『X-MEN・X-MEN2・X-MENファイナルディシジョン』旧三部作一気レビュー

01 『X-メン』X-MEN
02 『X-MEN 2』X2
03 『X-MEN ファイナルディシジョン』X-MEN: The Last Stand

『X-MEN:ファイナルディシジョン』 
 X-Men: The Last Stand

公開:2006 年  時間:105分  
製作国:アメリカ

スタッフ 
監督: ブレット・ラトナー
キャスト
チャールズ:パトリック・スチュワート
ローガン(ウルヴァリン): 
          ヒュー・ジャックマン
スコット(サイクロップス): 
         ジェームズ・マースデン
ジーン・グレイ(フェニックス): 
           ファムケ・ヤンセン
オロロ(ストーム):    ハル・ベリー
マリー(ローグ):   アンナ・パキン
ボビー(アイスマン): 
          ショーン・アシュモア
キティ(シャドウキャット):
           エリオット・ペイジ
ピーター(コロッサス):
           ダニエル・クドモア
ハンク・マッコイ(ビースト):
           ケルシー・グラマー
ウォーレン(エンジェル):
            ベン・フォスター
ジミー(リーチ): キャメロン・ブライト
エリック(マグニートー): 
           イアン・マッケラン
レイヴン(ミスティーク): 
           レベッカ・ローミン
ジョン・アラダイス(パイロ): 
        アーロン・スタンフォード
ケイン・マルコ(ジャガーノート): 
          ヴィニー・ジョーンズ
ジェイミー(マルチプルマン):
            エリック・デイン

勝手に評点:3.5
(一見の価値はあり)

あらすじ

人間との共存を願うミュータントの組織X-MENが弱体化する中、仲間を救うために死んだジーン・グレイ(ファムケ・ヤンセン)が復活。

その一方、ミュータントを人間に変える新薬キュアが開発され、ウルヴァリン(ヒュー・ジャックマン)、ストーム(ハル・ベリー)ら、ミュータントたちは究極の選択を迫られることになる。

一気通貫レビュー(ネタバレあり)

ついに三部作の完結編登場

いわゆる旧三部作の完結編にあたり、ここまでは近未来の物語になっている。キャスティングを入れ替えた新三部作になると時系列が複雑化するが、本作まではあまり悩まずに楽しめる。

前作で死んだはずのジーン・グレイが実は生きていたというのは容易に想像できるが、単純な復帰ではなかった。

ミュータント最強の能力を持つジーンには、その強大なパワーを統制する代償として、フェニックスという凶暴な人格が共存していた。復活した彼女の身体を、そのフェニックスが支配するようになってしまったのだ。

過去二作を手掛け、X-MENの世界観を作り上げてきたブライアン・シンガー監督が、DCコミックスの方の監督仕事に忙殺されたため、本作はブレット・ラトナーが監督に起用された。

この手のジャンルは初めてだったと思うが、しっかり過去作品を踏襲しながら、ヒーロー・アクションとして更なるキレの良さとスケール感のアップが感じられて嬉しい。

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ミュータント界最強の力を持つ女

悪魔になって戻ってきたジーンというのが、まず目新しいではないか。

凶悪性をもつ二重人格という設定自体は珍しくもないが、マーベルの映画の中では思い当たらない。正確には悪魔ではないが、チャールズが説得を試みると、「私の心から出ていけ!」と低い声で叫ぶ場面は、懐かしのホラー『エクソシスト』のよう。

この暴れん坊ジーンの登場で、これまでの、チャールズとマグニートーが人類と共存するか否かで対立してきた構造のマンネリ化が打破され、読めない展開になっている。

やれセレブロだヘルメットだと、機械設備の手を借りてマグニートーが悪さをしようとしていた過去二作とは、明らかに異質なのである。

だって、自分を生き返らせてくれた恋人のスコット(ジェームズ・マースデン)を、呆気なく殺してしまうのだ。あとでオチがあるのかと思ったが、本当に死んだまま

ブライアン・シンガーが監督する『スーパーマン リターンズ』ジェームズ・マースデンも連れて行ってしまったので、本作では早くに死ぬしかなかったというのが内幕らしいが、主役級のメンバーが死に様も見せずに墓石になるとは寂しい限り。

影響はストーリー展開にも及んでいるのだろう、やや雑な気がするし。フェニックスに力負けでチャールズが粉々に玉砕して死んでしまうのも、衝撃的だ。

私たちは病人じゃないわ

フェニックスの登場とともに、本作で新機軸を打ち出したのは、<キュア>の存在だ。ミュータントを、ただの人間に治してくれる特効薬

政府は任意だというが、我々は病気ではないと、多くのミュータントは反発し、マグニートーのもとに団結し人間に先制攻撃を仕掛ける。

ローグ(アンナ・パキン)のように、一生恋人と触れ合えないくらいなら、キュアの投薬で人間に戻りたいと考える者もいれば、キュア弾を撃たれて人間に変えられてしまう、ミスティーク(レベッカ・ローミン)のような例もある。

