『燃えよドラゴン』考察とネタバレ!あらすじ・評価・感想・解説・レビュー | シネフィリー

『燃えよドラゴン』ブルース・リー没後50年WBLC 2023④

記事内に広告が含まれています。
スポンサーリンク

『燃えよドラゴン』
 龍爭虎鬥 Enter the Dragon

ブルース・リーがついにハリウッド進出を果たした代名詞的な作品。孤島で開催される武術大会で悪事を暴く。

公開:1973 年  時間:98分  
製作国:香港
 

スタッフ 
監督・脚本:  ロバート・クローズ

キャスト
リー:       ブルース・リー
ローパー:    ジョン・サクソン
ハン:        シー・キエン
ウイリアムス:    ジム・ケリー
タニア:      アーナ・カプリ
オハラ:      ボブ・ウォール
メイ・リン:    ベティ・チュン
スー・リン:   アンジェラ・マオ
ブレイスウェイト:
      ジェフリー・ウィークス

勝手に評点:2.5
(悪くはないけど)

(C)1973, 1998 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

あらすじ

香港の裏社会を牛耳るハン(シー・キエン)は、自身の所有する島で三年ごとに武術トーナメントを開催していた。

少林寺で修行する武術の達人リー(ブルース・リー)は、その島で行われている麻薬製造密売の内情を探るためトーナメントに出場するよう秘密情報局に依頼される。

かつて妹がハンの手下に殺されたことを家族から聞かされたリーは出場を決意し、島へ乗り込んでいく。

今更レビュー(ネタバレあり)

ついにハリウッド進出

本作でついにブルース・リーは主演映画でハリウッド進出を果たす。2023年にはワーナー・ブラザース創立100周年と製作50周年、それにブルース・リー没後50年を記念して4Kリマスターを期間限定上映するようだ。

メジャーの資本が入り、世界的にブルース・リーの名を広めたヒット作であり、この映画のタイトルも彼の代名詞のように扱われている。それはよく分かる。

だって、冒頭のほんの数分で、本作がこれまでの彼の主演作とはスケールの違う豪華な作品だと分かるし、画面に奥行きさえ感じられるから。

(C)1973, 1998 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

そして何よりお馴染みの軽快でワクワクさせるテーマ音楽。音楽監督のラロ・シフリン『スパイ大作戦』のあの曲も手掛けた人物だというのも肯ける。

監督は格闘技系アクション映画の得意なロバート・クローズ。後に、ブルース・リーの急死で未完成だった『死亡遊戯』も、彼から監督を引き継ぎ完成させる。

(C)1973, 1998 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

孤島での武術トーナメント

“ Don’t think. Feel!”(考えるな、感じろ)

例の名言で弟子を指導する武術家のリーは、国際情報局のブレイスウェイト(ジェフリー・ウィークス)に、かつて少林寺で武術を学びながらもダークサイドに堕ち破門となったハン(シー・キエン)のもとへ行くよう依頼される。

ハンは所有する島で三年に一度、武術トーナメントを開催しているのだ。

借金を重ねマフィアに追われているローパー(ジョン・サクソン)、職質警官を暴行し逃亡しているウィリアムズ(ジム・ケリー)など、脛に傷をもつ連中が何人も、この大会に参加するために香港から小舟に乗る。

アフロヘアでパンナムの旅行バッグを持つウィリアムズは、これまでになかった風貌のキャラで新鮮味あり。

そして、我らがリーもその小舟の客の中に混じっている。

当初は参加に気乗りしないリーだったが、姉スー・リン(アンジェラ・マオ)がハンの手下オハラ(ボブ・ウォール)たちに追い詰められた末に島で自害を遂げたと知り、秘かに復讐の機会をねらう。

悪の巣窟となっている海に浮かぶ孤島に、荒くれものたちが結集していく。何とも心躍る展開だ。

(C)1973, 1998 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

本作はハリウッドの観客層をねらっているせいか、映像も音楽も、それに勿論アクションも、みな手が込んでおり、期待には応えている。

だが、それは同時に、これまで演技もカット割りも物語もチープ感が漂うB級香港映画のなかで、ただブルース・リーアクションだけがひときわ輝いているような、アンバランスな魅力が失われてしまった気がしてならない。

勿論既に彼は押しも押されぬ大スターだったが、本作によって、これまで売れない頃から追いかけていたミュージシャンがメジャーデビューしてしまったような気分になる。

どこか007のスパイアクション風

今までのように、怪しい中国人の通訳がボスの命令を受けてリーたちをいじめる訳でない。本作では最初からハンが島を仕切り、何か悪事を働いている。今回はあまりコミックリリーフ的な要素はみられない。

ハンの島には、彼の配下にいる大勢の空手家軍団がおり、その連中が気に入らない反発分子のリーやローパー、ウィリアムズたちが、次々と襲われていく。

どこかハリボテ感のある岩壁で囲まれた地下の基地内、そしてハンの娘たちだというナイフ投げの名手の女たち、ハンを護衛する筋骨隆々の男、絞首台で遊ぶ毛足の長いネコ、そしてアタッチメント形式で付け替えができるハンの義手によるアイアンクロ―攻撃

これらはみな、どこかジェームズ・ボンドのアクション映画を思わせるアイテムだ。

(C)1973, 1998 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

敵の基地も攻撃もスペクター一味のようであるが、ウォッカ・マティーニもボンド・ガールもアストン・マーティンも登場せず、リーはひたすら上裸になって蹴りを決める。

ラストはハンとのタイマン勝負。隠し扉から入る全方位が鏡張りの部屋。敵の動きが幾重にも映り、まるでバルタン星人との戦いのよう。鉄の爪にやられた傷の血をなめて、怒りに震えるリーがいい。

「像を打つのだ。そうすれば敵は倒れる」

教えを思い出してリーは鏡をすべて叩き割り、最後には胸に強烈な蹴りを浴びたハンが、自分で壁に刺した槍に串刺しになって絶命。

ハンを演じたシー・キエンは、自身も武術家であり『Mr.Boo!ミスター・ブー』(1976年)などにも出演しているが、本作では義手が目立ちすぎて、本格アクション対決として見えないのが残念だ。

その点では、チャック・ノリスと戦った前作『ドラゴンへの道』の方が見応えがあった気もする。最後は島に平和が戻り、ヘリコプターの迎えが来てエンドマーク。燃えたぜ、ドラゴン。