『ハリー・ポッターと死の秘宝』
Harry Potter and the Deathly Hallows
PART1 公開:2010 年 時間:146分
PART2 公開:2011 年 時間:130分
製作国:イギリス
スタッフ
監督: デヴィッド・イェーツ
脚本: スティーブ・クローブス
原作: J・K・ローリング
『ハリー・ポッターと死の秘宝』
キャスト
ハリー・ポッター:ダニエル・ラドクリフ
ロン・ウィーズリー:ルパート・グリント
ハーマイオニー・グレンジャー:
エマ・ワトソン
ダンブルドア校長: マイケル・ガンボン
セブルス・スネイプ:アラン・リックマン
ヴォルデモート: レイフ・ファインズ
ベラトリックス:ヘレナ・ボナム=カーター
ドラコ・マルフォイ: トム・フェルトン
アンブリッジ: イメルダ・スタウントン
ジニー・ウィーズリー: ボニー・ライト
ネビル・ロングボトム:マシュー・ルイス
マクゴナガル: マギー・スミス
ハグリッド: ロビー・コルトレーン
勝手に評点:
(オススメ!)

コンテンツ
あらすじ
PART1
ヴォルデモートの復活により魔法界に暗雲がたちこめるなか、打倒のカギとなる「分霊箱」を探す旅に出たハリー、ロン、ハーマイオニー。だが、困難を極める旅の途中で三人はついに仲間割れをしてしまう。一方ヴォルデモートと死喰い人たちは、魔法省やホグワーツにも着々と魔の手を伸ばしていく。
PART2
魔法省やホグワーツ魔法魔術学校までもが死喰い人の支配下に落ちる中、ハリー、ロン、ハーマイオニーは、ヴォルデモート打倒のカギを握る「分霊箱」を見つけ出す旅を続けていた。しかし、その間にもヴォルデモートは着実に力を蓄えていく。
一気通貫レビュー(ネタバレあり)
ついに完結編
10年がかりで続いた壮大な魔法学校の物語も、いよいよ完結となる。
最終編をPART1とPART2の二本立てにする構成は、近年でも『ミッションインポッシブル:ファイナルレコニング』に採用されているが、どちらも、前後編に分けるに値する充実感がある。
原作がとりたてて長い訳ではなく、これまでのパターンでいけば少し原作を削って一本に収める選択肢もあっただろうが、シリーズ完結となれば、慌ただしく店じまいさせるのは勿体ない。
◇
シリーズもここまでくると、もはや過去登場のキャラクターなどろくに説明もなく、バンバン登場してくる。
原作まで読んでいても、いきなり名前だけ言われて、はて誰だっけと戸惑うことも少なくないが、まあ仕方ない。マーベル映画(MCU)と同様、ここまでシリーズも回が続けば、コアなファンしか観ないのだから。

前作『ハリー・ポッターと謎のプリンス』は、ダンブルドアが裏切り者スネイプに殺されてしまい、絶望の淵に立つハリーが、単身ヴォルデモートに立ち向かおうとするところで終わる。
◇
本作の冒頭は、強大な組織力でハリーの行方を探しとらえようとするヴォルデモートに対し、仲間たちが魔法薬でハリーに化けて影武者となり、バラバラにアジトまで逃走する場面から始まる。
みんながハリーに変身するのは原作と同じだが、映像の方が遥かに面白い。だが、この作戦も敵にバレており、マッドアイ・ムーディ、それにハリーの飼っているフクロウのヘドウィグが早くも戦死。緊張が高まる。

Harry Potter Publishing Rights (C) J.K.R.
Harry Potter characters, names and related indicia are trademarks of and (C) Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
死の秘宝とは何ぞや
今回はPART1,PART2とも、ヴォルデモートを倒すために必要な、複数ある「分霊箱」探しの冒険が描かれるのだが、最終決戦が次作のせいか、まだPART1では意外なほどコミカルな演出が多い。
スタッフに化けて魔法省に潜入するところなど、間抜けなスパイ映画のようで笑えた。公衆トイレの便器が魔法省の入り口というのは、アニメ映画『化け猫あんずちゃん』の元ネタだったのか。

