『リメンバー・ミー』考察とネタバレ !あらすじ・評価・感想・解説・レビュー | シネフィリー

『リメンバー ミー』今更レビュー|子供と観るべきピクサーの至宝作品

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『リメンバー・ミー』
 Coco

亡くなったご先祖様や家族を想い続けることの大切さ。これは子供と一緒に観たいピクサーらしさ満点の傑作。

公開:2017 年  時間:105分  
製作国:アメリカ 

スタッフ  
監督:        リー・アンクリッチ 

声優 
ミゲル・リヴェラ:  
   アンソニー・ゴンザレス(石橋陽彩) 
ヘクター:  
 ガエル・ガルシア・ベルナル(藤木直人) 
エルネスト・デラクルス:  
  ベンジャミン・ブラット(橋本さとし)
 ママ・イメルダ:  
     アラナ・ユーバック(松雪泰子) 
エレナ・リヴェラ:  
    レニー・ヴィクター(磯辺万沙子) 
エンリケ・リヴェラ:  
    ハイメ・カミーユ(横山だいすけ) 
パパ・フリオ:  
   アルフォンソ・アラウ(多田野曜平)

勝手に評点:4.0
   (オススメ!)

(C)2018 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

    あらすじ

    天才的なギターの才能を持つ少年ミゲルはミュージシャンを夢見ているが、過去の悲しい出来事が原因で、彼の一族には音楽禁止の掟が定められていた。

    ある日ミゲルは、憧れの伝説的ミュージシャン、デラクルスの霊廟に飾られていたギターを手にしたことをきっかけに、まるでテーマパークのように楽しく美しい「死者の国」へと迷いこんでしまう。

    ミゲルはそこで出会った陽気で孤独なガイコツのヘクターに協力してもらい、元の世界へ戻る方法を探るが……。

    レビュー(ネタバレあり)

    笑って泣けるピクサーの王道

    メキシコにも日本におけるお盆のような風習がある。そのメキシコの祝日「死者の日」を題材に、何代も続く家族から音楽を禁じられたギター少年のミゲルの冒険や家族との強い絆を描いた物語である。

    作画の出来も素晴らしいし、説教臭くなく家族や祖先の大切さを子供に伝える脚本も素晴らしい。ピクサー作品の王道ともいえる作品だと思う。

    監督のリー・アンクリッチは、『トイ・ストーリー2』、『モンスターズ・インク』、『ファインディング・ニモ』といったピクサーの主要作品に共同監督として参画し、ついには『トイ・ストーリー3』で単独監督。

    コアなファンが多い同シリーズで、過去作を凌駕する感動作を作り上げた才能が、本作でも惜しみなく発揮されている。

    (C)2018 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

    音楽が禁止された家庭という設定から、ある程度予定調和が予想できはするが、そこは子供向けアニメなのだから、ある程度仕方がないところ。

    ディズニー傘下となってから、ストーリーにも毒気と挑戦意欲が損なわれたと、公開当時の備忘録に書いていたが、改めて観るとそんな感じでもない。

    すっかり、このテイストに慣らされてしまったか、私が年を取って涙もろくなったせいか分からないが、ここ何年かのピクサー作品の中では出色の出来栄えだと思える。

    No Music, No Life

    主人公の少年ミゲル・リヴェラは、家業の靴屋を継ぐことを期待され、音楽は聴くことすらも厳しく禁じられている

    祖母のエレナが厳しくそう言うのは、曾祖母のママ・ココの亡くなった母イメルダの夫が、音楽家になるために家族を捨てて失踪してしまったから。

    こう書くと複雑に見えるが、要は遠いご先祖が音楽のために家族を引き裂いたせいで、この一家は代々、音楽御法度なのである。

    だがミゲルは伝説的ミュージシャンであるエルネスト・デラクルスに憧れ、家族に内緒で音楽コンテストに出ようとしている。

    (C)2018 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

    きっと最後には音楽解禁になることは想像できるが、死者の日にからめて、死後の世界とどう絡んでいくのかは、なかなか推測を許さず、よくひねってある。

    「死者の日に死者の物を盗んだ生者は呪われて死者の国に飛ばされる」

    祭壇からギターを拝借してコンテストに出場しようとしたミゲルは、死者の国に入り込んでしまう。はじめは死者を怖がるが、相手も生きているミゲルに驚く。

    まるで『モンスターズ・インク』のように、互いに見慣れない相手を怖がる世界。そこで先祖たちと再会するミゲル。だが、生者は死者の国で日の出を迎えると帰れなくなる。

    (C)2018 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

    ご先祖様さがしの冒険

    生者が死者の国から帰るには、先祖に許しをもらうだけでいいが、イメルダの許しは音楽禁止の条件付き。ミゲルは夜明けまでに、もう一人のご先祖、伝説のミュージシャンのデラクルスをみつけて、許しをもらおうとする。こうして、ミゲルの冒険が始まる。

    イメルダたちから逃げ回りながら、デラクルスを探すミゲルは、彼の友人だという怪しい男ヘクターに出会う。彼は死者の日だというのに、下界に戻れずにいる。

    生者の国の祭壇に写真が飾られていない者は死者の国から出られない。ヘクターの写真を飾り、彼を覚えてくれている人は、もういなくなってしまったのだ。

    (C)2018 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

    本作の優れた点は、こうした死者の世界のルールを子供でも分かるようにうまく物語に溶けこませ、更に、死者の世界から下界に行くのに空港の入出国の審査のような仕組みがあるなど、見せ方にも遊び心が感じられるところだ。

    死後の世界もメキシコ版『千と千尋の神隠し』といった雰囲気で、その夜景の美しさとビビッドな色使いには息をのむ。ラテン系の音楽との融合も楽しい。

    (C)2018 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

    ご先祖さまを大切にしたくなる映画

    原題である『COCO』は、ミゲルの曾祖母ママ・ココからきている。もう高齢のため、記憶を失いかけているココ。だが彼女が記憶を失ってしまうと、死者の世界ではココの父親が消滅してしまう

    ミゲルの追い求める先祖の正体は誰なのかというミステリー要素と、ココと父親との麗しい愛情、そこに禁断の音楽をからめていき、映画は奇跡のように美しい着地点に到達する。

    しわだらけのママ・ココのキャラクター・デザインもいい。ピクサーでは『カールじいさんの空飛ぶ家』の老人描写も良かったけど、本作のココの皺にも味がある。

    『リメンバー・ミー』は正統な邦題だと思う。これは劇中で何度も歌われる曲名であり、かつ、忘れないでいてほしいという切実な想いがストレートに表現され、原題よりフィットしている。

    誰かが覚えてくれていること、写真を飾ってくれていることで、死者の世界に暮らし、年に一度は下界にもおりていける。なんて素敵な設定を思いつくのだろう。しっかりと、最後には懲らしめられる悪役を用意しているところもいい。

    冒険活劇の面白さと音楽の楽しさを美しいアニメ表現で伝えつつ、最後には家族や先祖を想う気持ちの大切さを説教くさくせず子供に教えてくれる作品。

    ラストでは、天に召されたココが、今度は死者の世界で両親と幸福そうに暮らしている。ああ、素晴らしき家族愛。お盆の時期にこそ、子供たちと一緒にみたい映画だ。

    笑って泣けて、アニメーションも美しい、ピクサーらしさの詰まった秀作。