X-MEN旧三部作を一気通貫でレビュー。マーベル映画の快進撃はここから始まったといっても過言ではない。
01 『X-メン』X-MEN
02 『X-MEN 2』X2
03 『X-MEN ファイナルディシジョン』X-MEN: The Last Stand
『X-メン』 X-MEN
公開:2000 年 時間:104分
製作国:アメリカ
スタッフ
監督: ブライアン・シンガー
キャスト
チャールズ・エグゼビア:
パトリック・スチュワート
ローガン(ウルヴァリン):
ヒュー・ジャックマン
スコット・サマーズ(サイクロップス):
ジェームズ・マースデン
ジーン・グレイ: ファムケ・ヤンセン
オロロ・マンロー(ストーム):
ハル・ベリー
マリー・ダンキャント(ローグ):
アンナ・パキン
エリック・レーンシャー(マグニートー):
イアン・マッケラン
レイヴン・ダークホルム(ミスティーク):
レベッカ・ローミン=ステイモス
セイバートゥース: タイラー・メイン
トード: レイ・パーク
勝手に評点:
(一見の価値はあり)
あらすじ
DNAの突然変異により特殊な能力を持つミュータント。彼らはその特異性を理解できない人間たちから疎外される存在だった。
カナダの雪深い国道沿いのバー。家出少女ローグはドッグファイトで圧倒的な強さを見せる野性的な男、ローガンと出会う。
彼が自分と同じく孤独なミュータントであることを知り、親近感を感じた彼女は無理矢理彼のトレーラーへ乗り込むが、突然二人は毛むくじゃらの巨漢に襲われる。
一気通貫レビュー(ネタバレあり)
マーベルの快進撃を生んだ重要な作品
マーベル作品の中で、本数の多さと興行成績ではすっかりMCUに水を開けられてしまったが、ハリウッドがマーベルに注目したのは『ブレイド』(1998)のヒットあたりからで、そのあとに登場した『X-MEN』(2000)が人気シリーズとなったことを忘れてはならない。
X-MENシリーズには、何だかんだで、旧三部作に新三部作、さらには『デッドプール』などスピンオフもあり、しっかり統制がとれて展開されるMCUと違い、好き勝手に増殖しているイメージがある。けして面白さではMCUに引けを取らない。
本作以降、2002年からはサム・ライミ監督によるトビー・マグワイヤの『スパイダーマン』シリーズが始まり、また2008年から『アイアンマン』を皮切りにMCUが始まることを思えば、マーベルの映画界快進撃の礎ともいえる重要な作品なのが、この『X-MEN』なのだ。
面白いことに、この第1作に限っては、邦題が『X-メン』とカタカナ表記になっている。中途半端に半分だけカタカナなのがスッキリしないので、二作目から改まったのは良かった。
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様々な能力を持ったミュータントが、人間社会に溶け込んで生活をしているが、その特殊能力から、周囲に迫害されているものも多い。
彼らの能力を恐れた米国の議会では、「ミュータント登録法案」を可決させ、ミュータントを厳しく管理しようという動きがある。マグニートー率いる一派はこれを脅威ととらえ、力ずくで阻止しようと動き出す。
一方、「恵まれし子らの学園」という専門学校を運営しミュータントを保護しているチャールズは、人間との共存社会を模索しており、両派は対立する。それぞれが多種多様な能力をもつミュータントを抱え、戦い合う展開になる。
ホントは深い、両派の対立構造
主役としては一応、ヒュー・ジャックマンの演じるウルヴァリンということになるのだろう。
だが、シリーズ全体を俯瞰してみると、真の主役は仲違いした親友同士であるチャールズ・エグゼビア(パトリック・スチュワート)とマグニートー(イアン・マッケラン)という二人の老紳士なのではないかと思う。
このベテラン俳優の二人が中心にいることで、ヒーロー・アクション映画ながら、本作にはMCUにはない重厚さが滲み出ている。
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ミュータントとして生まれてしまった彼らが、人間との共存を求める者と、自分たちを取り締まろうという人間に先制攻撃を仕掛けようとする者に対立する。善悪がはっきりした対立構造ではないところが深みをもたらす。
「ヒーローも勝手に悪と戦わず、国連の管理下に入れ」という、アベンジャーズにおけるソコヴィア協定の署名をめぐる争いより、本作の方が納得感があるじゃないか。
