映画『赤い風船』『白い馬』考察とネタバレ!あらすじ・評価・感想・解説・レビュー | シネフィリー

『赤い風船』『白い馬』今更レビュー|ラモリス監督短編2連発

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『赤い風船』(1956)
『白い馬』(1953)

『赤い風船』 
 Le Ballon Rouge

名作ファンタジーがデジタル復活。少年と風船、少年と馬、ともに言葉を交わさずとも分かり合える間柄。雨上がりのパリの石畳を子犬のようにじゃれる赤い風船の美しさと、南仏の湿原を少年と疾走する白い馬の力強さ。

公開:1956 年  時間:36分  
製作国:フランス
  

監督: アルベール・ラモリス
出演: パスカル・ラモリス

勝手に評点:4.0
(オススメ!)

(C)Copyright Films Montsouris 1956

あらすじ

街灯に赤い風船が引っ掛かっているのを見つけた少年パスカル(パスカル・ラモリス)は、そこから風船を取って大切に扱いはじめる。やがて風船はパスカルの行く先々に勝手についてくるようになるが、いたずらっ子たちの標的にされてしまう。

今更レビュー(ネタバレあり)

カンヌ国際映画祭パルムドールに輝いた名作ファンタジー。内容はまったく忘れていたが、小学校低学年の時に講堂で観た記憶がある。

『ホウ・シャオシェンのレッド・バルーン』を観たついでに、そのオマージュを捧げた先である、本作も観たくなったのだが、何とも素晴らしい作品だった。

単純明快な話なのに、心が豊かになる。小さな子供たちにこそ、ぜひ観てほしい。

街灯にひっかかった赤い風船をとってあげた少年。そこから友情が芽生える。

バスに乗せてもらえず少年を追いかけたり、授業中は外で待っていたり、アパートの窓の外で静止したりと、風船の動きが子犬のようで実にかわいい。

少年と風船が踊るシーンには、ジーン・ケリーとモップのダンスを思い出した。

オリジナルでは、風船が透けないように二重構造にしたり、ニスを塗って風景を映り込ませたりと工夫があったようだが、デジタル化した際に、風船の赤が少し強調されすぎたのではないか。

オリジナルと見比べないと分からないが、やや赤だけがビビッドすぎるシーンが目立った。

とはいえ、パリの高台の街並みや狭い路地、雨に濡れた石畳、通り抜ける汽車の蒸気

何気ないようだが計算して切り取られたであろう、このシーンの中に揺れる赤い風船の、抑制された品のある美しさは実に見事だ。

この、遠くに寺院のみえる印象的な風景の舞台メニルモンタンは、かつての労働者地区は今や若者の集まるお洒落な町だとか。

少年が狭い路地を駆け抜けるたびに、差し込む陽光が照らす風船の赤の美しさ。そして、幼い少女のもつ青い風船とのじゃれ合いも楽しい。

殆どサイレント映画なのだが、ごくわずかにセリフもある。それも大して意味のあるセリフではないので、どうせなら無声にして子供の歓声だけでもいいくらいだ。

悪ガキどもに囲まれて風船がパチンコ攻撃を受けるシーンにはハラハラさせられる。

パチンコ玉を食らったら破裂するものと思い込んでいると、徐々にしぼんでいき、最後に踏みつけられる。この意外なはぐらかしはうまい。

そして、街中の色とりどりの風船が集まってくるところは、まるで『101匹ワンちゃん』のような高揚感。やっぱり、風船は私の目には子犬に見えるようだ。

アルベール・ラモリス監督。ヘリコプター空撮の達人でもあり、本作でもその才能が発揮されている。

その後、ヘリの事故で亡くなってしまうのだが、今回デジタル化された二本は、不朽のファンタジーとして、長く人々の心に残るだろう。