『ロシュフォールの恋人たち』 今更レビュー:ミシェル・ルグランの音楽に浸る夜②

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『ロシュフォールの恋人たち』 
Les Demoiselles de Rochefort

ジャック・ドゥミ監督と作曲家ミシェル・ルグランの名コンビが贈る陽気なミュージカル。今度は底抜けにノリが良い。

公開:1967 年  時間:123分  
製作国:フランス

スタッフ 
監督・脚本:      ジャック・ドゥミ
音楽:        ミシェル・ルグラン
キャスト
デルフィーヌ:   カトリーヌ・ドヌーヴ
ソランジュ:フランソワーズ・ドルレアック
イヴォンヌ:     ダニエル・ダリュー
エチエンヌ:    ジョージ・チャキリス
ビル:        グローバー・デール
マクサンス:      ジャック・ペラン
アンディ・ミラー:    ジーン・ケリー
シモン・ダーム:    ミシェル・ピコリ
ジュディト:       パメラ・ハート

勝手に評点:3.5
(一見の価値はあり)

(C)cine tamaris 1996

あらすじ

お祭りをニ日後に控えたフランス西南部の海辺の街ロシュフォールに、作曲家の卵のソランジュ(フランソワーズ・ドルレアック)とダンサー志望の妹デルフィーヌ(カトリーヌ・ドヌーヴ)という双子姉妹が暮らしていた。

お祭りの当日、旅芸人のエチエンヌ(ジョージ・チャキリス)たちに頼まれ、彼女たちは歌と踊りを披露する。

今更レビュー(ネタバレあり)

今度はムチャクチャ陽気なドゥミとルグラン

ジャック・ドゥミ監督は、音楽のミシェル・ルグランとのコンビで何本も作品を撮っている。カンヌでパルムドールを受賞した『シェルブールの雨傘』に比べれば知名度は劣るが、同作に続き三年後に公開された本作も見逃せない作品だ。

冒頭、ロシュフォールの町へとつながる、建設中のような鉄橋が登場する。これは運搬橋といわれるもので、大きなゴンドラに人や自動車を載せて対岸まで移動させる仕組みなのだ。現存するものは珍しいらしい。

このゴンドラで移動しながら、町の祭りに参加するためにやってきた若者たちがいきなり踊りだす。それはまるで、LAの渋滞ハイウェイで踊り出す『ラ・ラ・ランド』のオリジンともいえる光景だ。

そこから、彼らはロシュフォールの中心にある広場に入っていく。不自然なほど会話が始まらないので、『シェルブールの雨傘』と同様に全ての会話が歌なのかと身構えたが、これは予想がはずれた。

祭りでダンスを踊る予定の男女四人。中心にいるのは、エチエンヌ(ジョージ・チャキリス)ビル(グローバー・デール)という二人の青年。

そして、この町に暮らしている双子の姉妹、音楽家を目指す姉のソランジュ(フランソワーズ・ドルレアック)と、子供たちにバレエを教える妹のデルフィーヌ(カトリーヌ・ドヌーヴ)

この四人が何となく知り合い、親しくなっていくので、この四人が<ロシュフォールの恋人たち>なのかと早合点したが、もっと恋多き物語なのだった。

(C)cine tamaris 1996

何と豪華なキャスティング

それにしても、双子の姉妹が目にも鮮やかな黄色と赤の色違いのドレスで現れて歌い出したり、広場や街中でエチエンヌたちがキレッキレの激しいダンスを披露したりと、今回は映画全体が、明るい真夏の日差しを浴びているかのような陽気で満ち満ちている

まるで、寒く薄暗い冬の雪の中で撮った、物語全体が悲恋で重苦しい(そこがいいのだが)印象の強い『シェルブールの雨傘』での鬱憤を晴らすかのように、対照的なミュージカルになっている。

どちらもミシェル・ルグランのスコアは素晴らしく、見応えがあるのだが、『シェルブールの雨傘』が米国流とは違うフランス流のミュージカルとしての矜持を感じさせたのに比べると、こちらはあっけらかんと能天気な分、ハリウッドの作風に近い。

そう感じたのには、おそらくキャスティングの影響もあるだろう。何ともゴージャスな配役だ。私は予習もせずに観ていたので驚いた。

『ウェストサイド物語』シャーク団っぽいダンスから、ジョージ・チャキリスはすぐに分かった。チャキリスドヌーヴか、これは豪華だと思っていたら、なんと後半には更なるサプライズ。

売れっ子の米国人音楽家アンディのあの笑顔。よく、こんなにジーン・ケリーっぽい、タップも踊れる俳優を見つけてきたなと感心していたら、当の本人ではないか。フランスのミュージカルにも出演するのか、この大スターは。

ついでに白状すると、カトリーヌ・ドヌーヴの双子の姉の役も、よくこんなに背格好が似ていて双子っぽくみえる女優を探してきたなと思っていたのだが、フランソワーズ・ドルレアック本当の姉だったのだ。

