『マルサの女2』 今更レビュー:前作から一気にシリアス路線に切り替えて、バブル経済に踊る日本に斬りこむ板倉亮子!

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『マルサの女2』 

あの国税局査察官、板倉亮子がマルサカットの寝癖頭を振り立てて帰ってきた!今度のターゲットは宗教法人。

公開:1988 年  時間:127分  
製作国:日本

スタッフ 
監督・脚本:   伊丹十三
音楽:     本多俊之

キャスト
板倉亮子:   宮本信子
花村統括官:  津川雅彦
佐渡原課長:  丹波哲郎
伊集院:    大地康雄
三島:     益岡徹
金子:     桜金造
鬼沢鉄平:   三國連太郎
赤羽キヌ:   加藤治子
受口繁子:   柴田美保子
猫田:     上田耕一
チビ政:    不破万作
サダオ:    きたろう
奈々:     洞口依子
漆原委員長:  中村竹弥
猿渡代議士:  小松方正

勝手に評点:3.5
(一見の価値はあり)

©1988 伊丹プロダクション

あらすじ

バブル経済のさなか、東京では地上げ屋たちが熾烈な攻防戦を繰り広げていた。

キャリア官僚の三島(益岡徹)を部下に従えた板倉亮子(宮本信子)は、地上げ屋の脱税を追求するうちに、いくら金を儲けても税金がかからない法律を盾に暗躍する、怪しげな宗教法人にたどり着く。

宗教活用以外の所得に対しては税金がかかるはずだと、亮子は代表者・鬼沢鉄平(三國連太郎)に迫る。

今更レビュー(ネタバレあり)

今度の標的は怪しい宗教法人

伊丹十三監督の大ヒット作となった『マルサの女』の翌年に公開された続編。時代は80年代が終わろうとするバブル経済の真っただ中、消費税の導入で盛り上がっていた頃だ。

まだブルははじけていない時期に、地上げ屋が横行し、政治家や大企業も裏では錬金術に手を染めながら日本の経済を回している、そんな時代の姿に伊丹十三早くも警鐘を鳴らしている、それも極上のエンタメとして。

国税局査察官・板倉亮子(宮本信子)の今回のターゲットは、納税を免れている宗教法人「天の道教団」を隠れ蓑に私腹を肥やす代表者の鬼沢鉄平(三國連太郎)。裏では超高層ビル建設のための用地の立ち退き交渉で暗躍している。

鬼沢の妻である赤羽キヌ(加藤治子)教祖に祀り上げ、怪しげな宗教で信者から寄進を巻き上げる新興宗教。

さすがに施設内で殺人やテロ計画は登場せず、ただカネの亡者が運営する団体であるが、カルト教団を取り上げた映画は他にあれど、オウム真理教事件の勃発する何年も前に、このような宗教団体をメインに映画を作る先見性は大したものだ。

お馴染みの国税局査察官たち

本作は子供たちが地上げ屋の水死体を発見するシーンから始まる。なかなかにリアルな見栄えで、今までの伊丹監督の作風とやや違いを感じる。

そこから、代議士や大手商社、銀行の幹部などの密談が始まり、西新宿の超高層ビル建設のための新しい地上げ屋探しを、という流れになる。

前作では、途中から税務署員から国税局査察官に引き上げられた板倉亮子、相変わらず精力的な仕事ぶりが窺える。

直属の上司に花村統括官(津川雅彦)、また同僚には伊集院(大地康雄)金子(桜金造)とお馴染みのメンバーに加えて、今回亮子の配下に新人の三島(益岡徹)がつく。

三島は東大卒のキャリア組だが、つい<僕の学校>といってしまう口癖を、自慢するなら堂々としろと正され、次第に良きバディとなる。

今では官僚や警察の上司役イメージの益岡徹を、キャリア官僚だが新人という絶妙な役に据えるのが面白い。

なお、マルサのオフィスは今回、平和島にあるヤマトインターナショナルの東京本社が使われている。その特徴的なデザインは時代を超えて今なお流麗で未来的だが、マルサはもっと昭和然とした<ビルヂング>で働いているのではという先入観あり。

©1988 伊丹プロダクション

まるで執念の捜査の刑事ドラマ

国税局査察部は強制調査権があり、一方税務署の調査は任意調査。今回亮子は教団施設の前で港町税務署時代の後輩(マッハ文朱加藤善博)と偶然会い、一緒に税務調査に潜り込む。

