『ミッション:インポッシブル ファイナル・レコニング』
Mission: Impossible – The Final Reckoning
不老不死のトム・クルーズが贈る、過去作の集大成的な作品となったシリーズ最新作。
公開:2025 年 時間:169分
製作国:アメリカ
スタッフ
監督・脚本: クリストファー・マッカリー
キャスト
イーサン・ハント: トム・クルーズ
グレース: ヘイリー・アトウェル
ガブリエル: イーサイ・モラレス
パリス: ポム・クレメンティエフ
ルーサー: ヴィング・レイムス
ベンジー: サイモン・ペッグ
キトリッジ: ヘンリー・ツェニー
ジャスパー: シェー・ウィガム
ドガ: グレッグ・ターザン・デイヴィス
スローン大統領: アンジェラ・バセット
シドニー: ニック・オファーマン
ウィリアム・ダンロー: ロルフ・サクソン
タペッサ: ルーシー・トゥルガグユク
ニーリー提督: ハンナ・ワディンガム
ブレッドソー艦長: トラメル・ティルマン
勝手に評点:
(オススメ!)

コンテンツ
あらすじ
AIプログラム「エンティティ」を巡る戦いから2か月後。IMFエージェントのイーサン・ハントは、因縁の敵・ガブリエルがエンティティを再び入手するのを阻止するべく任務に向かうこととなる。
レビュー(ほぼネタバレなし)
AIの脅威はいよいよ現実味を
日米同時公開の予定が、なぜか日本だけ1週間ほど先行公開となったことを直前に知ったので慌てて観に行く。
前作と同様に、まずは上映前にトム・クルーズ本人から日本のファンに向けた熱いメッセージ。これだけで期待爆上がり。
この大スターは、どんなにビッグになっても常に誠実にファンサービスしてくれて、頭が下がる。出演者がカンペ読み上げしてるのがバレバレの邦画予告のプロモーションより百倍いい。
映画は当初予定の『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART TWO』から『ファイナル・レコニング』に変更になっているが、前作からの続き物であることに違いはない。
前作に引き続き、最大の脅威となっているのは、高度なAIシステムの「エンティティ』。
もはや全世界のオンライン情報を思いのままに操り、フェイクニュースや合成画像で、人々を疑心暗鬼にさせ、第三次大戦を引き起こすことさえ、容易になりつつあった。
◇
イーサンが苦労して入手した不思議な鍵は、このAIシステムのソースコードを入手するために必要なもの。宿敵ガブリエル(イーサイ・モラレス)は、このソースコードを使って「エンティティ」を支配下に置き世界に君臨しようと企んでいた。
一方、米国政府も、国家間のパワーバランスを変えてしまうこのソースコードの入手に躍起になっていた。
「エンティティ」をどこかの国に渡すべきではないと考えるイーサンは、米国のために動くということではなく、このソースコードを入手するために、チームで仕事を進める。

過去作がみなここに繋がる
影に生き、影に死ぬ。
彼らの仕事は日の目を見ることはないが、愛する者の為、そして見知らぬ者の為に命を張る稼業。これまで多くの難題を克服し、誰にも知られず多くの人々の平穏な生活を守ってきたイーサンが、最後の試練(ファイナル・レコニング)に立ち向かう。
序盤から、最終回の匂いがプンプンするような展開だ。シリーズ初の前後編となる作品だけに、スケールの大きさは当然想像していた通りだが、シリーズを総括するように、集大成的な要素が随所に詰め込まれているのには驚いた。
◇
1996年の第1作から2023年の第7作までの名場面が回想シーンのように登場し、思わず目頭が熱くなる。そうか、トム・クルーズはもう30年近く、このシリーズを演じ続けているのだ(はい、ルーサー役のヴィング・レイムスも皆勤賞です)。
だからこそ、こういうアーカイブ映像を繋がれると、重みが違う。複数の俳優で演じてきたジェームズ・ボンドでは、こういう演出はできないのだ。

過去作を総括しているような内容というのは、この過去場面の回想だけではない。
これまでにイーサンがクリアしてきたミッションの中に、結果的に「エンティティ」を創り出してしまったものが含まれていたり、前作で1作目以来の復帰となったキトリッジ(ヘンリー・ツェニー)以外にも、懐かしい人物が久々に登場したり。
小道具でいえば、1作目でジャン・レノが落としたナイフが30年経過して伏線回収されるとは思わなかった。
本作を観るために、前作を観直す人は少なくないと思うが、いっそ1作目から全作を観直してもいいくらい(観ていなくても、スパイアクションとして十分楽しめる内容になっているので、ご心配なく)。

今回のメンバー
今回のチーム編成は、イーサン・ハントを筆頭に、ルーサー(ヴィング・レイムス)とベンジー(サイモン・ペッグ)のコアメンバー。
前作から登場のスリの名人グレース(ヘイリー・アトウェル)と、仲間割れでガブリエルに殺されかけた用心棒のパリス(ポム・クレメンティエフ)。
テクノロジーに長けた男性レギュラー二人と、戦闘能力の高い女性陣。そこにCIAのドガ(グレッグ・ターザン・デイヴィス)が、途中から仲間に加わる。
イーサンはミッションのために、仲間を犠牲にはしない主義だ。常に仲間や愛する者の安全を考える。たとえ、その弱点を敵に見透かされていても、これは変わらないだろう。
だからこそ、ほぼレギュラーになっていたイルサ(レベッカ・ファーガソン)が前作で殺されてしまったのは衝撃的だった。だが、今回もチームは無傷ではいられない。犠牲者が出てしまう。
◇
さすがに30年続いた作品だけあって、過去映像を見ると、若作りとはいえイーサンも相応に年齢を重ねているのが分かる。
だが、アクションに関しては、けして衰えを感じさせない。両腕を派手に振り上げて全力疾走するフォームも健在だし、回を重ねるごとにレベルアップしているようにさえ見える。
勿論スタントが演じていたり合成だったりするのだろうが、トム・クルーズのことだから、結構マジで体を張っている気もする。

空と海のアクション
劇場予告でさかんに登場したのが、深海に飛び込んでいくイーサン。前回の冒頭で沈められたロシアの潜水艦セヴァストポリが関係している。
そしてポスタービジュアルは、旧式のプロペラ機で曲乗りのような状態でファイトするイーサン。前作がカーチェイスと列車のクリフハンガーで陸のアクションだったから、今回は海と空なのか。
海も空も、本シリーズ以外ではおよそ観ることのできないような臨場感溢れるアクション。特に前者の深海の場面などは、観ているこちらまで酸欠で呼吸困難になりそうだった。

監督のクリストファー・マッカリーは、4作目『ゴースト・プロトコル』(2011)では脚本を手掛け、5作目『ローグ・ネイション』(2015)から本作まで4本全てを監督している。
それまでは毎回監督が異なり、監督ごとに目新しさはあったものの、テイストの違いに戸惑う作品もあった。マッカリー監督になってからは作品に統一感が出てきて、安心して楽しめるようになったのは嬉しい。
◇
さて、ファイナルというタイトルに集大成的な内容とくれば、これで見納めかという不安は残るが、トム・クルーズなら、まだまだ続けてくれるんじゃないかと期待したくなる。