『ビートルジュース』考察とネタバレ!あらすじ・評価・感想・解説・レビュー | シネフィリー

『ビートルジュース』今更レビュー|名前を三回唱えたら出てくるよ、まずは一回目。

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『ビートルジュース』
 Beetlejuice

ティム・バートン監督がマイケル・キートンと初タッグを組んだホラー・コメディの野心作。

公開:1988 年  時間:92分
製作国:アメリカ

スタッフ 
監督:        ティム・バートン
脚本:     マイケル・マクダウェル
        ウォーレン・スカーレン


キャスト
ビートルジュース: マイケル・キートン
アダム・メイトランド:

       アレック・ボールドウィン
バーバラ・メイトランド:

          ジーナ・デイヴィス
チャールズ・ディーツ:

        ジェフリー・ジョーンズ
デリア・ディーツ: キャサリン・オハラ
リディア・ディーツ:ウィノナ・ライダー
ジュノ:     シルヴィア・シドニー
オーソ:    グレン・シャディックス

勝手に評点:3.0
  (一見の価値はあり)

(C)Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.

あらすじ

若い夫婦アダム(アレック・ボールドウィン)とバーバラ(ジーナ・デイヴィス)は自動車事故で命を落とすが、幽霊となって自分たちの家に留まり続けていた。ところがある日、その家に人間のディーツ家が引っ越してくる。

アダムたちは彼らを脅かして追い出そうとするものの効果はなく、ディーツ家の中で唯一自分たちの姿を見ることができる娘リディア(ウィノナ・ライダー)と親しくなる。

やがてアダムたちは、人間を退治してくれるという「ビートルジュース」(マイケル・キートン)を死後の世界から呼び出す。

今更レビュー(ネタバレあり)

初監督作『ピーウィーの大冒険』に続くティム・バートン監督の長編第二作、お騒がせホラーコメディ。

2024年9月に36年ぶりの続編『ビートルジュース・ビートルジュース』が公開になるが、原点となる本作は1988年の公開時にスマッシュヒットを記録。アカデミー賞メイクアップ賞を受賞し、ティム・バートンの名を世に知らしめた。

『シザーハンズ』(1990)以降のティム・バートンの作品はダークファンタジー的な要素が強まっていき、もはやそのカテゴリーの大御所である。

だが、昔は『マーズ・アタック!』(1996)や本作のような単純に笑って楽しむおバカなホラーコメディも撮っていたのだ。これもまた魅力的だ。

(C)Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.

タイトルロールであるビートルジュースは、その名を三回唱えると死後の世界から現れる、お騒がせでお調子者のバイオ・エクソシスト。

本来はオリオン座の星の名にもなっているベテルギウス(Betelgeuse)なのだが、なぜか英語読みの”Beetlejuice”でまかり通っている。カブトムシの体液みたいな気色悪さだ。

バイオ・エクソシストという存在がよく分からなかったが、要は<人間怖がらせ屋>といった仕事のようである。

この異色キャラをマイケル・キートンが怪演(日本語吹替が西川のりおなのもキャラが窺い知れる)、ティム・バートン監督の次作『バットマン』ではキャラ変で主人公に抜擢。同シリーズではバートンの監督降板とともに主役を降りる盟友だ。

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映画は冒頭、ニューイングランドののどかな田舎町の俯瞰ショット。途中から、どこか建物が作り物っぽいなあと思い始める。80年代の映画のレベルはこんなものかと思っていたら、それは本当にミニチュアの家!

この町で大きな家に住む夫婦、アダム・メイトランド(アレック・ボールドウィン)バーバラ(ジーナ・デイヴィス)が趣味でこしらえたジオラマなのだ。

家のリノベーションが大好きな若い夫婦は仲睦まじく暮らしているが、クルマの運転中に事故で川に転落。

ずぶ濡れで家に帰ってくると、屋敷の中で怪現象が続き、「新人死者ハンドブック」なる本が置かれていたことで、自分たちは事故で死んでしまったことを察知する。

序盤ののどかな田舎町のホームドラマから大きな方向転換。死んだ後でもこの人の好い夫婦のキャラは変わらず、それと見た目のおどろおどろしい幽霊ビジュアルとのギャップが新鮮。

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アダム役のアレック・ボールドウィンは、クレジットで見るまで気づかなかった。

『ミッション・インポッシブル』トム・クルーズの上司ほか、善悪キャラ何でも来いのイケオジ、アレック・ボールドウィンにも、こんな弱腰の善人キャラを演じていた時代があったか。

そして愛妻のバーバラ役にはジーナ・デイヴィス

数年後、スーザン・サランドンとバディを組んだ『テルマ&ルイーズ』(1991年、リドリー・スコット監督)のテルマを演じることになる。キレイにアゴが割れている顔立ちのせいか、夫アダムよりアクティブで男性的に見える。

夫婦が亡くなったあとに、二人が大事にして愛着をもってリノベしていた家をディーツ一家が購入する。

NYから移転し、金儲けの機会を絶えず狙っている夫チャールズ(ジェフリー・ジョーンズ)と、一人よがりの彫刻を作っている妻デリア(キャサリン・オハラ)

夫婦円満とは言い難い二人のほか、彼女のアドバイザーなのか、やたら口出しをしてくる芸術家気取りのオーソ(グレン・シャディックス)によって、家の中の内装や造作は、悪趣味に作り変えられていく。

これは幽霊となって心配そうに我が家を見守るメイトランド夫妻でなくとも、心が痛む。

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アダムとバーバラは一家を怖がらせて退散させようと画策するが、連中は夫妻の存在も見えず、まったく効果がない。そんな中で、ディーツ夫妻の一人娘・リディア(ウィノナ・ライダー)だけが、幽霊の存在に気づき、二人に共感していく。

ウィノナ・ライダーがまだ若い。デビューして間もない頃か。本作でティム・バートン監督と出会い、『シザーハンズ』にも出演。新作『ビートルジュース ビートルジュース』にはマイケル・キートンらとともに再出演の予定だそうで、期待が高まる。

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さて、ディーツ一家の無茶な行動に困り果てた夫妻は、ハンドブックを頼りに、後世社会のケースワーカー・ジュノ(シルヴィア・シドニー)に相談すると、さかんにテレビでCMを流している、ビートルジュースにだけは頼んではいけないと忠告を受ける。

ダメといわれると頼みたくなるのが世の常で、部屋の中のジオラマの墓場にド派手なスーツと白塗りの顔で現れるマイケル・キートンは後にバットマンを演じるが、本作ではまるでジョーカーのよう。ハーバード卒という設定が笑える。

メイトランド夫妻は彼に頼らずに連中を脅かそうとするが、それが友人を招いたディナーで「バナナボート」を歌って踊らせるというもので、このナンセンスな笑いがたまらない。

やがて、ディーツ夫妻やオーソに反撃され窮地に追い込まれたメイトランド夫妻に代わり、唯一の理解者であるリディア(ウィノナ・ライダー)が結婚することを条件にビートルジュースを降臨させる。

ここから先は彼の本領発揮というところだが、おバカなホラーコメディにしては、メイトランド夫妻のグロテスクな幽霊描写だけは本格的で、このアンバランスさが何ともいえぬ面白味を出している。

個人的な話で恐縮だが、私の部屋にも自分の町を模した自作のジオラマが飾られており、この夫妻が妙に身近に感じられる。今のところ、ジオラマの中で動く怪人の姿はない。