『007は二度死ぬ』考察とネタバレ!あらすじ・評価・感想・解説・レビュー | シネフィリー

『007は二度死ぬ』ボンド一気通貫レビュー05|さすがに日本人には見えない

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『007は二度死ぬ』
 You Only Live Twice

ショーン・コネリーがボンドを演じた007シリーズ第5作。ボンドガールに浜美枝、若林映子

公開:1967 年  時間:117分  
製作国:イギリス

スタッフ 
監督:        ルイス・ギルバート
原作:        イアン・フレミング
           『007は二度死ぬ』
キャスト
ジェームズ・ボンド: ショーン・コネリー
タイガー田中:         丹波哲郎
キッシー鈴木:          浜美枝
アキ:             若林映子
ディッコ・ヘンダーソン:
           チャールズ・グレイ
ブロフェルド:   ドナルド・プレザンス
大里:             島田テル
ヘルガ・ブラント:    カリン・ドール
M:          バーナード・リー
Q:      デスモンド・リュウェリン
マネーペニー:   ロイス・マクスウェル

勝手に評点:2.5
  (悪くはないけど)

あらすじ

アメリカとソ連の宇宙カプセルが次々と姿を消す事件が発生。米ソが互いに相手の仕業だと疑い緊張が高まる中、イギリス諜報部は日本から妨害ロケットが発射されていることを突き止め、ジェームズ・ボンドを現地へ送り込む。

ボンドは日本の諜報機関に所属するタイガー田中(丹波哲郎)と手を組んで捜査を進めていくが、事件の裏にはまたもやスペクターの陰謀が隠されていた。

一気通貫レビュー(ネタバレあり)

シリーズ第5作目でついにボンドの活躍の場が日本に。各国の大都市や観光地を転々として大暴れするのはこの作品の特徴であるが、MI6の本拠地ロンドンを登場させずに、ほぼ一つの国(本作では日本)で撮りきったケースは珍しい。

映画は冒頭、米国の宇宙船ジュピター16号が謎の飛行物体に捉えられ消失する事件が起きる。国際会議ではソ連を疑うが、英国はソ連を擁護し、飛行物体が飛び立ったと思われる日本周辺を捜査するようボンドに命じる。

宇宙空間の特撮は60年代としては上出来な部類なのか。世界規模の作品でこの程度なら、当時すでに『ウルトラマン』を大ヒットさせていた円谷プロの厳しい予算内での特撮技術は瞠目すべきレベルといえる。

ボンドは香港のホテルで中国人女性リン(ツァイ・チン)に折り畳みベッドに挟まれて、銃撃され殉職する。ここでタイトル登場。

歴代最も情けないアヴァンタイトルの展開だが、これは作戦のための偽装工作で、死んだほうが日本で活動しやすいからのようだ。ここで一度死ぬことがタイトルにからむ。

同名のイアン・フレミングの原作は、ボンドが芭蕉にならって詠んだ俳句

「人は二度しかない 生まれたときと 死に直面したときと」

からきており、映画とは由来が異なる。

ちなみに原作と映画は、日本を舞台にして敵がブロフェルド、ボンドガールが海女で、CIAのかわりに秘密警察のタイガー田中が協力といった要素は共通するが、それ以外は大分異なる。

映画は日本人からみれば荒唐無稽な点が目につくが、この点は原作も引けを取らない

小説では前作でブロフェルドに新妻を殺された失意のボンドは失敗続きで仕事のモチベーションも下がり、心配したMが暗号解読機の奪取のミッションを最後のチャンスにとボンドに与え、日本に送り込む。

日本で調査を進めるうちに島に潜む相手がブロフェルドだと判明し、ボンドは復讐に燃えるのだ。

映画は原作と順番が異なるので、本作の時点ではまだボンドに殺される妻はなく(偽装結婚はするが)、次作『女王陛下の007』まで待たなければならない。

話の筋立てはよいが、やる気のない序盤のボンドや、轟次郎なる日本人になりすまして行動する後半もコミカルに思える。妙に日本のネタが細かく、固有の企業名や商品名が出てくるのも笑える。

(C)2023 Danjaq, LLC and Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc.
YOU ONLY LIVE TWICE (C) 1967 DANJAQ, LLC AND METRO-GOLDWYN-MAYER STUDIOS INC.

