『アンブレイカブル』考察とネタバレ!あらすじ・評価・感想・解説・レビュー | シネフィリー

『アンブレイカブル』今更レビュー|あんたは大惨事の唯一の生存者だよ

記事内に広告が含まれています。
スポンサーリンク

『アンブレイカブル』
 Unbreakable

M・ナイト・シャマラン監督がブルース・ウィリスとサミュエル・L・ジャクソンの共演で贈る、超常現象ストーリー。

公開:2001 年  時間:106分  
製作国:アメリカ

スタッフ 
監督・脚本:  M・ナイト・シャマラン

キャスト
デヴィッド・ダン: ブルース・ウィリス
イライジャ・プライス:
      サミュエル・L・ジャクソン
オードリー・ダン:   ロビン・ライト
ジョセフ・ダン:
    スペンサー・トリート・クラーク
イライジャの母:
       シャーレイン・ウッダード

勝手に評点:2.5
(悪くはないけど)

ポイント

  • アイデアも配役も悪くないとは思うよ、M・ナイト・シャマラン監督。『シックスセンス』の次作のプレッシャーには同情するけど、この映画は映像があまりにショボい。低予算の初期作品ならありだけど、高額ギャラの監督にはアンバランスな出来栄え。

あらすじ

フィラデルフィアで乗客・乗員131人が死亡する悲惨な列車事故が発生し、警備員のデヴィッド(ブルース・ウィリス)だけが奇跡的に無傷で生き残った。

そんな彼の元に、イライジャと名乗る人物から不審な手紙が届く。

コミックギャラリーのオーナーであるイライジャ(サミュエル・L・ジャクソン)は生まれつき骨形成不全症という難病を抱え、これまでの人生で数え切れないほど骨折を繰り返してきた。

彼は自分とは対極に位置する頑強な人間が存在すると考えており、デヴィッドこそが不滅の肉体を持つ<アンブレイカブル>であると確信していた。

デヴィッドはイライジャの話を一蹴しながらも、思い当たる節がいくつもあることに気づく。

今更レビュー(まずはネタバレなし)

『シックスセンス』の呪縛

M・ナイト・シャマラン監督の出世作『シックスセンス』に続く作品であり、前作と同じくブルース・ウィリスが主演、舞台となる町もフィラデルフィアを踏襲。

別に二番煎じをねらったわけではないだろうが、多くの観客が前作のような鮮やかな<衝撃のラスト>を期待するなかで、同じような設定や雰囲気の映画を撮るのは、自らハードルを上げに行っている。

タイトルの<アンブレイカブル>は壊れない主人公をさすが、その後に登場する『エクスペンダブルズ(消耗品)』とか『アンブロークン 不屈の男』などといった映画に近いニュアンスだろうか。

本作は、アンブレイカブルな主人公と、ウェルブレイカブルな人物との邂逅を描いた作品。

主人公のデヴィッド・ダン(ブルース・ウィリス)は大学のスタジアムの警備員。列車が暴走・脱線する大事故に乗客として偶然乗り合わせるが、130名が事故死する壮絶な事故のなかで、デヴィッドだけが無傷で生き残る。

列車で隣の席に若い女性が座ると、結婚指輪をはずして積極的に話しかけるデヴィッド。口説かれても黙って指輪を見せた『ダイハード』の愛妻家の面影はない。

『シックスセンス』に続きアクション俳優という肩書をはずしているブルース・ウィリスは、シャマラン監督のもとで新境地を確立しつつある。

ミスター・ガラスと呼ばれた男

「あなたは人生でこれまでに何日病気になった?」

突如デヴィッドが何者かから受け取った手紙。そこで彼は半生を振り返り、病気になった記憶が殆どないことに気づく。

そんな彼とは対照的な人物がいる。映画の冒頭で両手両足が骨折したまま生まれてきた、壊れやすい男、イライジャ・プライス(サミュエル・L・ジャクソン)

骨形成不全症の難病で子供の頃から<ミスター・ガラス>の異名で呼ばれる彼は、アメコミ好きが高じてコミック関連の画商となる。デヴィッドに手紙を出したのはこのイライジャだ。

ブルース・ウィリスサミュエル・L・ジャクソン『ダイハード3』以来の豪華な共演。

サミュエル・L・ジャクソンは実生活でもイライジャ並みのアメコミ・マニアだそうで、この役は確かにハマっている。もっとも、アメコミの世界に彼が登場すると、今ではマーベル映画のニック・フューリーにしか見えないけど。

自分の呪われたような多難な運命から、正反対の<アンブレイカブル>な強運な人物がいるのではないかと、大災害の奇跡の生き残りを探し求めるイライジャ。

そして、そんな彼から与えられた気づきによって、自分の運命を知り何をなすべきかを考え始めるデヴィッド。

独創的なストーリーは、長年超常現象を扱い続けるシャマラン監督ならではのものだと思う。

このショボい映像はなに?