それは身分詐称の違法行為だと花村に後で叱責されるのだが、この時、施設内で教祖の超高額な毛皮を何着も発見し、「これは私物なので信者からの無税の寄進にはなりません!」とズバズバ切り込む。

前作では多く見られた、脱税者に向ける、このスカッとする亮子の啖呵は、残念ながら、このシーンくらいしかない。

では、亮子は本作で何をしているのか。冒頭の張り込みからずっと、代表者である鬼沢の裏帳簿や隠しオフィスのありか、裏稼業の実態を探っているのだ。

「天の道教団」の創設時の書類を調べるうちに、たどりついた元僧侶に笠智衆まで登場。この老人が、あの時は1万円もらって僧服着て写真撮っただけだと昔を語ることで、宗教団体の成り立ちに疑義が生じる。

一人の容疑者を、じわりじわりと追い詰めていくそのプロセスは、まるで刑事ドラマであり、前作にみられたコミカルさはだいぶ薄まっている。

それも、そうだろう。だって容疑者は変幻自在の演技をみせる三國連太郎。そして、何と査察部を仕切る管理課長に今回登場するのはなんと丹波哲郎だ。

死後の世界への関心の有無はともかく、査察部の課長としての立ち振る舞いは『Gメン ’75』のそれであり、これなら泣く子も黙るガサ入れになる。宮本信子を除けば、関係者はみな刑事ドラマに出てきそうな顔ぶればかりだし。

©1988 伊丹プロダクション

コメディかシリアスか不思議なバランス

教会施設の祭壇の裏の隠し階段を昇っていくと秘密の部屋がある。そこを査察官が登ろうとすると、激しい頭痛に襲われ、みな戻ってくる。

信者はみな、祟りだと騒いで警告するのだが、当然インチキで、実は高周波数が巨大スピーカーから流れている。

すぐに分かるオチなのに、次々と査察官が階段を昇っては、フラフラと頭を抱えて戻ってくるのを繰り返す。ここはまるでドリフのコントだ。

そうかと思えば、押収された資料を奪還しに査察部の倉庫に侵入し亮子ともみ合いになる緊迫した場面を、きたろうが笑いなしで演じる。

あるいは、いじられキャラのチンピラのチビ政(不破万作)を、『タンポポ』の役所広司ばりに白スーツ血まみれでカッコよく死なせたりと、全体としては不思議なバランスで構成される。

クライマックスは二つの取り調べ

ドラマとしての盛り上がりは、終盤に実施される二つの取り調べだろう。

まずは、落としの花村統括官が、取調室で猿渡代議士(小松方正)を任意で事情聴取し、政治家仕事がいかに大変でカネがかかるか、国のためを思い仕事をする良い政治家ほど苦しいかを知っていると語り、自分はあなたの理解者だと力説。猿渡は落ちる。

そして鬼沢への取り調べ。のらりくらりと質問攻撃をかわす鬼沢。

この国には絶対的なオフィス面積が足らない。それには高層ビルを建設するしかないが、大企業は手を染めない。誰が地上げの汚れ仕事を引き受けるよ。俺はお国のためにこの仕事をしているんだ

当時、実際の地上げ屋たちにも、同じような思いがあったかもしれない。

だが、その鬼沢も取調室の窓の外からヒットマンに狙われていた。チビ政や、鬼沢の腹心の部下猫田(上田耕一)は、トカゲのしっぽ切りで何者かに殺された。鬼沢もまた、その標的の一人だったのだ。

エンディングはエンタメ路線ではない

エンタメ作品として気持ちよく終わった前作と異なり、本作はダークなエンディングだ。

亮子のおかげで命拾いした鬼沢は、結局巨額の財産を隠していた自分の墓で、もうすぐ出産する若い愛人奈々(洞口依子)とともに高笑いする。

また、地上げの舞台となった超高層ビルの地鎮祭では、この事案の首謀者である、大手商社や銀行の幹部それに代議士たちが、今回も無事に土地転がしで富を得たことで楽しそうに談笑している。

それを悔しそうに金網越しに睨んでいる亮子ら査察官たち。マルサの蟷螂の斧では、巨悪はつぶせないということか。

高らかに響く彼らの耳障りな笑い声本多俊之のお馴染みのテーマソングが、この浮足立っていた時代をうまく言い表しているように聴こえてくる。