『007 ゴールデンアイ』考察とネタバレ!あらすじ・評価・感想・解説・レビュー | シネフィリー

『007 ゴールデンアイ』ボンド一気通貫レビュー17|荒唐無稽でも楽しい

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『007 ゴールデンアイ』
 GoldenEye

007シリーズ第17作、ピアース・ブロスナン版ボンドの第1作。ボンドガールにイザベラ・スコルプコとファムケ・ヤンセン。


公開:1995 年  時間:130分  
製作国:イギリス
  

スタッフ 
監督:  マーティン・キャンベル
原作: イアン・フレミング

キャスト
ジェームズ・ボンド: 
         ピアース・ブロスナン
ナターリア:   イザベラ・スコルプコ
ゼニア・オナトップ:ファムケ・ヤンセン
アレック:      ショーン・ビーン
ウェイド:   ジョー・ドン・ベイカー
ズコフスキー:  ロビー・コルトレーン
ボリス:       アラン・カミング
ウルモフ将軍: ゴットフリード・ジョン
M:         ジュディ・デンチ
Q:     デスモンド・リュウェリン
マネーペニー:    サマンサ・ボンド

勝手に評点:2.5
(悪くはないけど)

あらすじ

モナコに現われた国際犯罪組織ヤヌスの女性メンバー、オナトップを追っていたボンド。しかしオナトップはロシアのウルモフ将軍と結託し、NATOの最新鋭ヘリコプターを奪い去ってしまう。

ヘリコプターでロシアの秘密基地を襲撃したオナトップらは、そこでソ連時代の秘密兵器「ゴールデンアイ」を強奪。ボンドは事件の真相を探るべくロシアへと向かう。

一気通貫レビュー(ネタバレあり)

ブロスナンのボンド、デビュー戦

本作からピアース・ブロスナンによる五代目ボンドの時代が始まる。ダニエル・クレイグに見慣れた目には、何と派手で華やかで、だけど軽薄で女に甘い男かと思う。

だが、主役交代によるテコ入れで低迷しつつあったシリーズも挽回を果たせている。何より1995年はまだ、やれロシアだのKGBだのといって、英国の諜報部員たちが拳銃片手に暴れまわっていても、リアリティがないなどと軽蔑されずに動員が期待できる、牧歌的な時代だった。

『ミッション・インポッシブル』(1996年)や『ボーン・アイデンティティー』(2002年)など、同じジャンルでの強敵が登場することで、本シリーズも変わっていかなければ生き残れない競争に巻き込まれるが、ブロスナンの代でどのような変化をみせるか、楽しみに振り返っていきたい。

挨拶代わりのアヴァンタイトルから

本作ではブロスナンの初登場で、挨拶代わりのアヴァンタイトルのアクションにも気合が入る。

ダムからの足がすくむようなバンジージャンプのあと、化学兵器工場を一緒に襲撃した仲間の006ことアレック(ショーン・ビーン)が早くも射殺されてしまう! 

そしてボンドは崖から空中に落下し、眼下を飛ぶ無人のセスナにしがみついて脱出という離れ業を披露。トム・クルーズと違って、こちらはスタントだろうが、それでも見事なものだ。

次に犯罪組織ヤヌスのメンバーである元ソ連空軍戦闘機パイロットのゼニア(ファムケ・ヤンセン)が登場。

ボンドのクラシックなアストン・マーティンDB5に対して彼女は真っ赤なフェラーリF355。意味なく山道を高級スポーツカーで謎の女相手にレースする流れは、『ミッション:インポッシブル2』で真似されていた。

ゴールデンアイをめぐる計画

物語はヤヌスが起動キーを手に入れた秘密衛星兵器ゴールデンアイをめぐってのお馴染みスパイ活劇。

最後に判明するのが、ロンドン銀行に不正アクセスしてカネを引き出し、その証跡をゴールデンアイの高出力電磁パルスで消失させ、英国を紙文化の時代に逆行させてやろうという計画。

荒唐無稽なのは本シリーズではお約束だが、カネを盗んだ後の証拠隠滅に神経を使いこんな大がかりな犯行に及ぶあたりが、優秀なのか微妙。

ソ連崩壊前後の時代背景は、今観ると懐かしくもあり、分かりにくくもある。ただ、崩壊によってシリーズ初のロシア国内ロケがサンクトペテルブルクで実施されたことは、感慨深い。

