『サンダーボルツ*』MCU一気通貫レビュー36|マーベル版の野村再生工場だな

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『サンダーボルツ』
 Thunderbolts

負け犬のようなメンバーかき集めで、アベンジャーズなきあとの地球平和に立ち上がる!

公開:2025年 時間:126分  
製作国:アメリカ

スタッフ 
監督:      ジェイク・シュライアー


キャスト
エレーナ:     フローレンス・ピュー
バッキー/ウィンターソルジャー:
          セバスチャン・スタン
エイヴァ/ ゴースト:
         ハナ・ジョン=カーメン
ジョン・ウォーカー/ U.S.エージェント:
          ワイアット・ラッセル
アレクセイ/ レッドガーディアン:
          デヴィッド・ハーバー
アントニア/ タスクマスター
          オルガ・キュリレンコ
ボブ・レイノルズ/セントリー/ヴォイド :
            ルイス・プルマン
ヴァレンティーナ・デ・フォンテーヌ:
     ジュリア・ルイス=ドレイファス
メル:  ジェラルディン・ヴィスワナサン

勝手に評点:3.5
 (一見の価値はあり)

(C)2024 MARVEL

あらすじ

CIA長官のヴァル(ジュリア・ルイス=ドレイファス)は過去に自身がCEOを務めていた軍事会社の行っていた非人道的な人体実験などの不法行為が露呈しかけ、それを察知した議員たちによって彼女に対する弾劾裁判が開かれていた。

ヴァルが在籍していた会社のラボを証拠隠滅のために爆破する裏の任務を成功させたエレーナ(フローレンス・ピュー)はこの手の仕事にウンザリしつつあり、ヴァルに次の仕事で裏の仕事を辞めてヒーローとして表で活動を行いたい旨を伝える。

ヴァルは僻地にある会社の研究データを狙う工作員の狙いを確認し抹殺の仕事をこなせたら表の仕事を斡旋するといい、承諾したエレーナが現地に向かうと地下の格納庫に現れた抹殺対象の工作員とはエイヴァ(ハナ・ジョン=カーメン)であった。

エイヴァは別の人物を狙うように指示されており、同じ格納庫にはそれぞれ別の抹殺を依頼されたウォーカー(ワイアット・ラッセル)とアントニア(オルガ・キュリレンコ)がやってくる。

4人がそれぞれ交戦している間に格納庫内のカプセルからいきなり現れたボブ(ルイス・プルマン)によって事態は混沌としていく。

(C)2024 MARVEL

レビュー(若干ネタバレあり)

アべンジャーズが去った後、残った荒くれ者たちが弱者連合みたいな即席チームを結成して、突如巻き起こった地球の危機を救おうという話。

MCU前作『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』に続く物語であることは、弾劾裁判中のCIA長官ヴァル(ジュリア・ルイス=ドレイファス)が、「前大統領は赤い巨人になったわ」と語っていることで分かる。

ハリソン・フォードが演じた、その巨人と化した男、サンダーボルト元将軍に因んで結成されたメンバーなのだと思い込んでいたが、どうやらこのチーム<サンダーボルト*>とは全く無縁だった。

これは、主人公エレーナ(フローレンス・ピュー)が子供の頃に入っていた弱小サッカーチームの名前から取ったものらしい。

(C)2024 MARVEL

ヴァル長官がどうやら前職の軍事会社でやばい人体実験をしていたらしい。その証拠を探っているのは、今や議員となったウィンターソルジャーことバッキー・バーンズ(セバスチャン・スタン)。本作では、サノスと戦った唯一のヒーローか。

ヴァルの裏稼業で証拠隠滅の汚れ仕事をさせられているエレーナは、足抜けしたいというと、ヴァルから最後のミッションを与えられる。

怪しい侵入者を抹殺せよと、会社のやばいデータが集められた巨大な地下格納庫に向かったエレーナは、そこで複数の敵と対峙する。ヴァルは、汚れ仕事をする目障りな連中をここに閉じこめて書類ごと焼却してしまう算段だったのだ。

改めて、ここに集められたメンバーを紹介。それなりに強いけど、ちょっと二ッチでうろ覚えの二軍メンバーばかりだ。

まずはエレーナ(フローレンス・ピュー)『ブラック・ウィドウ』で初登場した、ブラック・ウィドウの妹。
レッドルームで幼少から鍛えられた暗殺者だから、生身の人間だけど強いのも姉譲り。

