『アベンジャーズ』
Marvel’s The Avengers
日本よ、ここが、ひとつの到達点だ。全部入りの満足感がハンパない。映画作品としての評価は人それぞれだが、ここまでエンタメ志向の大サービスには、敬意を表する。
公開:2012 年 時間:143分
製作国:アメリカ
スタッフ
監督: ジョス・ウェドン
キャスト
トニー・スターク / アイアンマン:
ロバート・ダウニーJr.
スティーブ・ロジャース:
クリス・エヴァンス
ブルース・バナー / ハルク:
マーク・ラファロ
ソー: クリス・ヘムズワース
ナターシャ・ロマノフ:
スカーレット・ヨハンソン
クリント・バートン / ホークアイ:
ジェレミー・レナー
ロキ: トム・ヒドルストン
フィル・コールソン:
クラーク・グレッグ
マリア・ヒル: コビー・スマルダーズ
ペッパー・ポッツ:
グウィネス・パルトロー
エリック・セルヴィグ:
ステラン・スカルスガルド
ニック・フューリー:
サミュエル・L・ジャクソン
勝手に評点:
(オススメ!)
コンテンツ
あらすじ
自ら開発したパワードスーツをまとったアイアンマンとして戦う、億万長者で天才発明家のトニー・スターク。
70年間の眠りから覚めた伝説の戦士キャプテン・アメリカ。神の王の息子で神々の国アスガルドから追放されたソー。
怒りにより巨人ハルクに変身する科学者ブルース・バナー。女スパイのブラック・ウィドウ。エリートエージェントで弓の達人ホークアイ。
彼らは人類史上最大の敵の襲来に備えた「アベンジャーズ」として召集される。それぞれの戦いで心に傷を負っていた彼らは、チームとして戦うことを拒むが……。
一気通貫レビュー(ネタバレあり)
ここが、ひとつの到達点だ
シリーズ6作目、満を持して登場した『アベンジャーズ』である。フェーズ1のクライマックスを飾る作品にふさわしく、本作品は何度観ても興奮を抑えされない。
マーベルヒーローのドリームチームが結集して戦うこと自体が、何とも豪華だ。
ヒーローが複数活躍するだけなら、日本でも珍しくない。戦隊ヒーローも平成ライダー勢ぞろいも、ウルトラ兄弟だってそうだ。
だが、色の違いでしか見分けられない日本の特撮ヒーローとは異なる、それぞれソロで映画が作れるだけの大物キャラが、対等な立場で集うところが、本作の大きな特徴だと思う(仮面ライダーもウルトラマンも、TVで放映中の現役キャラが主役だ)。
本作のジョス・ウェドン監督が、ノンクレジットで制作に携わったDCコミックスの『ジャスティス・リーグ』も同じようなコンセプトの作品だが、やはり本作の後では二番煎じの感が否めない。
ヒーローたちの内面的な成長ふたたび
ストーリーは割と単純明快だが、これら自我の強い連中が初めから一致団結する訳がなく、個々が衝突する。だが、それでは負けてしまう。
あることをきっかけに、みんなが力を合わせて協力し、友情と団結で強い敵を倒すのだ。少年ジャンプの基本原則のようだ。
だが、この内面的な成長を通じて、それぞれのキャラの個性やチーム内のポジションが見えてくるのが面白い。
◇
堅物のキャップに軽薄なトニー、我が道を行くソーと、沈着冷静だが変身で豹変するハルク。紅一点でアクションも行けるナターシャ。
バートンは本格的な活躍は今回が初だし、ボウガンだけでは目立ちにくいキャラだが、冒頭にロキに操られ敵側に洗脳されたおかげで、印象に残る格好になった。
キャスティング的には目新しい要素は少ない。ブルースのマーク・ラファロは初参加だが、チームの中での立ち位置を考えると、エドワード・ノートンより合っているかもしれない。
◇
S.H.I.E.L.D.の面々も今回は大活躍だ。なにより、コールソンの見せ場が多かった。彼のおかげでアベンジャーズが結束を固めるところは、泣かせる。
フューリー長官の出番も回を追うごとに増えてきたが、私としては、ついにマリア・ヒル(コビー・スマルダーズ)が登場したのが嬉しい。彼女が銃を構える立ち姿の何と美しいことよ。
いつまでも観ていたい大決戦
本作の素晴らしい点は、30分は続いているマンハッタンのチタウリ軍団との決戦シーンをはじめ、数々の戦闘シーンを、飽きることのないようによく考えられていること。
最終決戦に至るまでに、(キャップ+トニー)VSロキ、トニーVSソー、トニーVSキャップ、ハルクVSソー、ナターシャVSバートン等、総当たり戦のような組み合わせで戦っているが、それぞれに味付けが異なり単調ではない。
◇
そして、マンハッタンの総力戦。こんなにカメラが縦横無尽に動き、舞台がリアルなNYの街並みになっている映画は、今まで観たことがない。あと30分続いても興奮できそうな戦いぶりだ。
普通なら雨や夜間の戦闘シーンにして、ごまかして見せるのがお決まりだった特撮映画にして、ここまでクリアでリアルな戦いがお目にかかれるとは。
本作で数少ない不満点を挙げるとすれば、ロキ以外にヴィランのキャラが立っていない点だろう。
ジ・アザーという被り物の弱っちい悪党が冒頭に出てくるが、まるで存在感がない。チタウリ軍団の統率者がもう一人いたら面白かったのに。
ただ、物量だけはやたら多いチタウリを従えているとはいえ、アベンジャーズ相手に単身で140分も善戦するのだから、ロキは大した役者だ。憎めないヴィランとしての立ち位置も確立できている。
意外と笑わせてくれる場面も多い
そのロキの兜姿に「トナカイ野郎」といい、ソーには「シェイクスピア芝居か」とからみ、スティーブには「老人でも殴るぞ」と喧嘩をふっかけるトニー。
核ミサイルごと自爆したかと一同を心配させ、墜落した地上で意識を戻した際にも、「誰もキスしてないよな」。
ウィットに富んだ減らず口が、危機的な状況でも安堵感を誘うのは、ジェームズボンドやルパン三世にも通じるところか。
メンバーに的確な指示を与えるスティーブと、毒舌で調和を乱しスタンドプレーに走るトニー。いいバランスだ。そして、そこに制御不能なハルクというワイルドカードもいい。
今回のマンハッタン決戦でのハルクは、かつてないほど溌剌と戦っていたし、最後に吠えるロキをボロ雑巾のように叩きつけるところは笑った。
この大作映画で敵大将の最後が、こんなコミカルなシーンでいいのか目を疑ったが。
◇
ともあれ、アベンジャーズの初勝利だ。半壊したSTARK Towerの壁に残った「A」の一文字が、アベンジャーズのロゴになっているのが憎い。
ただ、ここまで凄い作品ができてしまうと、もうこの先が続かないのではないか。しばらくは観ている方も、燃え尽き症候群の気分だ。