それに、マグニートーの企みは、各国からサミット参加でマンハッタンはエリス島に集まった首脳陣たちを、特殊な装置を使ってミュータントに変えてしまおうというものなのだ。なんと驚きの発想。これなら、取り締まり強化の法案が通るはずもない。
両陣営の選手紹介
さて、ミュータントたちがそれぞれ異なる特殊能力で戦う展開は、今や懐かしい海外ドラマの『HEROES/ヒーローズ』や『ダーク・エンジェル』をはじめ、他の作品でもおなじみのスタイルとなっている。
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本作ではチャールズ側に狼男ウルヴァリンことローガン、ゴスペラーズにいそうなグラサン男のサイクロップス(ジェームズ・マースデン)、嵐を呼ぶ女・ストーム(ハル・ベリー)、この当時は実力未知数のジーン・グレイ(ファムケ・ヤンセン)の鉄壁の教師陣。そして触った相手の能力を奪う、本作の鍵を握るローグ(アンナ・パキン)も加わった面々。
アメコミからの由緒ある名前ゆえ、半数が女性でもX-PERSONとはいわずX-MEN。
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一方のマグニートー率いる軍団は、変幻自在の青い人魚姫・ミスティーク(レベッカ・ローミン=ステイモス)、どこかマヌケの怪力男セイバートゥース(タイラー・メイン)、そして恐怖のカエル男トード(レイ・パーク)。
豪華なX-MENのメンバーに比べると劣勢だが、観直してみると弱そうなトードが意外なほど健闘。フォーカスがあわない背景で駅舎の壁を這うシーンなど、割と通好みの登場。
ミスティークの変幻自在ぶりは、かの名作『ターミネーター2』の警官を思わせる。本作では手の込んだ美しい特撮で変身の様子を見せたが、たしか後続作品では手抜きになった記憶あり。
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絶対的に強いのは、やはりマグニートーの金属をグニャグニャにする力。アダマンチウムという最強の武器を体内に仕込むウルヴァリンでも、武器が金属である以上、マグニートーに歯が立たない。じゃんけんにも似た、誰が最強か不明の構造が面白い。
アクションシーンはさすがに古臭いか
マグニートーは装置を使い人々をミュータント化するにあたり、自分が衰弱死する危険を回避するため、ローグを攫って彼女に自分の能力を移植し、人身御供にしようとする。
なるほど、だからローグをつけ狙っていたのだ。これは、この手のヒーロー・アクションにしては、よく練られた計画だ。
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アクションシーンは2000年の公開作ゆえか、さすがに若干の古臭さはあり、動きも鈍い気はする。
この手のジャンル未経験のブライアン・シンガー監督に批判の声があがったとも聞くが、映画自体は面白いし、無理なく次回作に期待を持たせる展開もうまい。私は本作を何度も観ているが、飽きることはない。
シリーズはMCU同様に、だんだん登場するミュータント数が膨れ上がっていき、それは楽しくもあるが、本作くらいの登場人物数が、映画的には手頃なように思う。
まずは一勝を取ったことが大事
セイバートゥースに襲われたローガンがストームとサイクロップスに救われ、気絶している彼を治療室でジーン・グレイが看護する。はっと目を覚まして慌てるローガン。『ウルトラセブン』のダンとアンヌの出会いのシーンの再来にしかみえない。
そういえば、秘密基地のような基地内の通路をひとり歩くローガンや、地面が割れて浮かび上がる巨大戦闘機など、ウルトラ警備隊にインスパイアされたような造作も多い。
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チャールズには自ら開発した能力増幅装置セレブロがあり、マグニートーには自由の女神のトーチに設置した装置があり、ハコもの対決になってしまったのは、若干映画的には興味を殺いだ感はある。
だが、ともあれ、X-MENがみんなで力を合わせて、まずはマグニートーの悪事を阻止したことで、気持ちよく終わりたい。
ローガンは卓越した再生能力が売りのミュータントであり、その彼の全身にアダマンチウムを埋め込んだのは誰でどういう経緯なのか。それが解明されるには、スピンオフの『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』(2009)まで待たねばならない。