『ウルヴァリン: X-MEN ZERO』(2009)
『ウルヴァリン: SAMURAI』(2013)
『LOGAN/ローガン』(2017)
『ウルヴァリン: X-MEN ZERO』
X-Men Origins: Wolverine
公開:2009 年 時間:108分
製作国:アメリカ
スタッフ
監督: ギャヴィン・フッド
キャスト
ローガン/ ウルヴァリン:
ヒュー・ジャックマン
ビクター/ セイバートゥース:
リーヴ・シュレイバー
ストライカー: ダニー・ヒューストン
ケイラ/ シルバーフォックス:
リン・コリンズ
レミー/ ガンビット:テイラー・キッチュ
ジョン/ ケストレル:ウィル・アイ・アム
ウェイド/ デッドプール:
ライアン・レイノルズ
エージェント・ゼロ: ダニエル・ヘニー
クリス/ ボルト: ドミニク・モナハン
フレッド/ ブロブ:ケヴィン・デュランド
サマーズ/ サイクロップス:
ティム・ポーコック
ケイラの妹: ターニャ・トッティ
チャールズ: パトリック・スチュワート
勝手に評点:
(一見の価値はあり)
あらすじ
ミュータントとして生まれたローガン(ヒュー・ジャックマン)は、少年時代、その能力が覚醒。
以来、人としての幸せを捨て、幾多の戦争に身を投じて生きてきたが、ケイラ(リン・コリンズ)という女性と出会い、初めて人間として生きる喜びを知る。
だが、ある日突然彼女は殺されてしまう。深い絆で結ばれていたはずのローガンの兄ビクター(リーヴ・シュレイバー)の手によって…。
兄を倒すため謎の巨大組織と取引したローガンは、最強の戦士となるべく、超金属アダマンチウムを全身の骨に移植する改造手術をうけ、<ウルヴァリン>という名の人間兵器に生まれ変わる。
一気通貫レビュー(ネタバレあり)
ウルヴァリン誕生秘話
MCUの最新作『デッドプール&ウルヴァリン』の2024年7月公開が控えている。『X-MEN』の新旧シリーズは本サイトでもレビュー済であるが、当初観賞時から年月の経つウルヴァリンとデッドプールの作品群は急ぎおさらいをしておかないといけない。
まずは、『X-MEN』シリーズのスピンオフである、ウルヴァリンの三部作。その初発となるのが、本作『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』である。
時系列的には、旧シリーズの第一弾『X-メン』(2002、まだMENがカタカナ表記)の前日譚にあたる。
主要メンバーであるウルヴァリンことローガン(ヒュー・ジャックマン)の少年時代からの歴史(不老なので1845年と古いが)が語られる。
◇
ヒュー・ジャックマンがワケありの過去を抱えた孤高のタフガイを演じるものだから、より一層若き日のクリント・イーストウッドを彷彿とさせる佇まいになっている。
自慢の鉄爪を振り回し、凶暴で孤独なイメージの強い人気キャラ・ウルヴァリンを主役にスピンオフが作られるのは分かるし、彼が獣と化してヴィランを相手に激しい戦いを繰り広げるのも興奮ものではある。
だが、本作の魅力はそこではなく、むしろ謎めいていたウルヴァリンの出自が明らかにされることだろう。
セイバートゥースことビクター(リーヴ・シュレイバー)とはどういう関係なのか、特殊金属であるアダマンチウムがなぜウルヴァリンの体内に埋め込まれているのか、そして彼の記憶はなぜ消されているのか。
◇
これら一連の謎が解き明かされることで、ウルヴァリンはただの荒くれ者ではない、悲劇性のあるヒーローであることが理解できる。
石ノ森章太郎も仮面ライダーの属性としてこだわり続けたこの悲劇性が、ウルヴァリンにも顕著に存在する。それは彼のスピンオフ三部作の最後、『LOGAN/ローガン』(2017)で昇華するのだが、それまで見守っていきたい。
チームXの内部闘争
ローガンは特殊能力の覚醒した少年期から悲劇的だった。自分の父親が庭師に射殺されたショックで彼の闘争本能と鉄爪は覚醒し、怒りで相手を刺殺する。だが、その庭師こそ、彼の実父だったと知る。
彼は庭師の子(つまりローガンの兄)ビクターと放浪し、以降100年以上も傭兵として南北戦争からベトナム戦争まで、活躍を続ける。
処刑されても死なない兄弟に目を付けたストライカー(ダニー・ヒューストン)は、彼らをミュータントの特殊部隊チームXに招聘する。
だが、一般人まで平気で殺戮する兄ビクターと袂を分かち、ローガンは脱退。その後、ローガンは恋人ケイラ(リン・コリンズ)と幸福な木こり生活を送るが、ストライカーから、かつての仲間を殺して回るビクターを始末してほしいと依頼される。
チームXのメンバーは以下の通り。これにローガンとビクターが加わる。
- 韓国系の超早撃ちガンマン、エージェント・ゼロ(ダニエル・ヘニー)
- 無駄口の多い日本刀使いのウェイド(ライアン・レイノルズ)
- のちにジャバ・ザ・ハット並みの巨漢となる怪力男のフレッド(ケヴィン・デュランド)
- テレポート能力のアフリカ系ジョン(ウィル・アイ・アム)
- 電気を自在に操るクリス(ドミニク・モナハン)
みなキャラが立っていて、魅力的だが、殆どが殺されてしまい単発の出演なのは残念。ただし、ウェイドは本作後半でウェポンⅪ(デッドプール)に改造され、破格の強さを見せる。その後の活躍はご存知の通りだ。
エージェント・ゼロもクールで良かったが、ウルヴァリンに殺される最期は呆気なかった。彼の名がゼロなら、なぜ邦題にZEROをつけたのか意味が分からない。
遊園地の夜店で電球遊びの出店をやっていたクリスのドミニク・モナハンは小柄だと思ったら、『ロード・オブ・ザ・リング』のホビット族のメリーか。あの映画ではマグニートーのイアン・マッケランが善玉の魔法使いだった。
デッドプールとの戦い
荒くれ者のビクターは、次々とミュータントを襲い、ローガンの恋人ケイラまで殺してしまう。ここから熾烈な兄弟喧嘩が勃発するのだ。
だが、全てにおいて裏で手を廻して暗躍するのはストライカー。彼がウルヴァリンを焚きつけてアダマンチウムの手術を受けさせ、最後には彼の頭に銃を撃ちこみ、記憶を消してしまう。
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本家の『X-MEN』シリーズで活躍するサングラス男のサマーズ(ティム・ポーコック)や、カメオ出演でチャールズ(パトリック・スチュワート)が登場し、囚われの若きミュータントたちを救出するなど、一応スピンオフの役割として、本体シリーズとの繋がりは維持。
終盤で登場した味方勢のガンビット(テイラー・キッチュ)が、どんな能力でなぜ強いのか、死んでないのに他の作品にはなぜ登場しないのか、不思議ではある。
スリーマイル島でのデッドプールとの決戦は見応えありだが、まさかその後にデッドプールがスピンオフであんなに活躍するとは、当時夢にも思わなかった。これはいい意味で裏切られた格好。
ビクターはローガンと互角に強いのだろうが、四つん這いで熊のように突進してくる姿と鉄爪の相性がイマイチで、どうにも強そうに見えないのが難点。
セイバートゥースは『X-メン』にも別なキャストで登場していたが、あちらではただの獣人キャラだったと記憶する。
◇
とりあえず、ウルヴァリンとデッドプールの初戦という意味では、見逃せない一本といえる。