『ゼンタイ』考察とネタバレ!あらすじ・評価・感想・解説・レビュー | シネフィリー

『ゼンタイ』今更レビュー|全身タイツ姿をした現代の箱男たち

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『ゼンタイ』

橋口亮輔監督によるオムニバスの短編映画。ゼンタイとは全身タイツの愛好家をいうらしい。

公開:2013 年  時間:62分  
製作国:日本
 

スタッフ 
監督・脚本:       橋口亮輔

キャスト
<草野球>
中島歩・篠原篤・森優太・比佐仁・八木橋努・鎌滝秋浩
<コンパニオン>
香取海沙・田川可奈美・篠原ゆき子・華みき・魚谷佳苗・高須和彦・妻鹿益己
<発泡酒>
加藤圭・三月達也・沖野竜也・吉田健一・江ばら大介
<レジ店員>
成嶋瞳子・椎名香織・掛川陽子・川村絵梨・駒井温子
<ゼンタイ>
山下晃司・松下貞治・伊藤公一・都竹田青・岩崎典子・南波美沙・岡本さと子・瑛蓮
<主婦>
西野まり・横山美智代・大野百合子・藤原留香・水野小論・横嶋安有美・宮内妙子・宮城芙美乃・中村梨那・桑原由樹

勝手に評点:2.0
(悪くはないけど)

(C)2013映画「ゼンタイ」を応援する会

あらすじ

性別も外見も職業も異なる人々が、全身タイツをまとうことで一様に解き放たれ、自由を獲得していく。

俳優たちのエチュード(即興演技)をもとに作られた6編のエピソードで構成され、それぞれのエピソードがリンクしながら、やがてゼンタイの人々がカラオケボックスで開くオフ会のエピソードへと集束していく。

今更レビュー(ネタバレあり)

不平不満を言い合う日常のオムニバス

『ぐるりのこと。』橋口亮輔監督によるオムニバスのコメディ映画。『ゼンタイ』とは、全身タイツ愛好家のことをいうらしい。ビジュアル的には相当にインパクトがある。

ワークショップで4日間行った俳優の即興劇に橋口監督が以前から温めていたという「ゼンタイ」を絡めてまとめあげている。撮影期間は3日間。予算は220万円という低予算作品。まあ、見ればそうだとわかる。

アイデア勝負の短編映画だが、正直キレのあるストーリーがある訳ではなく、文字通り俳優の即興演技に委ねられている。大勢の俳優が登場するが、みんなナチュラルに演じていて、演技力という点では不足はない。

各エピソードの雑感

はじめの「草野球」というエピソードでは、メンバーの脱退で選手が9人揃わず、みんなで部屋の中であれこれと今後の打開策を議論している。

バカバカしい内容を真剣に語り合う様子がほぼワンカットで撮られ、この話は楽しく観た。本作が映画初出演の中島歩や、本作後『恋人たち』(2015)に主演する篠原篤が野球チームのメンバーにいる。

(C)2013映画「ゼンタイ」を応援する会

男性のみのエピソードが終わると、今度は「コンパニオン」。スーパーの開店イベントに集まったコンパニオンの女性たちの楽屋でのいがみ合い。

先ほどの話に比べると、ガールズトークには毒気だらけで聞いていても気分が殺伐とする。コンパニオンの中に篠原ゆき子発見。

(C)2013映画「ゼンタイ」を応援する会

続いては「発泡酒」。仕事を終えて居酒屋で酒を飲む作業着姿の男たち。発泡酒を頼もうとする仲間を軟弱だと散々罵倒した挙句に、飲む前から泣き上戸になる男。くだらないけど、まあ楽しい。

(C)2013映画「ゼンタイ」を応援する会

続く「レジ店員」では、さっきの「コンパニオン」に出てきたスーパーの新装開店で、ライバル店のレジ店員がみんな待遇に不満をもって店を移ろうかと言い出す話。嫌われものの主任に『恋人たち』に主演した成嶋瞳子

男性エピソードとは対照的に、女性エピソードはみな悪口の言い合いで気が重くなるし、マンネリ気味だ。

(C)2013映画「ゼンタイ」を応援する会

そしてゼンタイに繋がる

そしてようやく登場するのが「ゼンタイ」。カラオケボックスに集まった男女のゼンタイたち。思えば、本作で男女が仲良く語り合うエピソードはこれだけだ。

戦隊ヒーロー・デンジマンのコスプレ男をはじめ、オフ会で集まった男女がさまざまなタイツ姿で語り合う。全身タイツで肉体を覆い、「◯◯でなければならない自分」「◯◯だと思われている自分」をゼロにする事で、少しだけ自由になるゼンタイたち。

顔を隠しているが、これまで登場してきた各エピソードから流れ着いた男女がこの場で本来の自分を束の間取り戻す。ゼンタイが数人集まっただけで、絵的にこんなに面白くなるとは驚いた。

ただ、その場所がカラオケボックスに限られているのは勿体ない。海に行った映像が、PCの動画として登場するが、それだけでは物足りない。

そもそもポスタービジュアルでは、街中を歩いているではないか。あの映像が本編にないというのは、どういうことか。大いに不満だ。

(C)2013映画「ゼンタイ」を応援する会

そして締めくくり

そして同じカラオケボックスの別の部屋で、最後のエピソード「主婦」が始まる。

「なんか、モジモジ君みたいな格好の変態が集まってたよ」などという女性たちのボックスでは、勝手にレシピをブログに掲載したことでトラブルになっている主婦ブロガーと編集スタッフ。

別の部屋には、盗まれたレシピを考案したカリスマ主婦的なオバサンが取り巻き連中と歌っていて、そこに謝罪に行く話。ここでも女性メインの話はいがみ合い。

(C)2013映画「ゼンタイ」を応援する会

なんでこれを最後に持ってきたのかと思う後味の悪さだが、店の廊下でゼンタイの女と鉢合わせになり、タイツ一枚で「何でもない者になっている」ことのありがたみをしみじみ語る。

普段の生活がやりきれないからこそ、その捌け口である「ゼンタイ」のエピソードが盛り上がるわけで、だから不平不満が積み重なるその他のエピソードが必要となる。

それは分かるのだが、やはり全編を振り返ると、どれもこれも重苦しい。特に女性主人公のエピソードは総じて後味が悪い。

ゼンタイの姿からは、もっと明るく陽気な作品を勝手に想像していたが、だいぶギャップがあった。この重苦しさは、出演者も重複する橋口亮輔監督の次作『恋人たち』に通じているのかもしれない。