『新感染 ファイナル・エクスプレス』 考察とネタバレ:新作観る前に復習しておこう、ゾンビはうまく歌えない 

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『新感染 ファイナル・エクスプレス』 부산행

このご時世に感染ものはゴメンだが、こいつは興奮の痛快傑作サバイバルパニック。新作観る前にまず復習。笑えて、怖くて、最後には泣ける。これ以上に何を望むのか。

公開:2017 年  時間:118分  
製作国:韓国

スタッフ 
監督:      ヨン・サンホ

キャスト
ソ・ソグ:    コン・ユ
スアン:     キム・スアン
ソンギョン:   チョン・ユミ
ユン・サンファ: マ・ドンソク
ミン・ヨングク: チェ・ウシク
キム・ジニ:   アン・ソヒ
ヨンソク:    キム・ウィソン
ジョンギル:   パク・ミョンシン
インギル:    イェ・スジョン
乗務員:     チャン・ヒョクチン
ホームレス:   チェ・グィファ
感染者の女:   シム・ウンギョン

勝手に評点:4.5
(オススメ!)

(C)2016 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & REDPETER FILM. All Rights Reserved.

あらすじ

ソウルでファンドマネージャーとして働くソグ(コン・ユ)は妻と別居中で、まだ幼いひとり娘のスアン(キム・スアン)と暮らしている。

スアンは誕生日にプサンにいる母親にひとりで会いにいくと言い出し、ソグは仕方なく娘をプサンまで送り届けることに。

ソウルを出発してプサンに向かう高速鉄道KTXに乗車したソグとスアンだったが、直前にソウル駅周辺で不審な騒ぎが起こっていた。

そして2人の乗ったKTX101号にも、謎のウィルスに感染したひとりの女が転がり込んでいた。

レビュー(まずはネタバレなし)

テンポとキレの良さに改めて感心

このご時世に感染ものを観るのは気が引けるが、新作の公開が迫ってきたので、まずは本作の復習をしておかねばならない。本作は痛快傑作サバイバルパニック映画で、再観賞にも十分耐えうる面白さ。

ゾンビという単語は、韓国ではヒットしないらしく一言も出てこないが、ソウルとプサンを結ぶ高速鉄道の閉じられた環境下で起きるゾンビの恐怖が存分に味わえる。

高速鉄道ものだから、新幹線をむりやり『新感染』とした邦題のセンスを買う。そして、映画自体も、誰も望んでいない無駄で冗長な説明を極力省いたテンポの良さがとても快適。

冒頭の、高速道路の検問で、工場から何かが漏れたようだと分かり、直後に、クルマで轢死した鹿が、すぐに生き返り元気に歩き出すシーンを見せる。これだけだ。

ほかに、謎のウィルスに関して大した補足説明もないが、質・量ともに、この情報で全然満足。はやく列車に乗り込もう。

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ゾンビの登場と増殖の気前の良さ

そして、ゾンビの登場と増殖についても、微塵も勿体付けることなく、赤字覚悟の大放出だ。

発車間際の列車に飛び乗る、感染した女が最初のゾンビ。

これがシム・ウンギョンだったとは、まったく気付かなかった。こんな役もやっていたのなら、『ブルーアワーにぶっ飛ばす』でゾンビの真似でもしてくれればいいのに。

彼女がゾンビ化して次々と乗客を餌食にして大量ゾンビに増殖していくまでの、なんと展開の早いことよ

ポン・ジュノ監督の『グエムル-漢江の怪物-』もすぐにモンスターを登場させたが、韓国映画の特徴なのか。怪物登場まで思いっきり引っ張る作品も多い中、こういう作り手の姿勢は嬉しい。

ヨン・サンホ監督はアニメ映画制作の出身だが、実写ものは本作が初監督。それでこの完成度の高さとは、恐れ入る。

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キャスティングについて

登場人物は多いのだが、主要キャストは以下のとおり。

主人公のファンドマネージャーのソ・ソグ(コン・ユ)と、その幼い娘スアン(キム・スアン)

別居中の妻に娘を会わせるために列車に乗った。利己主義な父親に嫌悪感を抱いている娘と父との関係が、サバイバルを通じて変化していくのが見もの。

もう一組の主役はマッチョな夫ユン・サンファ(マ・ドンソク)と妊娠中の妻ソンギョン(チョン・ユミ)