ハリー、ロン、ハーマイオニーの仲良し三人組は今回も健在。作品ごとに大人への成長著しいのは毎度感じることだが、10年目ともなると、ハリーは無精ひげや胸毛が目立つ青年だし、もはや、誰もハイスクールの生徒にはみえない。
以前は呪文を唱えるのもたどたどしかったのに、今はみんな杖を片手に瞬時に強力な魔法をかけられるのも頼もしい。ロンが途中で喧嘩別れして去っていき、ハリーの危機で戻ってくるパターンも、もはや持ち芸と化している。
みんなの恋愛事情はすっかり安定化したようで、ロンはハーマイオニー、ハリーはロンの妹ジニーとそれぞれステディな関係になっている。

Harry Potter Publishing Rights (C) J.K.R.
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<死の秘宝>にあたるニワトコの杖、死者を生き返らせる石、透明マントの三点セットが、秘密結社のシンボルマークになっていることや、それにまつわる童話がアニメ化されて紹介されるのは、とても親切で原作よりも分かり易かった。
しもべ妖怪のドビーやクリーチャー、銀行勤めのゴブリンたちの造形がいつもながら優れていて、ファンタジー濃度を押し上げる。
ダンブルドアぼ死後、スネイプが新しくホグワーツの校長となり、マグル迫害で校風ががらりと変わる。まるで『ねらわれた学園』だよ。
ハリー 対 ヴォルデモート
ここからネタバレになりますので未見未読の方はご留意願います。
さて、一作目からずっと悪人風でハリーと敵対していたスネイプが、前作で本性を現してダンブルドアを殺したことには、違和感がなさすぎた。
だから、スネイプが悪人キャラのままで終わるのには、どこか不自然さを感じていたのだが、かといってダンブルドアが実は生きていましたというのも、あまりに都合がよい。そう考えると、本作の真相はとてもよく考えられていると思った。
◇
ヴォルデモートはダンブルドアが持っていた最強のニワトコの杖を手に入れたが、うまく操れない。それはダンブルドアを殺したスネイプが杖のオーナーとなったからだと気づき、ヴォルデモートはスネイプを殺して所有権を得る。
だが、実はダンブルドアの死の直前、彼に魔法で武装解除をしたドラコに所有権が移っており、更にドラコを武装解除したハリーに、所有権が移っていた。

そうと知らずヴォルデモートはハリーと勝負に出て、杖の反撃で死んでしまうという顛末だった。
更に、ハリー自身がヴォルデモートに両親が殺された際に、母の跳ね返した魔法により、ヴォルデモートの「分霊箱」となっていたということも判明。
◇
J・K・ローリングは、何作目を書いた時からこの構想を固めていたのだろう。スネイプがいいヤツで良かったよ。ついでに、ドラコも微妙に改心しているところも。
あれだけ強そうにしていたヴォルデモートやベラトリックスが最後は他愛もなく倒されてしまったり、これだけ大きな犠牲と苦労の末に手に入れたニワトコの杖を、戦いに勝利したハリーが小枝のように簡単に二つ折りにして捨ててしまうのが、ちょっと拍子抜け。
ただ、最後に大きな活躍を見せた、ロンの母親モリー・ウィーズリーや、グリフィンドール寮のネビル・ロングボトム、マクゴナガル副校長などの予想外のメンバーが、最後の戦いで大きな活躍を見せるところは感動的だ。
物語の最後に19年後の様子が描かれているのは、やや冗長かもしれないが、長いシリーズの完結となればこの位の余韻は欲しい。
ハリーとジニー、ロンとハーマイオニーはそれぞれ家庭を築き、子供たちが同じ年にホグワーツに入学することになる。駅のホームには「9 3/4番線」の文字。一作目に感動が甦る。