『アイアンマン』
Iron Man
マーベルMCUレビュー。全ては、なぜかこの男から始まった。本作を皮切りに、何十本という作品と、数え切れないアメコミ・ヒーローたちが一つの物語を編んでいくことを、誰が想像していたか。
公開:2008 年 時間:126分
製作国:アメリカ
スタッフ
監督: ジョン・ファヴロー
キャスト
トニー・スターク/アイアンマン:
ロバート・ダウニーJr.
ジェームズ・ローズ:テレンス・ハワード
ペッパー・ポッツ:
グウィネス・パルトロー
フィル・コールソン:クラーク・グレッグ
インセン: ショーン・トーブ
オバディア/ アイアンモンガー:
ジェフ・ブリッジス
ラザ: ファラン・タヒール
勝手に評点:
(一見の価値はあり)
コンテンツ
あらすじ
巨大軍事企業の社長トニー・スタークはアフガニスタンでテロ組織に捕われ、新兵器の開発を強制されるが、敵の目を盗んで戦闘用パワードスーツを開発し、敵地から脱出。さらに改良を加えたパワードスーツを装着し、アイアンマンとなってテロ撲滅のため戦うことを決意する。
一気通貫レビュー(ネタバレあり)
全てはなぜかここから始まった
初めに本作を観た時には、まさかこれが偉大なるサーガの幕開けになろうとは思わなかった。そもそも、一般人のレベルでは、公開当時このアイアンマンというヒーローの知名度は、そう高くなかったのではないか。
ハルクやキャプテンに比べれば、マーベルの中でも二軍選手とは言わないまでも、クリーンアップを打つ選手ではない。その彼が、アベンジャーズの主力に抜擢され、シリーズを牽引するのだから、世の中面白いものだ。
◇
本作のユニークな点は、何といってもトニー・スタークの人物像の型破りな点だ。
当時鳴かず飛ばずだったロバート・ダウニー・Jr.の破天荒な生きザマと重なっているようで、このキャスティングがなければ、MCUの企画自体、早々にポシャっていたかもしれない。
超裕福な家で父の死後に大企業の経営を引き継ぎ、頭脳明晰、容姿端麗、高級スポーツカーを乗り回し、平和のために戦闘用スーツを装着して悪と戦う。
こう書くと、同年代に公開されていた『バットマン』のブルース・ウェインの設定と酷似している。もっとも、ブルースはプレイボーイになりすました時を除けば基本ストイックな男だが、トニーは快楽主義で見境いなく女に手を出す。
その点では鼻持ちならないキャラだが、もしもトニーがストイックだと、後々スティーブ・ロジャース(キャプテン・アメリカ)とキャラが被ってしまうので、これは正解。
頑張っている点と残念な点
本作は第1作ゆえか、負傷したトニーの胸にアーク・リアクターを埋め込み、アイアンマンの原型であるマーク1を開発し、最終的にはアイアンマンを作って各種機能を調整したりと、その開発工程を丁寧に説明している。ここは好感。
◇
ただ初見の当時は、アイアンマンの造形はあまりカッコいいとは思えなかった(今は随分見慣れたが)。マーク1のことではなく、アイアンマンの造形である。なんとなく身のこなしも、ペプシマンのようだ(昔そういうCMキャラがいました)。
そうは言っても、夜空の初飛行では気分の高揚はあったし、徐々に戦い方が熟達していくのは楽しい。
そして、本作が映画としての緊張感を持続できているのは、ヴィランとしてひとり気を吐くオバディア・ステイン(アイアンモンガー)のおかげだと思う。ジェフ・ブリッジス最高。
テン・リングスを率いるラザ(ファラン・タヒール)が瞬殺されてしまったので、実質オバディアの孤軍奮闘だ。よく2時間を持たせてくれた。
◇
だが、本来盛り上がりそうな主人公との対決は、いまいち精彩を書く。能力や風貌の似た者同士の戦いは、映画的に盛り上がらないのが常。
氷結対策の有無で上空で勝負が決まるのもやや難ありだし、最後にアイアンモンガーを仕留めるのもペッパーの手柄なのである。
私がアイアンマンだ。
本作は記念すべきMCUの一発目ということで、今後に向け各種ネタが仕込んであるのも嬉しい。
ペッパー(グウィネス・パルトロー)とトニーとの、まだ淡い男女関係。ローディー(テレンス・ハワード)とトニーの友情。コールソン(クラーク・グレッグ)が目立たない活躍のあとでS.H.I.E.L.D.を名乗るところ。
特にテレンス・ハワードは今後、配役が代わってしまうので、目に焼き付けておかないと。
運転手ハッピーホーガン(ジョン・ファヴロー、監督です)の登場や、J.A.R.V.I.S.の声(ポール・ベタニー)もいい感じ。
ラストの記者会見でコールソンの用意したメモを読むのをやめ、「私がアイアンマンだ」の決め台詞をいうトニー。
アドリブだったというあの台詞こそが、クラーク・ケントやモロボシ・ダンはじめ、歴代ヒーローが不文律として守り続けた<けして正体を明かさない>というお約束に訣別し、次代のヒーローとなった瞬間だ(70年代の日本では既に「私がデンセンマンです」というヒーローがいたけど)
◇
でも、みんな忘れてるかもしれないけど、最大の功労者は、我が身を捨ててトニーを救ったインセン博士(ショーン・トーブ)だと思う。彼がいなければ、アイアンマンは生まれず、MCUだってスタートしなかったのだから。