前作の人気のおかげで、興行成績は良かったはずだが、では、この作品は面白かったかと言われると、やや首をひねってしまう。

なんの予備知識もなく『シックスセンス』を観てシャマラン作品に魅了された多くの映画ファンが、次作にも同様のサプライズを期待したことは想像に難くなく、不利な戦いを強いられたことには同情の余地がある。

だが、私が本作を久々に観直して思ったことは、この脚本で映画を撮るのなら、もう少し映像にカネをかけないとあまりにショボいということ。

『シックスセンス』の倍近い製作費をかけているはずなのに、前作の方がゴージャスに見えるのはなぜだろう。

前作の大ヒットで、シャマランは本作の脚本料と監督料で実に1千万ドルのギャラをもらうまでに出世した。スター俳優の共演となれば、出演料も高騰しただろう。

その余波なのか、本来堂々みせるべきスペクタクルなシーンが、カット割りの工夫で乗り切る冴えない映像に留まっている。

大惨事の列車事故はテレビのニュースに小さくうつる鉄道模型を転がしたような画像にとどまり、飛行機事故ホテル火災も台詞だけで匂わせる節約演出

ヒーローとして覚醒したデヴィッドが人の集まる駅で乗降客の真ん中に立つシーンも、あきらかにセットを分かる貧弱な駅でがっかりする。

デヴィッドの勤務地がペンシルバニア大学のスタジアムだとすれば、駅はアムトラックフィラデルフィア駅であるべきで、あそこでロケすればもっと奥行きのある絵が撮れたはず。

ちなみに本物の駅のゴージャスな雰囲気は、ハリソン・フォード『刑事ジョンブック 目撃者』を見ていただくとよく分かる。

『シックスセンス』の前ならともかく、大ヒットの後にこのショボい映像では少々萎える。

デヴィッドを英雄視して疑わない息子ジョセフ(スペンサー・トリート・クラーク)はいい演技をみせるのだが、この父子関係はどうしても前作でブレイクした子役ハーレイ・ジョエル・オスメントを思い出させるのでお気の毒。

また、デヴィッドの妻オードリー(ロビン・ライト)は人物描写が少ないために、この夫婦の関係がイマイチ分かりにくいのも残念。

個人的には物足りなかった作品なのだが、シャマラン監督には相当の思い入れがあったらしく、本作から15年を経て、『スプリット』(2016)そして『ミスター・ガラス』(2019)へと続いていくことになる。これは想像しなかった展開だ。

今更レビュー(ここからネタバレ)

ここからネタバレしている部分がありますので、未見の方はご留意ください。

タイツ姿のさえないヒーロー

かつて、藤子・F・不二雄原作の福田雄一ドラマで『スーパーサラリーマン左江内氏』というのがあった。堤真一がタイツ姿の冴えない中年ヒーローを演じる。本作で自分の才能に目覚めたデヴィッドがフードを被ってヒーローとなる姿がそれに重なる。

死なないことと怪力、それから鋭い知覚くらいしか武器はない。やれることといえば、犯罪者に匿われた女性を部屋から救出する程度で、アメコミヒーローとしては地味なものだ。

相手の身体に触れることで、その人物が過去に犯した犯罪行為がデヴィッドの頭にフラッシュバックするという特殊能力。

これも映画やドラマの世界では珍しくはない設定だが、犯罪行為を知るばかりで、さほどデヴィッドの行動には繋がっていない気はする。

この能力は、相手の心が読めてしまうのと同様に、持っていても気持ちが荒むだけなのであまり羨ましくはない。

残念な点はまだある

<アンブレイカブル>なデヴィッドも過去に入院をしたことが二度ある。ひとつは子供の頃、プールの事故で溺れかけた。

これは、デヴィッドの唯一の弱点は水が肺に入ることだというイライジャの説明に沿うもので、本作でもヒーローとなったデヴィッドは水のせいで死にかける。

だが、この設定はストーリーに面白味を加えたようには思えなかった。

もう一つの入院は、学生時代にオードリーを乗せて派手な自動車事故を起こし、足を痛めてフットボール選手を断念したときのものだ。

これなどは、堅実な生活を望むオードリーと結婚したいがために、当時有望選手だったデヴィッドが、わざと事故を起こして自然と引退できるように仕向けたものだった。

そんなヤツがヒーローになってしまうことにはやや抵抗がある。

とはいえ、イライジャと出会ったことでヒーローとして活動をし始めるデヴィッド。この二人がタッグを組むことで、何か新しい動きが生まれるのだろうと思っていたら、ふたりが握手した瞬間から、展開は予想外な方向に。

アメコミの世界では悪役はヒーローとは正反対の設定で、ニックネームがついているものだ、か。なるほどね。

<ミスター・ガラス>という愛称は、インパクトに欠けるせいか、後日映画のタイトルになるまですっかり忘れていた。