姉はトリュフォーの『柔らかい肌』、妹は『シェルブールの雨傘』で、当時はどちらもすでに人気女優だったということか。

ただ、フランソワーズ・ドルレアックは本作公開の1967年に、交通事故により25歳という若さでこの世を去っている。

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カフェを中心に全てが動いている

さて、邦題に恋人たちとあるように、本作では老若男女問わず、多くのものたちの恋愛が絡んでくる。そしてその中心となっているのが、祭りの会場となっている広場の脇で営業しているカフェなのだ。

その店は、双子の姉妹と、年の離れた弟ブブの母親である女主人イヴォンヌ(ダニエル・ダリュー)が切り盛りしている。

イヴォンヌは、年頃の娘がいるようにはとても見えない若さで、三姉妹でも通用しそうなのは、さすが往年の名女優ダニエル・ダリュー

そういえば、フランソワ・オゾンの『8人の女たち』でも、80代で現役女優としてカトリーヌ・ドヌーヴと共演していたっけ。

週末に祭りが開催されるためにロシュフォールにやってきたエチエンヌとビルだったが、ダンスに参加予定の女性二人が直前に水兵と恋仲になって逃げ出してしまったために、双子の姉妹に急遽代役を依頼する。これが軸となる大きな話の流れだ。

双子の姉妹は祭りでザ・ピーナッツのように歌って踊る。彼女たちのステージも良いし、他のメンバーによる、バスケの試合をモチーフにしたダンスや、ホンダのバイクにまたがってのダンスなど、趣向が凝っていて楽しい。

女の数だけ恋愛がある

音楽家を目指す姉のソランジュは、楽器店を経営する、おかしな名前の人物シモン・ダーム(ミシェル・ピコリ)に紹介状を書いてもらい、彼の旧友である著名な音楽家アンディ・ミラー(ジーン・ケリー)をパリに訪ねる予定だった。

だが、偶然アンディはシモンに会いにこの町にやってきて、そこで鉢合わせしたソランジュに一目惚れ。双方で一目惚れしてしまうというめでたい話だが、これで相思相愛となる。

この、楽器店経営のシモン・ダームにはかつて、名前が変だからという理由で婚約者に逃げられた過去があった(結婚してマダム・ダームとなるのがダメらしい)。

彼女を忘れられずに、二人の思い出の町で楽器店を開いたシモンだったが、相手は遠く海外で結婚生活を送っていると思っていた。

その元婚約者こそカフェの女主人イヴォンヌだった。彼女も夫に先立たれ、この町に戻っていたのだ。二人はついに再会し、シモンは、ブブが自分の子供と知る。

妹のデルフィーヌは、自分とよく似た肖像画を描いた画家のことが気になっている。それが理想の女性だというその画家は、実はカフェの常連の水兵マクサンス(ジャック・ペラン)なのだが、この二人はニアミスを起こしながらも、会うことがなく終わってしまう。

本来、映画のメインとなるべき男女であるが、会わずじまいなのだ。

画家はパリにいると信じたデルフィーヌは祭りの後にパリに向かい、そのクルマにヒッチハイクでマクサンスが乗せてもらうところで映画は終わる。出会う直前で終わらせる構成が面白い

本ページの情報は2021年11月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTサイトにてご確認ください。

モテそうな青年二人には意外な展開

恋愛劇の中心にいると信じていたエチエンヌとビルは、双子の姉妹と親しくなりアプローチをかけるものの、下心があるのなら一緒にパリには行かないわ、と釘をさされ、すっかり<良いお友だち>関係に収まってしまう。

いちばんモテそうな青年二人が、恋愛サークルの外に置かれるというのは、意外だった。常に二人で一緒にいたから、恋人同士と誤解されてしまったのかも。

ミシェル・ルグランの音楽は、ノリのいいアップテンポなピアノ曲から、叙情的な調べまで幅広いラインナップを用意する。

特に、いかにもメロドラマ風なピアノの旋律が何度も映画の中で繰り返されるシーンは、大林宣彦監督が好むスタイルととても雰囲気が似ている。きっと大林監督も、フランス映画に多分に感化されているのだろう。ジーン・ケリーの代わりに、いつ峰岸徹が現れてもおかしくないように思えた。

『シェルブールの雨傘』と同様に、私は本作のサントラもずっと聴きまくっていた時代があったので、フランス語の歌詞は聴き取れずとも、曲は鮮明に覚えていた。

だが、『シェルブールの雨傘』とは違い、本作はこれまで観たことがなかったので、初めて映画の内容が手に取るように分かり、勝手な想像とはだいぶ違う物語に驚いた。

陰と陽の組みあわせ。フランス北部のシェルブールと、西南部のロシュフォール『シェルブールの雨傘』と本作はセットで味わうべき作品だと思った。