妻の身体を気遣いながら率先して戦う姿勢が頼もしい。マ・ドンソクはキム・ギドク監督の『殺されたミンジュ』という恐ろしく暗い映画に主演、本作ヒット後では『犯罪都市』の刑事役で暴れていたのが印象的。

妊婦役のチョン・ユミは最近では『82年生まれ、キム・ジヨン』に主演。また、コン・ユとは『トガニ 幼き瞳の告発』で主役を共演しているのが興味深い(こちらもミンジュに負けず暗い話だったけど)。

それから、高校野球チームの選手ミン・ヨングク(チェ・ウシク)とキム・ジニ(アン・ソヒ)のカップル。

他のチームメイトは続々ゾンビ化していく中で、けなげに頑張る二人。チェ・ウシク『パラサイト 半地下の家族』でソン・ガンホの息子役だったあの青年だ。

唯一無二の憎まれ役だった、バス会社の重役ヨンソク(キム・ウィソン)。出演作品は多いようだが、私が観たことのある作品は見つけられず。

本作では、特に後半になるにつれ、どんどんと存在感を強めていく。ある意味、ゾンビ以上に悪役といえる。

最後に、高齢の姉妹ジョンギル(パク・ミョンシン)とインギル(イェ・スジョン)も、いろいろな人生を抱えた乗客が列車に乗り合わせていることを感じさせ、効果的だった。

ちなみにパク・ミョンシンはイ・チャンドン監督の『オアシス』で主人公女性を虐げる隣人女性。

レビュー(ここからネタバレ)

以下、ネタバレ部分がありますので、未見の方はご留意願います。

ゾンビの特性と舞台設定が深い

本作を改めて観ると、実に良く練られた脚本や設定だと感心する。

まずはゾンビについて。その動きは由緒正しい動作を踏襲してはいるが、硬化ガラスに頭突きでひびを入れ、エスカレータを突進し、或いは走る列車に食らいつき。

その動きそのものは極めて俊敏かつ過激。なのに知能は低く、ドアもあけられず、ひたすら動く物や音に反応するだけ。この特性のおかげで、サバイバルに活路を見出すことができる。

列車内という閉ざされた環境も最大限に活用している。トイレや網棚、あるいは車両移動といった障害物競走の面白さ。

更には、ある途中駅ではホームにゾンビがうごめいており、別の停車駅は無人状態で、乗客みんなが下車してみたり、といったマンネリズムの回避もうまい。

ゾンビ映画など散々観てきたはずなのに、どこか新鮮味がある。

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乗客たちの厳しい生存率

誰が生き残れるかという点も、いい意味で期待が裏切られた。

ある程度人数が絞られてくると、あとはみんな助かりそうな気になっていたが、バス会社役員ヨンソクのわがままな行動に振り回され、結構な人数の仲間たちがゾンビ化してしまう。これは驚いた。

高校生カップルが無念にも、そろってゾンビになってしまうのは、完全にこの男の卑劣な行動のせいなのだ。

マッチョなユン・サンファはどこかの場面で、妻やみんなのために身を犠牲にしてしまう予感はあったが、結局生存率は大幅に私の予想を下回る。

この映画に何か不満を述べるとすればヨンソクの死に方をもっとぶざまなものにしてくれればスッキリしたのに、という点くらいだ。あとは大満足である

ただ、不満ではないが、このヒット作の続編を作るのはわかるけど、ハードル高すぎるのではないかという心配はある。

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最後はゾンビ映画に泣かされた

それにしても、このヨンソクのおかげで、娘を残してソ・ソグまで死ぬことになるとは。

噛まれたと知った彼は、娘スアンをソンギョンに託し、自ら命を絶つのだ。父と娘はついに心を通わせることができたというのに。

利己的だったソ・ソグの自己犠牲。そして娘との別れ。感極まる。まさかゾンビ映画に、マジで泣けるシーンがあるとは思わなかった。

結局生き残ったのは、妊婦と幼い娘の二人。主役級が続々やられても、さすがにこの二人は無事だったか

だが、映画にはまだラストにひとひねりあった。地上に降り立った二人が感染者か見分けられない、軍の狙撃兵は、上官から射殺命令を受ける。遠くから銃口を向ける兵士。絶体絶命だ。

しかし、何とスアンはこのタイミングで、父のために練習していた学芸会の曲を歌い出すのである。

きみの鳥はうたえても、ゾンビに歌はうたえない。兵士は銃をおろし、二人に駆け寄る。何と見事な伏線回収だろう。参りました。