藤井道人監督|初期短編作品集・一気通貫レビュー

『そのうちぼくらは』

公開:2011 年  時間:31分  
製作国:日本

スタッフ 
監督:     藤井道人
キャスト
永夏子、森聖矢、小野裕崇、岩合智史、金沢匡紘、植松愛、中村祐志、若宮友香、益田篤、市川唯、観月悠

勝手に評点:2.0
(悪くはないけど)

【2020年3月25日リリース】『藤井道人監督 初期短編作品集②』「新聞記者」「青の帰り道」「デイアンドナイト」の新鋭・藤井道人監督の原点がここに!

あらすじ

大きな一軒家でかつて共同生活をしていた男女6人。それから数年後、久しぶりにみんなでその家に集まるが、実は共同生活していた仲間の一人が事故死していた。

大切な仲間を失った彼らは大きな喪失感を抱えたままそれぞれの人生を歩んでいたが、かつての共同生活の思い出を話しているうちに、押し込めていた感情があふれ出し、互いに気持ちをぶつけ合いはじめる。

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今更レビュー(ネタバレあり)

これは見ていて相当キツイ。共同生活をしていた男女6人という設定はお手軽な青春ドラマのようで楽しそうだが、その中の一人が事故死し、みんなが喪失感を抱える展開があまりにも定型的。

一人ひとりの芝居はけして下手ではないが、あまりに説明的な内容で、いかにもワークショップ的。大事な仲間が死んだのは分かるが、いい若い者が全員揃いも揃って、ここまで過去を引きずるのも、ちょっと大げさすぎないか。俺がドライすぎるのだろうか。

©BABEL/LABEL、株式会社ハーベストフォックス

なかば強引に最後はみんな吹っ切れて人生を歩み始めるところも、取って付けたよう。むさくるしいロン毛男が、心の整理をつけて断髪する場面はあまりに共感できず、目のやり場に困った。主演の永夏子の健康的な美しさが際立つが、他に観るべきものなし。

『名もなき一篇』

公開:2014 年  時間:25分  
製作国:日本
 

スタッフ 
監督:     藤井道人

キャスト
寺崎崇明、池田嘩百哩、柳田竜人、南部映次、中村靖子、前林恒平、小野裕崇

勝手に評点:3.0
(一見の価値はあり)

あらすじ

2014年3月10日、17時3分から17時28分の25分間に起きた出来事をカメラにおさめたショートフィルム。ある男は恋人にプロポーズをし、ある男は人を殺す命を受ける。偶然が偶然を呼び、事態は思わぬ方向に進んでいく。

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今更レビュー(ネタバレあり)

同じタイトルで後年、横浜流星主演の映画を撮るが、本作は別もの。新宿東口から三丁目、御苑近辺を舞台に、25分間カメラを長回しして、町で起こるさまざまな人のドラマをつなぐ。

彼女にプロポーズしようと待ち合わせ場所に向かう男。ヤクザの仲間割れで相手を刺してこいと命じられる下っ端の男。ちょっとしたすれ違いや偶然により、標的の目印である赤い紙袋が別の誰かに手渡され、悲劇は起きる。

©BABEL/LABEL、株式会社ハーベストフォックス

ロケ地に馴染みがあるので懐かしかったのと、ワンカットのドラマとしての面白さから、ここまでの初期短編では一番楽しく観た。背後の通行人の動きが、ただの映り込みなのか仕込んでいるのかも気になったりして。

唯一気になったのは、本来刺されるはずの男が、身代わりに刺された友人を前にオロオロする姿。殺人で高飛びするようなヤクザ者なら、その前にまず刺客を追いかけてほしい。