5
(悪くはないけど)

(C)花沢健吾/講談社 (C)2025「アンダーニンジャ」製作委員会

あらすじ

太平洋戦争終結後、日本へ進駐したGHQが最初に命じたのは「忍者」組織の解体だった。それにより、忍者の存在は消滅したかに見えた。

しかし彼らは世界中のあらゆる機関に潜伏し、現代社会でも暗躍を続けていた。忍者組織「NIN(ニン)」の末端に所属する忍者の雲隠九郎(山崎賢人)は、暇を持て余していたある日、重大な任務を言い渡される。

それは、戦後70年以上にわたり地下に潜り続けている、「アンダーニンジャ」と呼ばれる組織の動向を探るというものだった。

レビュー(ほぼネタバレなし)

先月に『聖☆おにいさん THE MOVIE〜ホーリーメンVS悪魔軍団〜』が公開されたばかりの福田雄一監督だが、今度は忍者アクション。

さすがに毎月この監督の映画を観ていたら、正常な感覚が麻痺しそうなので、カミさんは『聖☆おにいさん』、私は『アンダーニンジャ』と、夫婦で分担したうえで、劇場に足を運ぶ。

福田雄一監督作品なのだから、「ゆるさ」「くだらなさ」を承知、というか期待で観るわけなのだが、今回は当てが外れた。

花沢健吾による同名コミックはちょっと読みかじっただけなのだが、原作にあった独特の間合いや可笑しみが、はたしてこの映画には継承されていたのだろうか

結局、お馴染みのナンセンスな笑い満載の福田カラーに染め上げられてしまったのではないか。

主人公・雲隠九郎には『斉木楠雄のΨ難』『ヲタ恋』福田監督と組んだ山崎賢人を起用。『キングダム』『金カム』などの本格アクションの主役を歴任する山崎賢人だけあって、本作も忍者アクションの場面には見応えがある。

なので、軸となるストーリー部分や、アンダーニンジャとのバトルに関しては、見せ方にキレもあり、結構楽しめた。『今日から俺は‼』の抗争シーンにも迫力はあったが、アクションと脱力系笑いの混在が、福田監督作品の売りなのだろう。

(C)花沢健吾/講談社 (C)2025「アンダーニンジャ」製作委員会

だが、この映画の場合、その笑いの方はどうかなあ。

原作よろしく、冒頭でアンダーニンジャの歴史的な背景が説明されると、いきなり福田作品の一番濃いキャラである佐藤二朗が演じる歴史小説家と、担当編集者・鈴木(実は忍者)の白石麻衣とのやりとり。

もうここからは、同じ寒いギャグを観客が笑うまで(いや笑ってないけど)何度も何度も繰り返す

佐藤二朗の粘着質なネタは彼の持ち味だから我慢するとしても、常連の双璧のもう一人、ムロツヨシが演じる、山崎賢人アパートの隣人・大野の笑いのねちっこさも凄い。

原作でも登場するネタではあるが、山崎賢人がつい笑ってしまうまでしつこく繰り返すのは福田監督の演出だろう。カネを払ってこのしつこさに付き合わされるのは勘弁してほしい。

あろうことか、今回、ヒロインとして福田組初参加の浜辺美波まで、「お前、顔に鼻くそ付いてっぞ」攻撃を山崎賢人から幾度もくらい、お笑いの洗礼を受ける。勿論可愛いのだけれど、神聖な存在が踏みにじられた感は否めないなあ。

(C)花沢健吾/講談社 (C)2025「アンダーニンジャ」製作委員会

キャスティングは相変わらず盛り沢山で華がある。忍者組織NINでは、下忍・雲隠(山崎賢人)の管理者にあたるキャリア組の中忍・加藤間宮祥太朗。彼は笑いに走らずクールな存在を貫徹。

NIN側の下忍には他に白石麻衣や若手忍者の宮世琉弥。彼は、福田組には久々参加の木南晴夏『映画 おいハンサム!!』にも出ていたか。

抜け忍となり、中立的な立場の主事役に平田満が福田ワールドからは浮いている存在で新鮮。彼もいたずらに笑いを取りに行かないのが良かった。

敵組織であるアンダーニンジャには、雲隠が潜入した学校の人気生徒、山田美月役に山本千尋。アクションが半端ないと思ったら、彼女は武術太極拳の世界にいた筋金入りの次世代アクション女優なのだ。『キングダム2』でも華麗な剣を魅せていた。

(C)花沢健吾/講談社 (C)2025「アンダーニンジャ」製作委員会

そしてもう一人の刺客が岡山天音演じる猿田『十一人の賊軍』(白石和彌監督)に続き本作と、最近アクションものが多い。彼も山崎賢人山本千尋と同様、『キングダム2』に出演。

映画は忍者組織同士の、もっと大勢参加の団体戦かと思っていたのだが、アンダーニンジャ陣営は実質この二名だけなので、バトルものとしてはスケールが小さい。

その割には、人工衛星やロケット、巨大な地下要塞といった、007シリーズのような荒唐無稽な大道具が出てくるので、作品の世界観がよくつかめない。

(C)花沢健吾/講談社 (C)2025「アンダーニンジャ」製作委員会

また、山崎賢人岡山天音が着用している、透明になるスーツやパーカーも、映像的にはB級テレビドラマのような安っぽさが全開で、「その設定必要だったか?」と思ってしまった。

原作を見ても、雲隠のパーカーは顔を隠せる忍者服の代用というだけで、透明になる機能はなかったようだが(見落としかもしれません)。

(C)花沢健吾/講談社 (C)2025「アンダーニンジャ」製作委員会

いじめられっ子の瑛太(坂口涼太郎)担任教師シソンヌ長谷川忍いじめっ子役の山時聡真柾木玲弥カメラ女子野内まる

本筋の忍者対決とはあまり関係ないのだが、学園ドラマパートに登場するメンバーと山崎賢人浜辺美波との絡みは結構楽しめた。福田雄一監督の得意とするところなのかも。

ただ、校舎内で大勢の生徒斬殺は過激すぎだったか。そもそも犯行動機もよく分からんかったし。

(C)花沢健吾/講談社 (C)2025「アンダーニンジャ」製作委員会

結局、この映画に観客が期待したのは、人気若手俳優たちによる忍者アクションだったのではないかと思う。

アクション自体がメインで、そこに隠し味程度に、いつもの福田雄一のゆるい笑いがあってくれれば満足だったはず(少なくとも個人的には)。

しかしながら、このアクションと笑いの比率は期待とは逆になっており、笑いが過半、しかもギャグ繰り返しで水増し疑惑あり。といったところが期待とのギャップだった。

ちなみに、映画のために書き下ろしたCreepy Nutsの主題歌「doppelgänger」はノリノリの曲で、映画の世界観ともマッチするのだが、エンドロールに流れるだけなのが惜しい。

本作の劇場予告は、笑い控えめで、忍者アクションとコンビニ襲撃シーン、そしてこの主題歌がコンパクトにまとめられ、実に期待値をあげる出来ばえだった。それだけに、落胆は大きい。

原作はこの先、まだまだ続いているから、もしも続編やるときには、福田雄一テイストを薄目にしてほしいなあ。