続いて、エレーナが抹殺する予定だった相手がゴーストことエイヴァ(ハナ・ジョン=カーメン)。あらゆる物質をすり抜ける量子フェージング能力を持つ女。

『アントマン&ワスプ』、それも新作『クアントマニア』(2023)ではなく2018年の作品以来、久々登場なので、しばらく思い出せなかった。消えて現れる戦い方が懐かしい。

そして、ヒーローコスプレのジョン・ウォーカー(ワイアット・ラッセル)

前作レビューで、「新キャプテン・アメリカのサム・ウィルソンは三代目で、世間は二代目の存在を忘れている」と言ったことを述べたが、それがこのしくじりヒーローだ。今ではU.S.エージェントを拝命しているのを忘れていた。

最後にタスクマスターことアントニア(オルガ・キュリレンコ)。敵の動きを完コピできる。『ブラック・ウィドウ』ではヴィランとして活躍した存在だったがこちらもそれ以来の登場。前作同様、マスクのせいでオルガ・キュリレンコの美貌が拝めないのが残念。

なぜかこの地下格納庫に紛れ込んでいた謎の若者がボブ(ルイス・プルマン)。彼こそが、ヴァルが人体実験の結果、生み出したニューヒーローではないかと期待されるが、はたしてどうなのか。

(C)2024 MARVEL

ところで、公式サイトほか、いろいろなところで目にする本作のあらすじ紹介には、ヴァル長官、或いはバッキーがこの二軍選手たちを集めて、アベンジャーズに代わりサンダーボルツを結成したような誤解を招く書きぶりになっている。

そこには、メンバーに前述のタスクマスターも含まれているように見える。だが、実態は異なる。顔合わせした四人のバトルの中で、タスクマスターはあっさり退場となる。

その後に、エレーナの父親で、同じく『ブラック・ウィドウ』で初登場のロシア版キャプテン・アメリカというべき、レッドガーディアンことアレクセイ(デヴィッド・ハーバー)が参戦。

(C)2024 MARVEL

ヴァルの部隊から逃げるので精いっぱいだった連中を説得し、「一緒にヴァルを潰さないか」とバッキーが持ちかけたことで、ようやくチームが出来上がっていくのだ。

すぐに退場となるタスクマスターをなぜ登場させたのかは謎だが、『ブラック・ウィドウ』の続編という位置づけではない以上、同作の濃度が高まりすぎるのを避けたのかもしれない。エイヴァとは見た目や戦い方が似ているという理由もあるか。

でも、下のように、事前提供の映像にはタスクマスターが写っているのはおかしい。途中に何らかの事情で退場になったのか、今後の作品につながる伏線なのか(セントリーの能力がまだ分かっていないので)。

(C)2024 MARVEL

大勢のヒーローに対して、敵側でキャラが立っているのはラスボスだけというのは、MCUの中ではよく見られる構図ではあるが、今回その役を担うヴァル長官は、超人に変身するわけでもない生身の常人にしては健闘していた。

悪い魔女っぽいこのキャラは、ドラマ『ファルコン&ウィンターソルジャー』で初登場、『ブラックパンサー:ワカンダ・フォーエバー』ではCIA長官になっている。ヴァルの元夫はエヴェレット・ロスCIA捜査官。

(C)2024 MARVEL

MCUとしては今後、満を持して登場の『ファンタスティック・フォー』でテコ入れを図り、次のステージに繋げていく計画。

その意味では、二軍選手をかき集めたような本作は、シリーズの中では何本かにひとつ必ずある、埋め草的な扱いになっている作品なのではと薄々感づいている。

だが、意外といっては失礼だが、結構アクションは良かった。部隊がマンハッタンだったり、久々にアベンジャーズ・タワーが出てきたりで、初期のアベンジャーズたちがチタウリやロキと戦っていた頃の興奮が戻ってきた。

ぶっちゃけ、超高速の空中戦と赤いハルクだけが悪目立ちした前作『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』よりも、アクションは断然よかったと思う。

ただ、敵か味方か分からないボブが、無敵超人のセントリーになってしまう展開は、『アベンジャーズ:エイジ・オブ・ウルトロン』ヴィジョン登場時の既視感があり、悪役になりきれていないところも中途半端。

セントリーがダークサイドに落ちてヴォイドになり、街の人々を次々と影にしてしまう演出は、かつての指パッチンで粉末化する映像効果よりも安っぽいが、怖さは同等以上。それだけに、尻すぼみの展開は惜しまれた。

やっぱ、MCUの魅力は多様なキャラの団体戦に尽きるなあ、と改めて思った次第。