なお、ロンドンにあるMI6の本部ビルは今回初登場。もっとも、『スカイフォール』では爆破されてしまうけれど。

アヴァンタイトルでは体を張ったスタントアクションだが、中盤以降は乗り物破壊系アクション

ロシアの街中を陸軍戦車に乗って敵を追うボンドのおとぼけ設定が笑える。そこから、列車と戦車の衝突、さらには車両からの爆破寸前脱出など、イリュージョニストばりのド派手展開。

一方で、他のシリーズ作品同様、目玉となる秘密兵器(本作ではゴールデンアイ)や人工衛星など白く輝きすぎて、ミニチュアにしか見えない。海面からせり上がってくるパラボラアンテナも、まるでサンダーバードのように、現実味がない。

キャスティングについて

キャスティングでは、ボンド以外のMI6のレギュラー陣もメンバー交代が多い。Mは今回からジュディ・デンチになり、『スカイフォール』で凶弾に倒れるまで続く。本作では「女性蔑視の恐竜で冷戦の遺物」とボンドを呼び、信頼関係構築はまだ途上。

同じく新メンバーのマネーペニー(サマンサ・ボンド)は、ボンドとの対等関係に格上げされたもののまだ添え物扱いで、本当に互角になるには、クレイグの時代まで待つ必要がある。

初代から5代目まで全てのボンドと共演しているQ役のデスモンド・リュウェリンはさすがに円熟の境地。現行の若造Qにも新鮮味はあるが、やはり、本作のQやバットマンのフォックス(モーガン・フリーマン)みたいに、ベテラン技術者がガジェットを開発するのがいいのだ。

今回のボンド・ガールはナターリア(イザベラ・スコルプコ)。プログラマーとしてのスキルを活かし、巻き込まれたミッションの遂行に貢献。ナターリアの指示についボンドがイエッサーと応じてしまうほどの気迫。シリーズにおけるボンド・ガールの役割期待も、本作から徐々に変わり始める。

てっきり敵陣のゼニアを演じたファムケ・ヤンセンがボンド・ガールかと思ったが、どうも違っていた。

このゼニアもなかなか濃いめの好戦的キャラで、長い両脚をからめてボンドを苦しめるが、悲惨な死に様を前に「男を絞めつけ過ぎた罰だ」と彼がいう台詞は、昨今のコンプラではアウトかも。

ゼニアと組んでいたウルモフ将軍(ゴットフリード・ジョン)も初めは大物感があったけど、途中でメッキが剥げた感じで呆気ない幕切れだった。

ちなみに、敵方についてボンドたちを困らせるナターリアの同僚でハッカーのオタク青年ボリス(アラン・カミング)は、本作以降『X-MEN2』でもミュータントとしてファムケ・ヤンセンと再共演。同作には後の『ダイ・アナザー・デイ』のボンド・ガール、ハル・ベリーも登場。

アレック役のショーン・ビーンは、こんなに主役を食いそうなキャラが冒頭で殉職するわけがないと思った通り、実はラスボスでしたという展開。

ボンド役の候補だった俳優って、そもそも悪役も似合うことが多く、彼も例に漏れない。やけどの痕跡も精悍さを強調する。両親がコサック出身で、英国に裏切られて自殺したという経歴も哀愁を感じさせる。

「ジェームズ、お前の親は裕福だから山岳事故だったな」
そう、彼らはともにMI6に拾われた孤児だった。

CIAの中尾彬ことジャック・ウェイド(ジョー・ドン・ベイカー)とボンドとのやりとりも軽妙。MI6は未だに古風な合言葉で確認か。お前、新しい上司は女なんだって。なお、ウェイドは次作『トゥモロー・ネバー・ダイ』にも登場。

元KGBのズコフスキー(ロビー・コルトレーン)は、かつてボンドに脚を撃たれたというのに、すっかりコミック・リリーフの仲介役だ。彼は後の『ワールド・イズ・ノット・イナフ』でも重要な役を担う。

ガジェットについて

各種アイテムでは、まずは、今も続くオメガのタイアップが本作から。シーマスターはレーザーが出るわ時限爆弾は発火できるわの万能モデル。パーカー製の爆弾内蔵ペンはやや地味だし、敵がノックして起動するかどうかのハラハラ演出はやや冗長。

ボンド・カーとしてはBMWが初参加、Z3、懐かしいです。ただ、クルマ自体はまるで活躍の場がなく、途中でジャック・ウェイドに譲ってしまうくらい。これでよく、BMWが納得したものだ。

ともあれ、ブロスナン・ボンドの時代が始まった。一気に観ていくぞ。