本作の魅力は、何といっても日本がロケ地となっていることだろう。

銀座のネオン街は風景だけかもしれないが、蔵前国技館の升席でボンドが相撲観戦をしたり、敵のフロント企業大里化学の本社屋がホテルニューオータニだったりと楽しませてくれる(『人間の証明』にも登場したっけ)。

外国人目線で日本の町をとらえ、そこにアクションが繰り広げられる面白さとオリエンタルの妖しさ、リドリー・スコット監督が大阪で撮った『ブラックレイン』に繋がるものを感じる。

今回活躍するスポーツカーは、ボンドが運転しないのでボンドカーではないのかもしれないが、幻の名車トヨタ2000GT。デザインも性能も、アストンマーチンに負けてない。

ピンチになるとこの車で現れるアキ(若林映子)に助けられ、赤坂から代々木第一体育館駒沢オリンピック公園と、東京オリンピックで整備された東京の名所を選んでカーチェイス。

たどりついた無人の地下鉄・中野新橋駅で彼を待つのが丹波哲郎扮するタイガー田中。いつものCIA所属フェリックス・ライターに代わって、ボンドを援護する公安の大物。なかなかダンディだ。

映画では彼に会う前にボンドが訪ねたディッコ・ヘンダーソン(チャールズ・グレイ)はあっけなく暗殺されてしまい、存在意義がよく分からない。

それにしても、タイガーが使う地下の秘密列車に丸の内線が登場したのには驚く。なるほど、無骨な地下鉄にしては、赤いボディにらせん模様がハイセンスではある。スパイに地下の秘密列車なんて、『キングスマン』みたいだ。

(C)2023 Danjaq, LLC and Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc.
YOU ONLY LIVE TWICE (C) 1967 DANJAQ, LLC AND METRO-GOLDWYN-MAYER STUDIOS INC.

60年代の日本の生活様式は欧米にとってはまだよく知られておらず、日本髪の芸者やら忍者やら、誤解含みの演出が多くみられるのは本作も例外ではない。

大英帝国から来たボンドがどこに言っても日本女性たちに囲まれて、濃い胸毛で魅了するという前時代的な描き方も、当時はあまり違和感が持たれなかったのだろう。

日本がロケ地になっていること以外にも、本作には過去にない特徴が多い。

タイトルバックの映像も音楽もそれまでのパターンに比べると冴えないものに思えるし(個人の印象です)、アクションシーンで流れる軽快な音楽も、どこか野暮ったい。

You Only Live Twice (1967) title sequence

いつものテーマソングも後半で徐々に流れ出すが、音楽の使い方はどこかギクシャクしている印象。自慢のスパイ小道具も、わざわざQを来日させてリトルネリーなる小型ヘリを登場させるが、絵的にはいまひとつ冴えない。

スーツ姿でジェットパックを背負って空まで飛んだ実績もあるので、今更小型ヘリや煙草型爆弾では、サプライズに乏しいのだ。

(C)2023 Danjaq, LLC and Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc.
YOU ONLY LIVE TWICE (C) 1967 DANJAQ, LLC AND METRO-GOLDWYN-MAYER STUDIOS INC.

ボンドガールキッシー鈴木役の浜美枝が有名なので、彼女がメインだと思っていたが、映画的には、前半で登場するもう一人のボンドガール、アキ(若林映子)の方が目立っていたのが意外。浜美枝は英語がネックになったとか。

ボンドガールに選出、しかも日本人初というのは当時相当騒がれたのではないかと思うが、浜美枝はそういう騒がれ方はあまりお好きではない女優のようで好感が持てる。

清楚な雰囲気の美しさに加え、飢えた獣のようなボンド相手に身持ちが固いところも、キッシーの魅力(増税メガネの首相ではない)。

ボンドガールは二人でも、『あまちゃん』と違ってアキではなく海女はキッシー。でも実際作品内で潜水してたのはショーン・コネリーが同伴した奥さんだったというのは笑えた。

You Only Live Twice • Theme Song • Nancy Sinatra

本作は終盤、火山の火口とみせかけた秘密基地に侵入し、大勢の忍者部隊とともにブロフェルドをボンドが追い詰める。

離島の化学工場での対決シーンは一作目『ドクター・ノオ』に比べると、だいぶレベルが上がった。火口を偽装した天井の開閉はじめ、セットの作り込みも見応えがある。

忍者部隊は正直お子様向け演出だったが、ペルシャ猫を抱きながら、宿敵ブロフェルドがついに正面から顔見せしたのには感動。歪んだ片目が怖い。

(C)2023 Danjaq, LLC and Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. YOU ONLY LIVE TWICE (C) 1967 DANJAQ, LLC AND METRO-GOLDWYN-MAYER STUDIOS INC.

演者はドナルド・プレザンス。過去作はずっとアンソニー・ドーソンだったが、顔を見せる段になって切り替わったのか。

本作は日本人以外にはシリーズの中ではあまり見るべきものがなく、これで出演を最後にするつもりだったショーン・コネリーの感じているマンネリ感も分からなくはない。

ただ、一旦次回作で離れはするが、彼はまた復職することになる。