これまで散々に敵を苦しめてきたミスティークが、マーメイドを逆に行くように、人魚から全裸の女性になってしまう。しかもマグニートーを庇って撃たれたと言うのに、あっさり棄てられるシーンが切ない。

おかげで、三作目にして初めて、特殊メイクなしのレベッカ・ローミンをまともに拝めた。

飛車角落ちのX-MEN、全面対決に

かくして、X-MENにはチャールズもスコットも不在の飛車角落ち状態、一方のマグニートーはミスティーク不在だが、ジーンからフェニックス成りした最強駒を手に入れ全面対決に突入。

舞台は、キュアを創り出す施設になっている、アルカトラズ刑務所の島。攻め込むのに、わざわざゴールデンゲートブリッジを動かして島への架け橋にしてしまうマグニートー。これは度肝を抜くスケールの映像。

結局、最後の決戦に参戦したX-MENメンバーは、ローガン(ヒュー・ジャックマン)、ストーム(ハル・ベリー)、アイスマン(ショーン・アシュモア)、シャドウキャット(エリオット・ペイジ)、コロッサス(ダニエル・クドモア)それにかつての仲間ビースト(ケルシー・グラマー)の6名か。

ビーストは政府高官なのに、これまで一度も出てきていないのは不思議。また、前回活躍したナイトクローラーは、今回話題にも上がらず。

マグニートー側は、パイロ(アーロン・スタンフォード)、ジャガーノート(ヴィニー・ジョーンズ)のほか、戦闘シーンで初お目見えのキャラなども含め、割と雑多な感じ。

団体戦でも、全ての参戦キャラに知名度や出演作が多数あるアベンジャーズの面々とはやや趣が異なるものの、当時ここまで豪華なバトルを見せてくれたのは偉大。

ただ、バトルシーン自体は派手なのだが、アイスマンとパイロの氷と炎の級友対決くらいしか、興奮ものの場面はなかった気がする。

壁抜け少女のシャドウキャットは、相対的にメチャクチャ小さくて華奢にみえ、また怪力だけが取り柄のジャガーノートは、あまりの馬鹿キャラで笑える。ちなみに、コロッサスとジャガーノートは、X-MENシリーズの系譜である『デッドプール2』にも登場。

そして決着をつけるラスボスは

コロッサスがローガンを空高く敵に向けて放り投げて、相手の懐に飛び込んだローガンが斬りまくる戦法は、アカデミーの演習クラスでも練習していた。

実戦にみせてハイテク機器による演習だったというパターンは、『007 ダイ・アナザー・デイ』ピアース・ブロスナンのボンドが本作よりちょっと前に使っていたっけ。

それを応用して、最終決戦では、ついにマグニートーに(ビーストが)キュア弾を撃ちこみ、人間にしてしまう。これで勝負あったと思いきや、これで終わったらローガンの活躍が少なすぎて主役とはいえない。

そう、ラスボスはマグニートーではなく、ジーン・グレイ改めフェニックス。そして、ローガンが決死の覚悟で、彼女と刺し違えにいくのだ。それでこそ主役にふさわしいエンディング。

フェニックスの隙を突いて一瞬現れて、私を殺してと懇願するジーン愛するがゆえに、彼女にアダマンチウムの刃を向けるローガン。完結編にふさわしいラストだ。

ジーンを巡ってスコットと争った三角関係も、最後にはローガン一人が残ってしまう悲しさ。そういえば、MCUの作品群と違い、X-MENはベッドシーンを思わせる場面もしっかり存在して、ちょっと大人の匂いもするのだった。

映画『X-MEN:ファイナル・ディシジョン』(2006)予告編 X-MEN 旧シリーズ

こうして平和は戻り、人間とミュータントの共存社会がやってくる。人間になったマグニートーは、一人でチェスに興じている。金属製の駒が、触らずに少し動いたように見える。力が戻ってきたのか。

一方、死んだはずのチャールズは、入院していた別人(双子の兄弟?)に自分の意識を移植することに成功。それに気づくDr.モイラ・マクタガートは、新三部作にも登場する因縁のキャラクター。

こうして、旧三部作は、あちこちに次回作につながる糸口を残しながら、幕を閉じる。新三部作ではローガンは主役でなくなるが、まだまだ観ていたいという方には、ウルヴァリン主役のスピンオフが何本かあるので、先に手を伸ばすのも、有りかと。