『20世紀少年 第2章 最後の希望』
公開:2009 年 時間:139分
製作国:日本
スタッフ 監督: 堤幸彦 脚本: 長崎尚志 渡辺雄介 原作: 浦沢直樹 『20世紀少年』 キャスト ケンヂ/遠藤健児: 唐沢寿明 オッチョ/落合長治: 豊川悦司 ユキジ/瀬戸口雪路: 常盤貴子 カンナ/遠藤カンナ: 平愛梨 ヨシツネ/皆本剛: 香川照之 マルオ/丸尾道浩: 石塚英彦 カツマタ/勝俣忠信: 黒羽洸成 フクベエ/服部哲也:佐々木蔵之介 モンちゃん/子門真明: 宇梶剛士 ヤマネ/山根昭夫: 小日向文世 ドンキー/木戸三郎: 生瀬勝久 ケロヨン/福田啓太郎: 宮迫博之 コンチ/今野裕一: 山寺宏一 サダキヨ/佐田清志: ユースケ・サンタマリア ヤン坊・マー坊: 佐野史郎 キリコ/遠藤貴理子: 黒木瞳 漫画家・角田: 森山未來 漫画家・金子: 手塚とおる 漫画家・氏木: 田鍋謙一郎 万丈目胤舟: 石橋蓮司 神様: 中村嘉葎雄 ヤマさん/山崎: 光石研 田村マサオ/13番: 井浦新 敷島ミカ: 片瀬那奈 敷島鉄男: 北村総一朗 市原節子: 竹内都子 蝶野将平: 藤木直人 春波夫: 古田新太 高須: 小池栄子 小泉響子: 木南晴夏 仁谷神父: 六平直政 中国マフィア・王: 陳昭榮 タイマフィア・チャイポン: Samat Sangsangium <本作限りの出演> マライア: 前田健 ブリトニー: 荒木宏文 ホクロの巡査: 佐藤二朗 七龍の店主: 西村雅彦 仲畑: 山崎樹範 歌舞伎町警察署長: 石丸謙二郎 斉木刑事(歌舞伎町署):西村和彦 東野刑事(歌舞伎町署):田中要次 山根宅の隣人: 佐々木すみ江 オデオン座の老人: 梅津栄 万博司会者: 徳光和夫 珍宝楼の店主: 小松政夫 オッチョの元妻: 吉田羊
勝手に評点:
(悪くはないけど)
あらすじ
“ともだち”が支配する西暦2015年、“血の大みそか”以降ケンヂは行方不明のままだった。ケンヂの姪カンナは高校生に成長し、オッチョ、ユキジ、ヨシツネ、マルオらは、それぞれの方法で“ともだち”の正体を追っていた。
一気通貫レビュー(ネタバレあり)
キャスティングの妙 その2
この映画化不可能と思われた原作コミックに、あえて実写化で臨んだ英断を一作目では高く評価したが、二作目となると、やや食傷気味は否めない。
成長した遠藤カンナに平愛梨は絵にはなるが、原作に似せに行っている感は否めず、前作のレビューにも書いた、小泉響子の木南晴夏には到底及ばない。
またもや配役の話になってしまうが、伝説の刑事、チョーさんとヤマさんは、竜雷太と光石研がそれぞれ演じている。
チョーさんは絶交で殺され、ヤマさんは警視総監になるわけだが、原作イメージはチョーさんが下川辰平で、ヤマさんが竜雷太なのではないかと思う。亡くなられた方もおり、実現は不可能だったのだろうが、やや混乱する。
◇
漫画家・角田氏の森山未來は意外な線だが違和感はなかった。サダキヨのユースケ・サンタマリアはメイクでごまかしているが、これも悪くない。
春波夫の古田新太、ホクロの巡査の佐藤二朗、仁谷神父の六平直政あたりは順当な線でこれもいい。
ただ、ヤマネ君の小日向文世の家の隣人に佐々木すみ江を登場させるのなら、ケンヂの母親役にするべきというのが私の勝手な持論。ヤン坊・マー坊の佐野史郎もちょっと無理があったかな。
映像の安っぽさが気になって
ストーリーについては、忠実に原作を絵コンテにしてきた前作に比べると、今回はだいぶ原作をいじっている。
それも、順番を変えたり、登場人物を減らしてみたりと、三部作構成で完結するようにいろいろ努力しているのだろう。それは大長編コミックの映画化である以上、避けられないし、破綻のないよう頑張っているように思えた。
◇
映画化したことで収穫だったのは、ケンヂのカレーライスの歌「Bob Lennon」や春波夫の「ハロハロ音頭」を実際に聴くことができたこと。
ともだちランドのホテルの内装は秀逸だったし、レトロ感たっぷりのともだちワールドを目にすることができたのも良かった。実写で『ゴジラの息子』の映像が使えたのも、さすが東宝ならでは。
一方で、前作にもまして映像の安っぽさが気になった。海ほたる刑務所からのショーグン(豊川悦司)と角田氏の脱出劇は随分とスケールダウンしたし、ロケ地のハリボテ感も冴えない。
サダキヨのお面も、ともだちの覆面も、コミックだったらあんなに盛り上がれるのに、実写になると途端に荒唐無稽になるのが勿体ない。ああいった二次元キャラは、リアルに実写化してはいけないものなのだ。
新宿歌舞伎町の教会で、暗殺されそうになるカンナを救うべくオッチョがステンドガラスを突き破って登場する、原作のあの劇的なシーンでさえ、映画では萎えるほどの迫力のなさ。
これは物語の運びを原作と変えてしまったせいかもしれない。
西暦が終わってしまうの!
本作で一番がっかりしたのは、古い映画館のフィルムに映った、キリコ(黒木瞳)の語る台詞。原作では、ともだちの策略に気づいた彼女が、「このままでは、西暦が終わってしまうの!」と警鐘を鳴らすものだった。
とてもインパクトのある台詞だが、これを映画では「世界が終わってしまうの」というつまらない台詞に改悪していたと思う。理由はあるのだろうが、これでは台無しだ。
原作で「ウイルス」と「ビールス」をきちんと書き分けるほど台詞にもこだわりのある浦沢直樹にとっても、忸怩たる思いだったのでは。
◇
終盤では、パレードの場でオッチョに(いやヤマネ君か)射殺されたともだち(まるで「映画泥棒」のCMみたいな絵面だった)が、盛大な葬儀の最中に生き返る。
それは、キリストの再来ということで世界的に大騒ぎになるという展開なのだが、原作ではそこにローマ法王を絡めて、しかも法王を銃撃から守るためにともだちが生き返るという、手の込んだ段取りがあってこその話だった。
これを日テレOBの徳光さんはじめ、局アナのナレーション処理でお手軽に仕上げてしまったことで、終盤は随分とチャチな作品に見えた。
まあ、ローマ法王の登場はハードルが高そうだけど、次作まで付き合わずに脱落する人は相応にいたのではないか。