『探偵はBARにいる』
『探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点』
『探偵はBARにいる3』
探偵はBARにいる3
公開:2017 年 時間:122分
製作国:日本
スタッフ 監督: 吉田照幸 脚本: 古沢良太 原作: 東直己 『ススキノ探偵シリーズ』 キャスト 俺: 大泉洋 高田: 松田龍平 岬マリ: 北川景子 北城仁也: リリー・フランキー 諏訪麗子: 前田敦子 原田誠: 前原滉 松尾: 田口トモロヲ 相田: 松重豊 波留: 志尊淳 源ちゃん: マギー 峰子: 安藤玉恵 フローラ: 篠井英介 教頭先生: 正名僕蔵 マネージャー:野間口徹 桐原組組長: 片桐竜次 モンロー: 鈴木砂羽
勝手に評点:
(一見の価値はあり)
あらすじ
札幌にあるアジア最北の歓楽街・ススキノ。この街の裏も表も知り尽くす探偵(大泉洋)のもとに、相棒である高田(松田龍平)が人探しの依頼を持ち込んでくる。
失踪した女子大生・麗子(前田敦子)について調査を開始した探偵たちは、モデル事務所の謎めいた美人オーナー、マリ(北川景子)に翻弄されるうちに、いつしか大きな事件に巻き込まれていく。
一気通貫レビュー(ネタバレあり)
前田敦子がセンターなのかと
三作目もおふざけから始まるのかと思ったら、本作から吉田照幸監督に交代したことと関係があるのか、いきなりシリアスな展開。毛ガニを載せたトラックの運転手が、雪原で道路を塞いでいたクルマに近寄り射殺される。
トラックの助手席には女子大生の諏訪麗子(前田敦子)。自分も撃たれるかと震えていると、犯人は彼女に気づかず、去ってしまう。
そしてようやくおふざけに場面転換。フローラ(篠井英介)の店で停電中にホステスの胸を触った犯人をさがす探偵(大泉洋)。真犯人は風俗好きの教頭先生(正名僕蔵)。
高田(松田龍平)の大学後輩・原田(前原滉)の依頼で、失踪してしまった彼女を探してあげることになる探偵。つまりはそれが前田敦子なわけだが、今回のヒロインということではなかった。
◇
麗子はモデル事務所ピュアハートに所属しているのだが、これが実態は売春組織で、それを差配している岬マリ(北川景子)が、今回のマドンナなのだ。その辺のからくりを暴くのに、先ほどの教頭先生が役に立っており、おふざけネタもバカにしたものではない。
ついに高田に強敵現る
ピュアハートのケツ持ち組織「北城グループ」を仕切るのは北城仁也(リリー・フランキー)。マリは彼に使われている身であって、悪女というわけではなさそうだ。マドンナが善人キャラなのは、本シリーズのお約束。
奪われた毛ガニは密輸品で、甲羅の中にはシャブが隠されているらしい。だから北城は血相を変えて、毛ガニの行方を捜している。冒頭の強奪殺人事件に、はたして探偵とマリはどう関わっていくのか。
松尾(田口トモロヲ)や相田(松重豊)ら、お馴染みのメンバーの協力を得て真相に近づいていく探偵と高田、そして彼らを襲う北城たち。これまでと違い乱闘が劣勢なのは、ついに高田よりも強い空手の使い手・波留(志尊淳)が現れたからだ。
「これはダメだ。俺より強い」
初対戦後、あっさり負けを認め、弱音を吐くところが高田らしくていい。
ただ、その後に彼は鍛錬し、終盤では波留とリベンジマッチするのだ。ワイヤーアクションを見慣れた目には、ちょっと派手さに欠けるアクションにも見えるが、それでも本業が俳優の者同士の対戦としては、結構見応えがあった。
だからこそ、このガチンコ勝負の決着に笑いの要素を入れてしまったのは、ちょっと松田龍平と志尊淳には気の毒なのではないかと同情したくなる。
ハードボイルド濃度アップ
探偵の大泉洋は、回を追うごとにハードボイルド濃度が増しており、本作はシリアスさと笑いの加減もいい。サッポロファクトリー(ショッピングモール)での北城VS探偵・マリ組のカネとシャブの交換。
会場には北海道日本ハムファイターズ・栗山監督のトークショーで人が集まっている設定。監督も市長も本物登場でさすがご当地ムービーだ。
◇
蛇足ながら、今回のシリーズ三部作一気通貫レビューは、全てご当地札幌滞在中に観直しており、ススキノは勿論、ラーメン横丁や路面電車、羊ケ丘牧場、大倉山からサッポロファクトリーまで、日中に訪れた多くの場所が舞台になっている。その臨場感で、つい評価も数割増しになっている感は否めない。
本作のクライマックスは、ファクトリーでのマリの想定外の単独行動。そのせいで、物語はもの悲しい結末を迎える。
そして、本件解決後にはしばし北大を離れ、ニュージーランドの酪農を学ぶことになっている高田。探偵に餞別をもらい、何も言わずに通りを反対方向に歩き出す二人がハードボイルドだ。
だが、さすが本シリーズ。ちゃんと結末には笑いを用意している。
「江別?札幌から電車で20分、通勤圏内じゃねえかよ。餞別返せ」
どうやら、ニュージーランドから来た酪農家に教わるということらしい。
◇
以上、三部作全体では、回を追うごとに脂がのってきた感じがある。今回はポンコツ車ネタも気にならなかったし、笑いの味付け度合いも話の展開もいい感じだった。でも、なんで三作目はサブタイトルを無くしたんだろうな。どうにも座りが悪い。